BRAMASOLE(ブラマソーレ)/ 髙橋健太
師匠「トラットリア シチリアーナ・ドンチッチョ」 石川勉
高校時代のアルバイトをきっかけに、料理に興味を持った髙橋健太シェフ。調理師学校を卒業し、船橋市のオステリアで経験を積んだ後に渡伊。ボローニャを中心に、リゾート地の大規模店から星付きレストランまで、約6年間腕を磨く。「オステリア勤務時代、現地に行く機会をいただきました。料理の美味しさだけでなく、食事を楽しもうとするエネルギッシュな人たちが醸し出す雰囲気にシビれてしまい、ますますのめり込んだのです」。
帰国後は独立を見据え「どんな状況にも動じない経験値が高く“イタリアっぽい”シェフのもとで学びたい」と考え、入店したのが石川勉シェフの「トラットリア シチリアーナ・ドンチッチョ」だ。イタリア帰りだったために、そもそも有名店であることさえ知らなかったが、約5年勤め、姉妹店「アンティカ・トラットリア シュリシュリ」の料理長に就任。
勤務開始当初、石川シェフからたびたび指摘されたのが「もっと男らしく!」ということだった。「ドンチッチョは、ワインと共に味わうのが前提の店だから、パンチが効いていることが重要だと解釈して今に至ります」
そんな修業時代の思い出の一皿であり、独立した今も提供しているのがシチリアを代表するご当地パスタ「鰯とウイキョウのスパゲッティ」。青魚の脂のうま味にウイキョウの甘くすっきりした香り、サフランのエキゾティック感や苦みなどが巧妙に混ざり合う。日本人にはイメージしにくい食材の組み合わせだが、味わってみれば、なぜこうした料理が誕生し、受け継がれてきたのか、背景であるシチリアの気候風土までがふわりと浮かびあがるような説得力と臨場感を持つ。鰯の主張をより強めるため、彦鰯から身が大ぶりな真鰯に変えたが、基本は当時のまま。
材料(約10人前)
真鰯 12尾
タマネギ 120g
ウイキョウの葉 300g
トマトペースト 80g
干しブドウ 40g
白ワイン 30ml
松の実 20g
アンチョビ 5尾
フェンネルシード 5g
ニンニク 適量
サフラン 2g
パン粉 適量
重曹 1g
塩、コショウ、オリーブ油 各適量
スパゲッティ90g(1人前)
作り方
1. 鍋に2.5lの湯を沸かし、重曹と塩ひとつまみを加え、ウイキョウの葉を柔らかくなるまで茹で、食べやすく切る。
2. ニンニクとオリーブ油を熱し、みじん切りにしたタマネギ、フェンネルシードを炒め、ウイキョウの葉、トマトペースト、アンチョビを加える。
3. 三枚におろし、ぶつ切りにした真鰯を 2 に加えて塩、コショウし、白ワイン、1の煮汁2lを注いで沸かし、干しブドウと松の実、サフランを入れ、アクを取りながら1時間ほど煮込む。
4. フライパンに 3 のソースを入れて塩で味を調え、塩湯で茹でたスパゲッティを絡めて皿に盛り、フライパンで炒ったパン粉を振りかける。
text 木村千夏 photo 篠原宏明
本記事は雑誌料理王国2020年8・9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年8・9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。