春の訪れを告げるイチゴ。ころんと丸いフォルムに真っ赤なルックス、甘酸っぱい香りがなんともチャーミング。そんなイチゴ、実は品種がたくさんあるのです。全国にあまたある品種のなかから、人気種を取り挙げ紹介します。
凡例:[硬さ/糖度/酸度]→硬さ=★★★(極硬)、★★☆(硬)、★☆☆(中) 糖度=★★★(高)、★★☆(中)、★☆☆(低) 酸度=★★★(高)、★★☆(中)、★☆☆(低)を表す。
[登録年]1996年
[交配種]久留米49号X栃の峰
[主産地]栃木県・茨城県•愛知県
[食べられる時期]11~6月
[大きさ/形状]大/円錐
[硬さ/糖度/酸度]★★★/★★★/★★☆
「女峰」に次ぐイチゴとして栃木県が開発。果皮は光沢のある鮮紅色。果肉は淡紅、果心の色は紅赤。酸味と甘味のバランスがよく、ジューシー。糖度が高く生食用に適している。果皮、果肉ともに硬く日持ちするのがポイント。
[登録年]1992年
[交配種]久能早生☓女峰
[主産地]静岡県・愛知県・三重県
[食べられる時期]12~5月
[大きさ/形状]大/長円錐
[硬さ/糖度/酸度]★☆☆/★★★/★☆☆
女峰の酸味、病害抵抗性などの問題を解決するために、静岡県の民間育種家・萩原章弘氏が育成し登録。果皮色は光沢があり、鮮紅色。高糖度で酸味が少なく、あっさりした甘さがある。果皮、果肉ともにやわらかめで、食感がよいのが特徴。
[登録年]2002年
[交配種]章姫☓さちのか
[主産地]静岡県•愛媛県
[食べられる時期]11~5月[大きさ/形状]大/長円錐
[硬さ/糖度/酸度]★★☆/★★★/★★☆
静岡県が開発し、2002年に品種登録。果皮の色は光沢のある鮮赤色。果肉中心部まで赤みがあり、カット面も美しい。香りがよく、強い甘味と程よい酸味があり、味のバランスがよい。傷みにくいのも特徴。急速に栽培が増えている。
[登録年]1985年
[交配種] (ダナーx (はるのか☓ダナー))☓麗紅
[主産地]香川県
[食べられる時期]11~5月
[大きさ/形状]中/円錐
[硬さ/糖度/酸度]★☆☆/★★★/★★★
イチゴらしい甘酸っぱさがある、かつての東の雄。甘味、酸味、香りが優れており、バランスがよい。カット面が美しく、製菓用としても使われる。栃木県では「とちおとめ」など新品種への世代交代が進み、現在は香川県が主産地。
[登録年]1996年
[交配種]久留米49号X栃の峰
[主産地]栃木県・茨城県•愛知県
[食べられる時期]11~6月
[大きさ/形状]大/円錐
[硬さ/糖度/酸度]★★★/★★★/★★☆
「女峰」に次ぐイチゴとして栃木県が開発。果皮は光沢のある鮮紅色。果肉は淡紅、果心の色は紅赤。酸味と甘味のバランスがよく、ジューシー。糖度が高く生食用に適している。果皮、果肉ともに硬く日持ちするのがポイント。
[登録年]2005年
[交配種](とねほっぺ☓とちおとめ)☓とねほっぺ
[主産地]群馬県
[食べられる時期]12~5月[大きさ/形状]大/円錐
[硬さ/糖度/酸度]★★★/★★★/★☆☆
群馬県農業技術センターが開発。大果で糖度が高く、とても食味がよい。果皮が強いため、輸送性にも優れる。果皮は明赤、果肉色は橙赤、果心の色は淡赤。高温期でも高い糖度と鮮やかな色を保つのが特徴。
岐阜県の試験場で育成された品種。酸味が少なめで甘みが強い。口どけがよく、大粒であることが特徴。岐阜県のイチゴの栽培面積の約6割を占める。
奈良県が育種し2000年に品種登録。交配種は「アスカウェイブ」☓「女峰」。つやがあり、鮮やかな赤紅色の果皮で、糖度と酸度のバランスがよい。肉質はしまっているが、ジューシーである。年々栽培面積が増加。主産地は奈良県。
新潟県が育種し、県内でのみ栽培されているオリジナル品種。1994年に誕生し、今年で13年目を迎える。円錐形で果皮は淡赤。交配種は(「ベルルージュ」☓「女峰」) ☓「とよのか」。香りに富み、甘味が強い。また果肉がやわらかく、ジューシーなのが特徴。
