アワドリと白レバーのテリーヌフルーツのチャツネ添え
徳島産地鶏のもも肉がベース。中央に詰めた白レバーが存在感を主張する。フルーツのチャツネはイチゴやマンゴーなど季節で変わる。
店をオープンするなら、銀座か表参道あたりで。名店で研鑽を積んだ和田倫行さんは、そう考えていたという。「こだわりの料理を低価格で出したいし、ワインも店でちゃんと管理したい。実際に物件を探してみると、そんな自分の理想と折り合いがつくものはあまりなかったんです」。その中で浮上したのが、実家のある八丁堀。改めて周囲を見まわしてみると、そこは東京駅に近く、交通の便がよい場所。人口が多いわりに、これぞというレストランはさほど見あたらない。「店に特徴さえあればお客さまは必ず来てくれるはず」と、両親が営む入船屋酒店を改装して独立することにした。
和田さんの考える特徴とは、本格的なビストロを志向すること。そこには近年ビストロ自体は増えているものの、定食屋レベルの料理が多いとの思いがある。だから、午前中から仕込みを始めるし、フォンもソースも星付きレストランと同じように手間ひまかけて作る。あくまでも料理で勝負しつつ、価格は抑えてサービスもカジュアルに。ビストロだから料理のグレードを下げるという発想は、まるで見られない。「めざすところはビストロ界の三ツ星」と和田さん。夜な夜なお客を魅了してやまない料理には、その心意気がたっぷりと詰まっている。
「フランス産ほろほろ鳥もも肉 エビ詰めロースト ノイリーの香りのソ ース」。もも肉の中から、エビよりも大きなフォアグラが登場。
和田倫行さん
1971年東京都八丁堀生まれ。都内フランス料理店で修業後、スイスへ。帰国後、六本木「ヂーノ」、ストリングスホテル「ザ・ダイニング」副料理長などを経て2010年に独立。
本記事は雑誌料理王国2012年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2012年8月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。