食パン1本勝負の店、眺望抜群の山の上の店・・・・・・。個性的なパン屋さんが、それぞれどのようなユニークな手法で注目を集めているのか。全国各地のユニークなパン屋さんをご紹介します。
「ブーランジェリー・コムシノワ」で斬新なパンを発表して注目を集めたブーランジェ、西川功晃(たかあき)さんが独立した。それだけでも充分な話題だが、新たなスタイルでの販売方法がさらなる注目を集めている。
パンの陳列台に設置されたポールを挟み、スタッフとお客が近い距離で会話をしながら、それぞれの商品説明をして、購入するパンを決める。「パン作りのベーシックな部分を大事にしたパンを作りたかった。でも、そういうパンは地味で売れにくい。だから、ショーケースを挟まず、よりお客さまと近い距離で説明をしたいと考え、このスタイルを思いついたんです」と西川さんは言う。
失敗から誕生したパンなど、その秘話を解説することで、お客の興味は自然と高まる。実際、置いておくだけでは売れにくい商品も、詳しく説明することで、半数以上のお客が購入するという。ときには、西川さん自らが接客にあたる。ゆっくりした接客がモットーなので、最近は、週末などの混雑時に入店制限することもある。
陳列台の前に設置されたポールを挟み、スタッフがお客に寄り添うように接客しながらパンを選ぶスタイルが特徴だ。
店主 西川功晃さん
Takaaki Nishikawa
1963年京都府生まれ。「オーボンビュータン」、「ビゴの店」などを経て、「ブーランジェリー・コムシノワ」のシェフブーランジェを務める。2010年に同店を開業。
Ça Marche (サ・マーシュ)
兵庫県神戸市中央区山本通3-1-3
078-763-1111
● 18:00~19:00
● 水休
横浜・元町のカフェ「kaoris」の姉妹店として、2010年9月にオープン。ジャージー乳入り、オリーブ油入り、米粉、クルミやレーズン、ドライトマト入りなどの食パンを約10種類揃える。日本人が一番好きな食パンの発祥地・イギリスに注目し、約5坪の小さな店で35種類を提供。店名どおり、ご近所に親しまれるよう「あんパン」「メロンパン」などの定番商品もあるが、同店ならではのひねりを加えているところがミソ。火、日曜限定のサワー種入りバゲットも売り切れ必至の人気商品だ。
JR山手駅から徒歩15分ほどの商店街の一角にある店は、イギリスを意識したレンガの壁に白い外観が目を引く。
店主 鈴木清文さん
Kiyofumi Suzuki
1965年東京都生まれ。洋菓子店勤務後、「ポンパドール」、「サザビー」の製パン部門に18年勤務。フランス研修を経て、2007年に妻カオリさんとともに「kaoris」をオープン。
TOAST NEIGHBORHOOD BAKERY (トースト ネイバーフッド ベイカリー)
神奈川県横浜市中区本郷町1-25
045-263-8264
● 10:00~18:00
● 水休
● www.toastbakery.jp
食パン1.5斤、500円(送料別)。扱うアイテムは1種類のみ。平日で約250個、週末には約300個を売るという専門店だ。店頭での受け取りのほか、近隣への配達と地方発送も受け付けている。
高乳脂肪の生クリームを使い、バターと練乳をたっぷり加えるなど、原料にこだわり、リッチな味わいながらも毎日食べられる適度なバランスを保った食パンが特徴。保存料などは一切加えず、卵を使用しないため、アレルギー体質の子供でも安心して食べられる。
入り口に大きな樫の木が茂るレンガ造りの洋館を生かし、ベーカリー&カフェに。以前は外国人用住宅だったそう。
店主 武内史雄さん
Fumio Takeuchi
1976年兵庫県生まれ。ホテルのサービスマンを経て、レストランを営む先輩の協力を得て2008年に同店を開業。1アイテムに特化し、高品質の商品開発を実現した。
食パン工房 ラミ
大阪府大阪市福島区鷺洲1-5-17
06-6450-1976
● 12:00~17:00(売り切れ次第終了)
● 日、祝休
● www.lamie.jp
山の上という表現がこれほど当てはまる場所もめずらしい。車でしかいけない場所ながら、一軒家からの眺めは清々しく、ランチをしてパンを購入するお客が遠方からも訪れる。
阪神大震災をきっかけに、自然あふれる場所で営業しようと探し出したのが現在の場所。パン作りのほかカフェも併設。畑での野菜作りもし、作業は増えて忙しさは変わらないが、自然に密着した生活で、精神的な解放感を得られているとのこと。
身体にやさしい食材を心がけ、毎日40〜50種類のパンを焼いている。
阪和自動車海南東ICから約15kmの高台に位置する。最寄り駅からタクシーで約15分と、車でなければたどり着けない場所だからこそ、客席からの眺めは爽快。
店主 戸田 晶さん
Akira Toda
1956年和歌山県生まれ。大阪での修業を経て、宝塚でベーカリーを開業。10年間営業を続け、現在の場所へ移転した。山の上からは故郷の海南市に隣接する海が見える。
bakery terrace DOOSHEL(ベーカリーテラス ドーシェル)
和歌山県海草郡紀美野町釜滝417-3
073-489-5324
● 10:00~17:30LO(11~2月は16:30LO)
● 月、火休
● www.dooshel.com
大掛達也、斎藤優子、羽根則子、松野玲子・文
飯田 徹、石黒美穂子、川瀬典子、中庭愉生、平野 茂、伏木 博・写真
text : Tatsuya Ohgake,Yuko Saito,Noriko Hane,Reiko Matuno
photo : Toru Iida,Mihoko Ishiguro,Noriko Kawase,Yuu Nakaniwa,Shigeru Hirano,Hiroshi Fushiki
本記事は雑誌料理王国第209号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第209号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。