愛知県が育成した新品種。円錐形で、大きな粒が揃う。果皮は明紅色。しかも完熟しても黒ずまない。硬く傷みにくいので、流通性に優れる。ジューシーな食感。適度な甘さと酸味があるため、食味はすっきりとさわやか。
高冷地生産なので4月中旬から6月下旬に生産される。糖度がある割には硬く、きれいな表皮なので業務用に適している。果皮は明赤、果肉の色がオレンジ系の赤、果心の色は淡赤で、高温期でも黒ずまないというメリットが売り。交配種は「とねほっぺ」☓「北の輝」、2005年に品種登録された。主産地は群馬県。
岐阜県の試験場で育成された、新しい品種のひとつ。大粒で、果皮は明る<鮮やかな赤色をもつ。果肉は硬く、業務用の対応にも適している。岐阜県での栽培面積は年々増加しており、今後の期待が大きい。主産地は岐阜県。
円錐形で肉厚、通常の2~4倍もの大きさをもつ。酸味が少なく食べやすい。香り高く、果皮は鮮赤色で果肉も赤い。贈答用として根強い人気があり、‘‘ 愛" にちなんで、バレンタインデーの時期によく出る。主産地は千葉県。
福島県農業試験場(郡山市)において、「章姫」と「さちのか」を交配して育成された品種。糖度は高く、ほどよい酸味もあり、食味は良好。果皮の色は鮮紅、果形は長円錐、果肉色は淡紅、果実の光沢はよい。
夏秋イチゴのシーズンの前、晩春に生産される。果皮色は鮮紅色で色むらが少ない。果形は円錐形で硬く、味が強く食味もよい。収穫量は多くないものの、大果で上物が多い。果肉の色は橙赤、果心の色は白。交配種は「きたえくぼ」☓「とよのか」で、2004年に品種登録された。主産地は北海道。
いわゆる夏秋イチゴと呼ばれる、四季成品種の代表品種。交配種は(「サマーベリー」☓「みよし」)☓「アスカウェイプ]。長円錐形でやや大きめ、果皮は硬く輸送性に優れる。香り高くジューシー、ほどよい酸味があり、主に業務用に使われる。主産地は北海道。
日本の生食用イチゴの生産量は泄界ーというほどのポピュラーぶりだが、イチゴが大衆化したのは第二次泄界大戦後のこと。品種改良とハウス栽培の発殷が、イチゴの生産最の飛躍的増加にひと役かったといわれる。特に昭和30年代から40年代にかけてはアメリカからの「ダナー」、国産品種の「宝交早生」の人気が高く、それまで高嶺の花であったイチゴの大衆化に大きく貢献したようだ。しかし昭和50年代には西の「とよのか」、東の「女峰」の二大品種に、その人気をとってかわられることになる。そして現在、東では「女峰」にかわって「とちおとめ」、西では「とよのか」の人気は依然として強いものの、 「あまおう」「さちのか」「さがほのか」など各県とも新品種づくりに取り組んでいるため、品種交代がみられる。さらに各地域でのイチゴの品種改良はめざましく、味はもとより輸送面や8持ちの面などで優秀な品種もたくさん出てきた。概して、最近は大玉で、酸味が少なく甘いイチゴが好まれる傾向にあるようだ。
イチゴの主産地は温暖な気候の土地が多いが、北海道や東北地方も近年イチゴ栽培に力を入れている。その主流は寒冷地栽培に適した夏秋イチゴで、主にケーキなどの業務用になる。生食の場合は大きいほどよいが、大きすぎるとケーキの上にのらないので、さほど大きくないサイズ、そして丸ごとトッピングに使うことも多いので見た目にきれいな円錐形が求められる。また生食用は甘い品種が人気だが、製菓用の場合は、クリームとのバランスから適度な酸味も必要である。またイチゴは傷みやすいので、流通面でも配慮が必要とされる。現在、品種は百花絞乱、流通に関しても多様化がみられ、同じ産地でも、一般の流通にのせるものと、生産農家の近所で、たとえば直売所や道の駅などで販売するイチゴの品種とが違っていることも少なくないようだ。地元でしかお目にかかれない品種は生産量的にも認知度的にも低いが、実は隠れた名品である可能性も十分に高いといえよう。
文・羽根則子 地図・伊藤尚彦
本記事は雑誌料理王国151号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は151号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。