泡菜(パオツァイ)とは野菜を乳酸発酵させた漬物のこと。
そのフルーティーな酸味とうまみが溶け込んだスープは唯一無二。飲めば飲むほど胃腸が元気になってしまいそうな火鍋を味わおう。
トマト、唐辛子、豆類、米のとぎ汁、小魚など、ありとあらゆる食材を甕の中で発酵させ、それらを鍋の素として使う中国貴州省。そんな地域の家庭料理を味わえる店が、目下日本唯一の貴州料理専門店「貴州火鍋」だ。
店では干し納豆を使った豆豉火鍋や、発酵トマトを使った紅酸湯などの鍋料理があるが、今回ご紹介するのは発酵野菜と鶏肉の火鍋。貴州省の料理上手な家には必ずある、自家製の泡菜(パオツァイ)を使った火鍋である。
泡菜とは、野菜を 3~4%の塩水で乳酸発酵させた漬物のこと。「うちの泡菜は、漬物上手として知られるおばあちゃんからもらった 20年物の“老塩水”を混ぜているの」と林さんが言う通り、おいしさの決め手は漬け汁にあり。すでにうまくいっている泡菜の漬け汁をスターターにするというのは、日本の糠漬けにも通じる発想といえよう。
店では泡菜専用の甕、泡菜壇子で仕込んでいるが、ガラス瓶やボウルにラップをしても作れる。ポイントは、中に油分や雑菌が入らないよう焼酎などで消毒し、水道水ではなくミネラルウォーターや湯冷ましで仕込むことだ。数日経って表面に産膜酵母が張ってきたら「混ぜてもいいし、白酒を少し加えてもいい」と林さん。数日間でフルーティーな酸味とうまみが出たらいよいよ食べ頃。できあがった泡菜にはほどよい塩味があるので、そのままつまみにもなれば、肉と炒めたり、魚や肉を使った鍋料理にしたりと使い出がある。
また、唐辛子と生姜以外の野菜は、漬け込む前に3日ほど軽く干し、歯ごたえを残すようにするのが貴州式。鶏肉も、肉だけでなくレバーやハツ、砂肝など食感の異なるモツを入れることで、より現地に近い味わいになる。
この鍋は、泡菜さえ上手にできれば調味の心配はいらない。油は少量でスープはフルーティー。鶏のうまみが泡菜の風味と相まって、煮れば煮るほど滋味深くなっていく。最後は米の粉の麺、米粉(ミーフェン)で締めたいが、その前に飲み干してしまうことだろう。
軽く干した野菜を塩水に漬け、乳酸発酵させた泡菜(パオツァイ)が味わいの決め手。大根、キャベツ、唐辛子、生姜など複数の泡菜を取り合わせ、炒めた鶏肉、鶏モツ、野菜を、鶏のスープと泡菜の漬け汁で煮込む。
材料(4人分)
<泡菜(漬物)>
ネラルウォーター……1,500cc
塩……40-50g
氷砂糖……4-5塊
白酒……15cc
花椒……大さじ1杯弱
好みの野菜(大根、キャベツ、新生姜、生唐辛子)
<鍋の素>
泡菜(大根、生姜、唐辛子、キャベツ)……各30g
にんにく……1粒
長ねぎ……半分
油……適量
<具1>
鶏もも肉……大1枚(約600g)
砂肝……100g
レバー……100g
塩……少々
<具2>
茶樹茸、豆腐、じゃがいも、かぼちゃ、ほうれん草、白菜、春雨
<スープ>
鶏ガラスープ……1,200cc
泡菜の汁……100cc
<つけだれ>
水豆豉(納豆で代用可)、 辣椒面(焙煎唐辛子粉)、小ねぎ、醤油、塩……各適量
作り方
[泡菜の仕込み]
[鍋の仕込み]
text サトタカ(佐藤貴子) photo 鈴木泰介
本記事は雑誌料理王国2020年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年12月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。