本記事は、5月7日(木)発売の料理王国6・7月合併号緊急特集「コロナ時代の食の世界で新しい「ものさし」を探しに。」に掲載中の記事から、現在の状況を鑑みて特別に公開するものです。
今、誰もが経営的にも「我慢」のとき。しかし、国や自治体などでは続々と飲食店も使える助成や融資の支援策が決定されている。「もらえる」ものは素早く受け取り、アフターコロナのために賢く「借りる」には?資金繰りのヒントをマネーのプロに聞いた。
「飲食業の方は、休業や営業時間の短縮などにより他業種に比べて早くから利益ダウンがはじまっている」と税理士の久保由紀子さん。助成金に関する報道はあるが、担当管轄もいろいろ。ややこしくて分かりづらいのが実情だ。「まず〈もらえるお金〉と〈借りるお金〉に分けて考える。もらえるものは素早く手続きをして躊躇なくもらうこと」。もらえるお金、借りるお金とも、〈国〉〈都道府県〉〈市区町村〉など、どこが管轄なのかを整理し、余すことなくがっつり活用したい。
新型コロナに関連して新たに助成が決まったもの、融資の条件が緩和されたものなどをリストにした。パートやアルバイトの賃金の助成には、小学校や放課後児童クラブの閉鎖にともない有給を取得した際も適用される。東京都は宅配やテイクアウトの初期費用として最大100万円の助成を決めた。自治体でも今後随時情報が更新されるので、素早く助成を受けるためにもこまめに確認をしたい。
もらえる助成はもらい、つないだ上で、当面の資金の確保のために、また、アフターコロナを見据えて融資を受けるという手もある。「今後ますます窓口が混み合うことが予想される。無利息無担保など、融資の条件が緩和されている今、審査が2 ~3ヵ月と長引いたとしても、受けるメリットがあるならめげずに手続きをしたほうがいい」。助成金や、社会福祉協議会の緊急小口資金などで当座をしのぎつつ、まとまったお金を借りたい。そのときの融資希望額は「月々の固定費を元に、どのぐらい利益減少月が続きそうかをイメージしてみて、決める。繰り上げ返済できるものもあるので、額は多めに、返済期間も長めのものにしておくと、安心して新たな業態変更の行動力にもつなげていける。先が見えず、それぞれの経営状態もあり正解はわかりませんが、1年ほどの固定費を目安に融資のアドバイスをすることが多いです」。
固定費を圧迫する家賃を交渉するという手もある。「テナント物件の家賃管理を依頼している不動産屋さんなどの第三者を立てること、月あたりいくら、何ヶ月間引き下げてほしい、というふうに具体的に提案してみると話を進めやすい」と久保さんはアドバイスする。
まずは「もらえるお金」を中心にしのぐ
減少した営業利益を補うために、雇用調整の際の助成金など、「もらえる」助成金を調べて素早く手続きを。公共料金の猶予を受けるという手もある。積立型の生命保険には、貸付制度があるタイプのものもあるので調べてみよう。
融資希望額を決める
(1)「固定費」を把握する
休業や営業縮小をしていても出て行く「固定費」の合計額を計算する。1ヵ月あたりの家賃、人件費、給料、リース料などの「販売管理費」と、利息などの「営業外費用」を足したものが1ヵ月あたりの固定費に。
(2)「固定費」×月数を計算
多め長めに。繰り上げ返済が可かもチェック
(1)で算出した「固定費」をもとに、今後、売り上げダウンの時期がどのぐらい続くかを予測。半年、1年など、月数をかけて融資希望額を決める。無利子無担保のもの、返済期間が長めで繰り上げ返済ができるものを選ぶ。
「飲食店、家賃滞納に悩む貸し主、両方の声が届いている」と久保さん。貸し主の側も「減額時期がいつまで続くのか」が見えないと不安になる。困っている実情よりも、期間限定で何月まで、というような具体的な条件提案をすると良い。「家賃の1割減額を○ヶ月間」という言い方にするのも手。支払猶予、または賃貸借契約時に支払っている敷金の一部を充当してもらうという方法もある。なお、交渉時には、仲介を依頼している不動産屋さんがいれば、まずその第三者に入ってもらおう。
久保由紀子さん
A&Kパートナーズ税理士法人秋山税理士事務所(東京都世田谷区)パートナー社員税理士。経営者に対して会社の継続、発展のためのアドバイスを行う。相続税の申告など税金全般の相談に携わる。
本記事は料理王国2020年6・7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年6・7月号当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。