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【新型コロナウイルス特別企画】パンデミックに直面した海外で活躍するシェフ6人の視点#5(関根拓さん/Dersou)


本記事は、5月7日(木)発売の料理王国6・7月合併号緊急特集「コロナ時代の食の世界で新しい「ものさし」を探しに。」に掲載中の記事から、現在の状況を鑑みて特別に公開するものです。

「『超過』によって成り立っている世界 その『事実』を突きつけられた」

閉店後日常生活は問題なく送れていましたが、24時間体制の医療関係者の方々の為に、少しでもバランスの良い食事を摂ってもらおうと、仲間と一緒に、病院に食事を差し入れています。実際の活動は、複数のシェフが所属する二つの組織と協力して行ない、一つは、食材、運送、パッケージなどを普段取引のある専門の業者に提供してもらい、自分は料理の部分を請け負う形。もう一つは、ネットで募金を募り、その募金で食材を買って、自分たちシェフが料理をするという形です。現在合計3施設の病院に、それぞれ週に1回、40食のサンドイッチや弁当を納めています。

医療現場は、電子レンジで温めなおす時間もなく、いつ食べられるかわからない状況と聞きますから、目の前のゲストに提供する料理とは根本的に違います。素人が善意の押し売りをするのは非常に危険です。衛生管理を万全にした上で、限られた食材で、いつ食べてもおいしい、状態のぶれないメニューを考えることを心がけています。さらに今後は、国民全体から寄付を募って、収束後に、医療
従事者をフランス国内のレストランに招待するような取り組みができないかと考えています。

コロナ後の世界は大きく変わるでしょう。純粋な美食がどこまで今のスタンスを貫くかは疑問です。今までの世界はある意味、経済的にも物質的にも、多くの「超過」によって成り立っていて、その文化的な高みと悪影響が共存しながら突き進んで来たと思います。

言い方として適切ではないと思いますが、このウィルスの一つだけいいところを取れば、僕らにその事実を突き付けたことです。レストランだからこそ提供できる多様性、手間のかかる料理は残っていくと思います。ただ、綺麗なストーリーやコンセプトに縛られ、限られた人しか行けない美食ではなく、信頼できる食材を使い、家族や友人、誰もが集えるお店、「お母さんの料理」のような安心感が求められてくるのではないでしょうか。

関根 拓
(Dersou)

2015年にパリの料理イベント「Omnivore」で最優秀賞、翌年に「Fooding」で1位に。


text 仲山今日子 photo 関根拓

本記事は料理王国2020年6・7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年6・7月号当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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