【コロナウイルス関連記事】「マルディ グラ」和知徹シェフのこれから


今「選ばれる店」になるには、お客さまの事情や想いを徹底的に意識することです

6月1日のマルディ グラ

銀座に「マルディ グラ」を構えて20年になる和知徹シェフ。 豪快な肉料理、自らが旅した世界各地の郷土料理を取り入れた品々で、オリジナルな世界を作り出している。 流行に左右されず、自分の好きな味を追求する姿勢はコロナの最中もそれ以降も変わらない。取材をした6月1日も、冷静な口調で今までの対策、今後に対する考えを語ってくれた。和知シェフは中国で新型コロナウィルスの感染者が出ているという報道があった1月には、店のスタッフにマスク着用を指示するなど、個人的に危機感を強めて対策をとっていたという。その一方で、店は3月中旬まで満席続き。しかし3月20日を境に、銀座の街が変わった。

「デパートが自主的に休業するなど非常時の空気が流れ、人がどんどんいなくなったんです」。この激変を目の当たりにし、「危機は長丁場になる」とすぐにテイクアウト販売の準備をはじめ、4月1日からレストランを臨時休業に。同日から予約制でテイクアウトの販売を開始した。料理のラインアップは、過去のイベントで何度も出してきたオリジナルのハンバーガーをメインに、「トスカーナフライドポテト」「ポルトガル風 鴨ごはん」など。「店のカラーも大事にしましたが、一番重視したのは安全性。素材はしっかりと加熱調理、ご飯は速やかに冷ましてから盛りつけるなど、食中毒を出さないよう徹底しました」という。なおテイクアウトは6月の頭、食中毒の危険が高まる季節に入ったのを機に終了した。

レストランの営業は、5月の中旬からディナーのみを、東京都の要請に応じた時短で限定的に再開。今まではアラカルトで提供していたスタイルをプリフィクスのコース(税別7500円)とするなど、店への滞在時間が短時間となるよう変更した。コースの内容は突き出し、前菜(2種類から選択)、メイン(魚と肉の数種類から選択)、デザート(2種類から選択)、エスプレッソというシンプルなスタイル。「コロナを経験して、お客さまが外食に求めるものが決定的に変わるはず。ホッとできる料理に人々の関心がいくと思います」 と話す通りの安心感、満足感を得られる内容だ。

それから&これから

5月中旬から再開した営業は、その後好調を維持。7月には予約が途切れない状態まで回復したという。しかし都内におけるウィルス感染者数の増加に伴い、8月に入り再び都から時短営業が飲食店に要請されることに。そして銀座は、世間の空気を特に強く反映する場所。「店は、日によって満席だったり閑古鳥だったり、と安定しない状況です」 と話す。
4~5月の苦境に際しては、テイクアウトで料理を販売できたが、 食中毒の危険の高い夏にそれは難しい。そこでマルディ グラでは、今までも要望のあったランチ営業に8月11日から取り組むこととした。その内容は、「尾崎牛のバタ焼き マデラ風味」(税込2500円)、彩り豊かな野菜と玄米のベジタリアンメニュー「ブッダボウルMGスタイル」(同1500円)、中央アジアの麺料理をアレンジした「羊肉のラグマン 汁なしスタイル」(同1400円)など。「暑い時期でも食べたいと思わせる、想像力を刺激するメニューを考えました」と話す。「どのレストランもそうでしょうが、8、9月が一つの山場」という和知シェフ。「この時期にお客さまが選んでくださる店になるには、店側からの押しつけの料理はまず難しいと思います。 食べる側のことを意識することが大事です」と話す。

text 柴田泉

本記事は雑誌料理王国2020年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年10月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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