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ザ・公開調理!山形県産「天元豚」×「モナリザ」河野透さん


日本各地で、気候風土を生かした銘柄豚、銘柄鶏の開発がさかんです。最近話題の山形県「天元豚」と愛媛県「媛っこ地鶏」を、「モナリザ」河野透さんと「パッソ・ア・パッソ」有馬邦明さんが公開調理。素材の魅力と生かし方を語ってくれました。

「天元豚」は、日本の百名山のひとつ、山形県吾あずまさん妻山の登山口にあたる天元台の地名を冠した豚だ。風光明媚な土地で、「天元豚」は、清らかな井戸水を飲んで育ち、飼料には抗生物質を入れずに特注の指定を行っている。公開料理の場で、「モナリザ」河野透さんが開口一番に口にしたのが、「天元豚」の安全性についてだ。宮崎県川南町出身の河野さんは、口蹄疫の被害が広がった出身地の現状に心を痛め、安全の重要性をあらためて語る。「飼料は、動物の健康にとって、とても大事な要素です。『天元豚』は豚を健康に育てることを優先しているのが、まずはすばらしいことだと思います」。 

抗生物質やホルモン剤を使用せずに豚を育てると、成長速度は安定しないため、生産管理はむずかしくなる。それでも、豚の健康を優先する理由は、生産会社である村上畜産の社員にとって、「天元豚」は商品である前に〝自分たちが食べたい豚〞であることに起因するようだ。社員は家庭ではもちろん、親戚知人のお中元などに「天元豚」を贈り、地元小学校の食育に協力したり、身近な範囲で、積極的に「天元豚」を広めている。

毎日食べ飽きない味の
豚を目めざす

河野さんが発想したのは、山形という土地の食材の組み合わせで「天元豚」を生かす方法だ。山形県といえばサクランボの名産地。「海外産の豚のような野性味がないので、繊細な味を生かす香りとして同じ県産のサクラが浮かびました」。フランスなら、豚肉はニンニクやローズマリー、タイムなどのハーブを用いて、香りをぶつけて臭味を取るのが一般的だ。しかし、味も香りもデリケートな「天元豚」には、西洋のハーブは強すぎる。代わりに日本のハーブ、サクラの香りを乗せた。68℃の真空調理で芯部に火を入れると、繊維が緻密にしっとりとして、「天元豚」の繊細さが遺憾なく発揮される。そして、フランス料理の手法が生きたソース、サクランボの爽やかな甘酸っぱさが全体をフレッシュな印象にまとめあげる。「毎日食べても飽きない優しい味」をめざす「天元豚」は、地元の桜、サクランボとともに、めざすところを実現させたようだ。

山形県「天元豚」
山形県米沢、西吾妻山を望む山の清流と、独自に配合を指定した餌で育ち、日本人の好みに合うさっぱりとした後味、脂肪の甘味が特徴の豚肉。「社員が家族と食べたい安全な豚」を合言葉に、生産グループの村上畜産は、社員が「天元豚」の消費者でもある。父豚は味重視の黒豚系との交雑種、母豚は食感重視の白系交雑種。
住商フーズ 
● Phone 06-6220-0029

「天元豚」はこう扱う!

POINT ①最初にマリネ
まずは肉の余分な脂を削る。その後「脂身に薄く切れ目を入れて塩、コショウを刷り込み30分ほどマリネすると、雑味が抜けて、脂のおいしさが際立ちます」と河野さん。

POINT ②脂面から焼く
脂面からゆっくりと焼くと、生臭味が抜けて風味がよくなる。時間をかけてきれいな焼き色をつける。真空調理の前段階なので、中に火を入れすぎず、表面がいい焼き色になったらすぐに冷蔵庫で冷ます。

POINT ③香りづけでひと工夫
河野さんは、山形県産「天元豚」に、同郷の桜の葉の香りを合わせた。桜の香りを生かすため、肉を焼く時のローズマリーやニンニク、タイムは控え目に。桜の香りの補強に、花の塩漬け(乾燥)を仕上げで使う。

POINT ④ソースが決め手
フランス料理は、ソースが大切。「天元豚」の脂身をセップ茸、ベーコン、エシャロット、ニンニクと一緒に全体によい焼き色に炒め、鶏のフォンを加えて煮詰める。「天元豚」の味が立体的に構成される。

