食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

【シェフ達を魅了するあの一皿】いつも通りではダメ!27年進化を続ける看板料理


料理人の全てを表現しているともいえる、「シグニチャーディッシュ」。シェフたちが憧れ、心から「食べたい」と思うひと皿はどの料理か? 料理王国では120店のレストランに「食べてみたいシグニチャーディッシュ」のアンケートを行い、集計。得票の多かったベスト・シグニチャーディッシュを紹介する。

イワシとジャガイモの重ね焼きトリュフ風味

27年進化を続ける看板料理

今年30周年を迎えた「ラ・ブランシュ」。オーナーシェフ、田代和久さんのシグニチャーディッシュは、27年間作り続けている「イワシとジャガイモの重ね焼きトリュフ風味」。重ねた生のイワシと蒸したジャガイモを生ベーコンで包み、蒸し焼きにする。切って皿に盛り付けたら、アンショワクリームのムースをのせ、トリュフの香りを含ませる。イワシの軽いスープを添えて、客席に。

クラシカルな窓ガラスから日が差し込む店内は、まるでパリのレストランのよう。「イワシとジャガイモの重ね焼き」は、通年あるメニューで、来店の度に注文するゲストも多い。

食材を知り尽くして完成させた味
リクエストがあってこそ初めて看板料理に

「イワシとジャガイモが大好きなんですよ。イワシは香りもコクもある。大地の香りいっぱいの、ジャガイモを合わせた時の旨さが好きなんです」と田代さん。何度も「食べて考え、考えては食べ」を繰り返した。しかし、何かが違う。イワシとジャガイモを単体で毎日食べ続けた。それぞれの味を感じなければ、ひとつの料理はできない、と思ったから。今のスタイルに到達するまでには、試行錯誤の連続だった。

「これで完結したわけじゃありませんよ」
 自分の年齢とともに、求める味も変わっていく。「僕は、自分が食べたいと思ったものを作っているんです。でも、僕が思っているだけではシグニチャーにはならない。お客さまからのリクエストがあって初めて、店の看板料理になるんです」。

イワシとジャガイモの重ね焼きの上に、アンショワクリームのムースをのせる。

 1年を通して出すから、苦労するのが食材選びだ。とりわけジャガイモの選び方には注力する。季節に応じて4〜5種類は取り寄せ、食べ比べる。理想は、土の香りがする、イワシに負けない余韻のあるジャガイモだ。キタアカリを好んで使うが、大切なのは品種ではなく、味。「これだ」という芋がみつかるまで、とことん探し続ける。また、フレッシュなジャガイモはイワシと馴染まないため、じっくリ寝かせて旨味が増した、熟成したジャガイモを使う。

 田代さんが料理を作るうえで一番大切にしていること、それは「慣れないこと」だ。「怖いです。いつもドキドキなんです」。だから毎日、味見は欠かさない。

「いつも通りに作ろう、ではダメ。もっと旨く作ろうと思ってやらないと」

Kazuhisa Tashiro
1950年福島県生まれ。調理師学校卒業後、都内のフランス料理店を経て29歳で渡仏。「ルーテンデ」などのレストランで働き、32歳で帰国。銀座「レザン・ドール」のシェフを3年務め、36歳で「ラ・ブランシュ」を開く。
「イワシとジャガイモの重ね焼き トリュフ風味」
イワシとトリュフとベーコンの旨みを、ジャガイモが全部吸い込んだ、言わばジャガイモを食べる料理。上にのっているのは、アンチョビ、ケイパー、生クリームで作ったムース。添えてあるのはイワシのスープ。

ラ・ブランシュ
La Blanche
東京都渋谷区渋谷2-3-1 青山ポニーハイム 2F
03-3499-0824
● 12:00~13:30LO 18:00~20:30LO
● 水・第2・4火休
● 18席


名須川ミサコ=取材、文 中西一朗=撮影

本記事は雑誌料理王国第260号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第260号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする