団体のお客さまのご利用がありました。お酒の席ですので、楽しまれるのは良いのですが、あまりに大声を出したり、余興のようなことを始められましたので、他のお客さまの迷惑も考えて、スタッフが「もう少し静かにしてください」とお伝えしたら、納得していただけました。
ところが数日後、あるクチコミサイトで店を誹謗中傷するような書き込みを発見しました。書きぶりからすると、おそらくその団体さまのようです。あきらかに事実と違うことも書かれているので、削除してもらいたいと思いますが、どうすべきでしょうか。(50代 居酒屋オーナー)
クチコミサイトの利用が一般的になってから、ネット上の誹謗中傷についてのご相談が増えました。
まず知ってほしいのは、あきらかな虚偽、誹謗中傷を書き込めば、民事上の不法行為に該当します。具体的な金額は別としても、損害賠償請求も可能です。悪質な場合には、刑事上の偽計業務妨害罪が成立する余地もあります。
第三者が運営しているクチコミサイトなら、管理者に連絡し、その書き込みの閲覧を一時的に停止したり、削除を求めていくことになるでしょう。大手サイトなら、店とお客の紛争に巻き込まれないように、公開停止の対応をしてくれることもあります。
ただ、クチコミサイトの場合、そこまで露骨な表現はほとんどなく、「態度が悪い」「おいしくない」「不快」といった主観的な
内容が多く、それ自体は個人の評価・感じ方の問題なので、法的に責任を追及することはできないのです。
あきらかに虚偽だというものには毅然と対応するとしても、「評価」なら、あまり神経質にならず、「そう感じる人もいる」と考えて、今後に活かす方がよいでしょう。神経質に対応しすぎると、かえって「炎上」することもあります。
1つの「悪い書き込み」を消すよりも、5つの「良い書き込み」を獲得する。そんな風に前向きに考えるのがよいでしょう。
飲食店専門弁護士 石﨑冬貴
1984年、東京都生まれ。神奈川県弁護士会会員。横浜パートナー法律事務所所属。飲食店法務を専門的に取り扱うほぼ唯一の弁護士。著書に『なぜ、飲食店は一年でつぶれるのか?』(旭屋出版、2018年)がある。
本記事は雑誌料理王国290月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 290月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。