7月5日、メディア関係者を対象に、料理王国Academyサロンで、山形県産「天元豚」、愛媛県産「媛っこ地鶏」の公開調理が行われました。

山形県産「天元豚」の桜の葉包みロースト
丁寧に焼き色がつけられた「天元豚」の脂身の香ばしさと甘味、真空料理でしっとりと火が入ったきめ細かな食感をゆっくりと味わいたい。全体に漂う桜の葉の香り、サクランボの甘酸っぱいソースが涼風を運ぶように爽やか。ロゼワインと一緒に。皿は、河野さん自ら絵付けをした作品。色鮮やかなガルニチュールは、皿の色と同調するように盛り付ける。カンディンスキーの絵のように、色彩とリズムを感じる皿。

材料(2人分)
「天元豚」ロース肉・・・300g/桜の葉(塩漬け)・・・8枚/桜の花(塩漬け)乾燥・・・適量/塩、コショウ、オリーブオイル・・・各適量/氷水・・・適量/水・・・適量
A
ニンニクスライス・・・2枚/タイム・・・1/2本/ローズマリー・・・1/4本

【ガルニチュール】
直径2.2㎝の抜き型でくり抜いたもの、下記の野菜各2個ずつ
B
ニンジン、インカのジャガイモ、紫イモ、パールオニオン、根セロリ、マッシュルーム、シイタケ、ソラ豆

バター・・・20g/タイム・・・1本/ニンニク・・・1/2個/塩、コショウ・・・適量/ジャガイモのピュレ・・・大さじ1/バター、生クリーム、塩、コショウ 各適量

【ソース】
バター・・・15g/フォン・ブラン・・・50㎖/ソース・マデイラ・・・15㎖/山形県サクランボ・・・4個(種を取り、1/4にカット)/ケイパー・・・適量
C
豚の脂(5㎜角切り)・・・15g/セップ茸(1㎝角切り)・・・15g/ベーコン(5㎜角切り)・・・15g/ニンニク(みじん切り)・・・適量/エシャロット(みじん切り)・・・適量/トマト(5㎜角切り)・・・10g/イタリアンパセリ・・・適量

作り方
① 250gにカットした「天元豚」ロース肉の全体に塩、コショウをして、Aを乗せ、30分間マリネする。
② Aを取りおき、温めたフライパンにオリーブオイルをひき、ロース肉を脂身の面から焼く。最初は中火で、さらに弱火にしてゆっくり焼き色をつける。最後に強火で両面に焼き色を薄く付け、冷蔵庫で5分間冷ます。
③ ラップ紙の上に桜の葉をすべて並べ、その上にロース肉と②で取りおいたAを乗せ、オリーブオイルをかけてラップ紙で包み込む。
④ 真空袋に③を入れ、真空で68℃の湯せんにかけ、35分間加熱し、氷水に落としておく。
⑤ ガルニチュールを作る。Bを直径2.2㎝の抜き型型で抜き、パールオニオンと根セロリは下ゆでしておく。
⑥ 鍋にBのガルニチュール材料を、表示の順番に入れ、均一に火を通し、バター、タイム、ニンニクで香りをつけ、塩、コショウで味をととのえる。
⑦ ジャガイモのピュレにバターと生クリームを加える。
⑧ ソースを作る。手鍋にバターを入れ、ブール・ノワゼットにして、Cを加え、塩、コショウして、焼き色が付いたらフォン・ブランを加え、煮詰める。
⑨ 仕上げにソース・マデイラを加えて、山形県産サクランボとケイパーを入れる。
⑩ 78℃の湯せんに④を入れ10分間加熱し、さらに40~50℃の湯せんで15分間おく。
⑪ 真空袋から出し、260℃のオーブンで3分間加熱し、切り分ける。
⑫ 桜の葉と桜の花を90℃のオーブンに入れ、パリパリに乾燥させる。
⑬ ロース肉をガルニチュールと⑦、ソースとともに皿に盛り付け、⑫とトマト、イタリアンパセリを飾る。

Toru Kawano

1957年宮崎県生まれ。82年25歳で渡仏し、パリ「ギー・サヴォワ」「ジャマン」など屈指の名店でキャリアを積む。ジョエル・ロブション氏の厚い信頼を得て、94年恵比寿「タイユバン・ロブション」のオープニングシェフを務め、97年「モナリザ」のオーナーシェフに就任。現在、恵比寿本店、丸の内店の2店を行き来する。

モナリザ

恵比寿本店
渋谷区恵比寿西1-14-4
●Phone 03-5458-1887
●11:30~14:00 LO、17:30~21:30 LO
●無休
●ランチコース 5064円~、ディナーコース 7174円~


丸の内店
東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング36F
●Phone 03-3240-5775
●11:30~14:00 LO、17:30~20:00 LO
●無休
●ランチコース 5064円~、ディナーコース 7174円~

柴田香織=文・構成 中庭愉生=写真

本記事は雑誌料理王国193号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は193号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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