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トスカーナ地方の冬の定番料理「リボリータ」を知っていますか?


冬の定番、トスカーナの伝統的家庭料理を濱﨑流に

 リボリータといえば、白インゲン豆や黒キャベツなどの野菜がたっぷり入ったイタリア・トスカーナ州の伝統的なスープだ。イタリア語で「煮込む」という意味の「ボリータ」に、「再び」という意味の「リ」をつけた「リボリータ」は、文字通り、「再び煮込んだもの」。本来は、余った野菜や豆に、硬くなったパンを加えてグツグツ煮込んだ家庭の味だ。

古典の知識を踏まえた上で洗練を加えリストランテの皿に

 当然、家庭やレストランによって味も見た目もさまざま。
「僕が向こうで食べたリボリータの多くは、もっと水っぽかったですね。器にパンを敷いて、その上に野菜スープをかけて、スープをパンに吸わせて食べるといった感じ。でも、僕はもっと煮詰めます」と、濱﨑さん。イメージとしてはミネストローネを煮詰めた感じ。それをオーブンで焼いて、ゲストに提供する。
「古典料理では、リボリータに生の葉タマネギを添えていたみたいです。リボリータを食べながら生の葉タマネギをかじって、そのピリピリ感を楽しんでいたようなんです」

 でも、現代では葉タマネギを添えることはほとんない。
「伝統をまったく無視するのではなく、古典ではどうしていたのかをちゃんと知ったうえで、ウチでは赤タマネギとイタリアンパセリのサラダを添えるようにしています」

 パンも下に敷くのではなく、ガーリックトーストを脇に添える。「本当に地味な田舎料理なのですが、冬になると何となく食べたくなる。だからウチでは、昔から冬の定番料理になっています」

 リストランテ濱﨑では、冬のコース料理のひと品として、ココットに入ったリボリータが登場する。野菜や白インゲン豆などをコトコト煮込んだ素朴な料理。それでも、なぜか洗練されたリストランテのひと皿と感じられるのは、トップシェフ濱﨑さんの感性や経験、テクニックのなせる技なのだろう。

 伝統的な家庭料理にオリジナリティを加味する。そこから、その店ならではのシグニチャーディッシュが生まれる。トスカーナの家庭料理もまた、長い時間をかけて"リストランテ濱﨑のシグニチャーディッシュ"へと姿を変えたわけだ。

何回かにわけて材料を煮込んだら、最後は蓋を開けたまま野菜の水分が鍋の表面からなくなるまでゆっくり煮込んでいく。

白インゲン豆と黒キャベツは欠かせない材料

「残りものの野菜や硬くなったパンをおいしく活用するための家庭料理なので、何を入れても構いませんが、白インゲン豆と黒キャベツは欠かせません」と濱﨑さん。
 ガーリック油を熱してベーコンを炒めた鍋にタマネギを加え、塩を強めにふって透き通るまで炒め、蓋をしてしんなりするまで蒸し煮にする。「僕は家で煮込み料理などをするときも、密閉性の高い鍋を使って蒸し煮にします」

 その後、ニンジン、セロリ、カブ、ジャガイモ、カボチャ、サトイモ、サツマイモは皮をむいて1センチ角に切りそろえて鍋に加え、さらに蒸し煮にする。
「新しい材料を加えるたびに、全体に油が回るように炒めてから蓋をして、しんなりするまで蒸し煮にするのがポイントです」
 今回は、甘味のある日本ホウレンソウを使用。イタリア産白インゲン豆は濱﨑シェフが水煮したものを使った。

 最後にトマトペーストとブイヨンを加え、蓋を外したままじっくり煮込み、オーブン皿に入れてパルミジャーノ・レッジャーノを振って、200度のオーブンでチーズに焼き色が付くまで焼けば完成だ。

赤タマネギとイタリアンパセリを、塩と赤ワインヴィネガー、エクストラ・ヴァージンオリーブオイルでつくったドレッシングであえて、盛り付ける。

 ほっこりやさしい味は、まさにマンマの料理。

「地味な料理ですけれど、毎日食べても飽きない味。リボリータは、そんな料理なのでしょうね」
 濱﨑シェフの冬のシグニチャーディッシュは、ゲストの心も体も温めてくれる極上のひと皿である。

【レシピ】濱﨑流 リボリータ

リボリータ
ミネストローネを煮込んだようなイメージ。赤タマネギとイタリアンパセリのサラダを乗せ、ガーリックトーストを添えるのが濱﨑シェフ流。「リストランテ濱﨑」の冬の定番だ。

【材料】(作りやすい分量)

ベーコン(スライス)…130ℊ/タマネギ…350ℊ/ホウレン草…100ℊ/黒キャベツ(オリーブオイルで炒めたもの)…150ℊ/白インゲン豆(水煮したもの)…150ℊ/ガーリックオイル…大さじ4/塩…適量/トマトペースト…60ℊ/ブイヨン…1.5ℓ~/パルミジャーノ・レッジャーノ、赤タマネギ、イタリアンパセリ、ガーリックトースト…各適量
野菜A
ニンジン…250ℊ/セロリ…150ℊ/ズッキーニ…150ℊ/カブ…240ℊ/ジャガイモ…240 ℊ/カボチャ…240 ℊ/サトイモ…140ℊ/サツマイモ…140ℊ

【作り方】

1. 白インゲン豆はザルにあげて水気を切る。

2. 野菜Aはすべて皮をむいてから1㎝角に切りそろえる。ベーコン、タマネギも1㎝角に切りそろえる。

3. ホウレン草はざく切りに、仕上げにのせる赤タマネギは薄切りにして水にさらす。

4. 鍋にガーリック油を熱し、ベーコンを中火で炒める。脂が出てきたらタマネギを加え、塩を少し強めにふって透き通るまで炒めて蓋をし、しんなりするまで蒸し煮にする。

5. 4に野菜Aのニンジン、セロリ、ズッキーニ、カブ、ジャガイモ、カボチャ、さといも、サツマイモの順番に加えて蒸し煮にする。材料を加えるたびに、全体に油が回るように炒めてから蓋をして、しんなりするまで蒸し煮にする。ホウレン草、白インゲン豆、黒キャベツを加えてざっと合わせる。

6. トマトペーストとブイヨンを加えて強火にかけ、沸騰したらあくを取って中~弱火にし、野菜の水分が鍋の表面からなくなるまで蓋を外したままゆっくりと煮込んで火を止め、塩少々で味をととのえる。

7. オーブン皿に6をよそい、パルミジャーノ・レッジャーノをふり、200℃のオーブンでチーズに焼き色がつくまで焼く。

8. 赤タマネギとイタリアンパセリをのせ、好みでガーリックトーストを添えてできあがり。

Ryuichi Hamasaki
1963年鹿児島県生まれ。日本調理師専門学校を卒業後、渋谷の「バスタ・パスタ」を経て、イタリアで修業を積む。乃木坂「リストランテ山﨑」で料理長を務め、2001年に「リストランテ濱﨑」を開く。

リストランテ濱﨑
Ristorante Hamasaki

東京都港区南青山4-11-13
03-5772 -8520
● 12:00~14:00LO(木~土のみ) 18:00~21:30LO
● 日、祝の月、年末年始休
● 28席
http://ristorantehamasaki.com


山内章子=取材、文 村川荘兵衛=撮影

本記事は雑誌料理王国第260号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第260号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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