日本屈指のオリーブの産地、香川県小豆島。温暖な気候に恵まれた瀬戸内海に浮かぶこの島から今春、ブランド牛が誕生した。小豆島産オリーブ飼料で育てた「オリーブ牛」だ。「オリーブには旨味成分のオレイン酸が豊富に含まれます。小豆島産オリーブの搾りかすで作ったオリーブ飼料を讃岐牛に食べさせたらいい脂になるのではと、2007年から与え始めました」と語るのは、オリーブ牛生産者の石井正樹さん。
その翌年、石井さんが出荷した枝肉を見た加古川中央畜産荷受(株)(兵庫県加古川市)社長の平井信正さんが、「いい脂肪だ。小豆島のブランド牛として育ててみたら」とアドバイス。自信を得た石井さんは、隣島の小豊島(おでしま)の畜産農家も誘い、09年から3戸でオリーブ牛の飼育を始めた。
オリーブの搾りかすは水分が多く、渋味も強い。当初、石井さんは天日乾燥させたものを与えていた。その後、小豆島内のオリーブオイルメーカーに依頼し、搾りかすを乾燥機にかけ、16時間かけて高温で焙煎するなどオリーブ飼料に改良を加えた。すると、カラメル風の香ばしい甘味が生まれ、牛の嗜好性が向上したという。
「オリーブ飼料を出荷前のカ月以上、毎日与えるため、抗酸化成分や旨味成分のグルタミン酸が増えます。おかげでモモ肉などの赤身でもやわらかく、脂がさらりとしていて、甘味も旨味もあるんです」
3等級でも充分旨味があり、ヘルシーなのがオリーブ牛の最大の特徴。香川県では今後生産量を増やし、全国区をめざしている。
写真は5等級だが、オレイン酸を多く含むオリーブ牛は3等級でも脂が甘く、肉もやわらかい。
石井さんの牛舎。牛は甘い香りがするオリーブ飼料を好んで食べる。
香川県内で育てられた讃岐牛(黒毛和牛)に、オリーブの搾りかすで作った小豆島産のオリーブ飼料を、出荷前の2カ月以上、毎日一定量食べさせたのがオリーブ牛だ。2010年の発表以来評価が高まり、今年から県内全域で生産が始まった。オリーブ牛の中でも、小豆島と小豊島(おでしま)で育てられたものは「小豆島オリーブ牛」と呼ばれる。オリーブ牛生産者の石井さんが小豆島で牛の飼育を始めたのは1968年。当初酪農を行っていたが、肉牛の飼育に転じた。加古川食肉地方卸売市場(兵庫県加古川市)などに出荷してきたが、銘柄牛が乱立し価格が上がらず、香川県の特徴を出そうと、07年、オリーブ飼料に着眼した。
中島茂信=文、森寛一=写真
本記事は雑誌料理王国2011年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2011年8月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。