イタリア料理界の重鎮、落合務シェフの下で14年間腕を振るい、料理のベースを築き上げた「イル プロフーモ」の天野智詞さん。その後のイタリア修業や、現在ともに働くシェフから受けた刺激を昇華し、パスタに仕立てた。
ムール貝、ズッキーニ、燻製トマトソース、オリーブオイルと、今回、天野智詞さんが使用している食材とその組み合せは、いずれも思い入れがたっぷり反映されている。
「ムール貝とズッキーニは、カンパーニャでメジャーな組み合せ。ズッキーニとオリーブオイルのピュレは、イタリア料理に目覚めた組み合せです」
トマトの燻製ソースは、修業先のリストランテで学んだもの。
「その店の裏で育てたオリーブの枝で、甘味と旨味を持つサンマルツァーノを燻製し、コクと酸味を与えてバランスを取る調理があり、それを再現しました」
さらに、パンチェッタはあえて脂分を用いて香りを移し、白ワインとたっぷりの黒こしょうで蒸したムール貝を加える。
「ダブルシェフを務める永原武史さんから、彼の修業先のエミリア─ロマーニャ州の名物料理で、パンチェッタ、トマト、ムール貝などが入った『ピサレイ・エ・ファソ』の話を聞いて、魚の旨味と肉の旨味の組み合せを思い付きました」
また、メニューを考える上でオーナーソムリエである淵本聖一さんセレクトのワインとのアッビナメントを大切にし、それによりパスタがひとつ上のステージに上がることも意識している。こうして、さまざまな出会いから、新たなメニューを創造するヒントを得ている天野さん。真摯に吸収していく姿勢は、14年間過ごした「ラベットラダオチアイ」時代から変わらない。
イタリアンの巨匠、落合務さんに憧れていた天野さんは、専門学校卒業後の進路も迷うことなく、落合さんの店へ舵を切った。当時は、ベットラがオープンして2年目頃。落合さんの本を夢中で読んでいた。パスタに関して落合さんから学んだことも多々あった。
「今でも肝に銘じているのが、時間の逆算の考え方です。麺がゆで上がる前に、ソースも具も、すべてベストな味の状態にととのえておく。ゆで上がってから、塩分を調整しているようでは、時間との闘いに負けてしまいます」
ほかの先輩シェフからも、脈々と流れる「落合イズム」を学んだという天野さん。
「お会いしても畏敬の念を抱いていますし、言葉はそれほど交わしません。でも、握手ひとつでわかる。パワーをもらえる。認めてもらえるよう、今後もがんばるつもりです」
イル プロフーモ
Il Profumo
東京都中央区日本橋人形町2-33-4 BPRレジデンス人形町東和ビル 2F
03-6231-0815
● 11:30~13:30LO 18:00~21:00LO ワインバー 21:00~23:00LO
● 日、第1・3月休
20席
www.ilprofumo.net
浅井直子=取材、文 sono(bean)=撮影
本記事は雑誌料理王国第288号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第288号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。