【新型コロナウイルス特別企画】パンデミックに直面した海外で活躍するシェフ6人の視点#3(マウロ・コラグレコさん/Mirazur)


本記事は、5月7日(木)発売の料理王国6・7月合併号緊急特集「コロナ時代の食の世界で新しい「ものさし」を探しに。」に掲載中の記事から、現在の状況を鑑みて特別に公開するものです。

「美食の未来は変わる 自然に対する関わり方に重点を」

ミラズールでは、精神的にチームを支えるため、65人全員とWhatsAppのグループを作り、お互いを鼓舞するメッセージや、ビデオや写真、音楽、レシピ、家で作った料理などを交換しています。経済的にも、政府の要請は80%の給料支払いでしたが、ミラズールでは全員の給料を100%支払っています。可能な限り続けるつもりですが、願わくば、6月には店を再開できるようになって欲しい。

この他にも、自家農園の野菜をバスケットにして配ったり、仲間の分もまとめて買い出しに行ったりとお互いに支えあっています。地域への貢献も大切です。近所の人たちにも、野菜を譲ったり、交代制で、衛生やソーシャル・ディスタンスに最大限配慮した上で、地元の病院に週に2回食事を届けています。

全てを投げ打ってこの危機を救うために戦っている医療従事者に対して、人としてできる、全てのことをする必要があると思います。まずは家にいること、そして「安全に」調理ができる人は料理を提供し、医療従事者の隣人がいれば、食料の買い出しや家事を手伝うことなど。

今後、美食の未来は変わるでしょう。再び旅行できるようになっても、多くの人は自国内に留まり、悲しいことですが、多くのレストランは閉店せざるを得なくなるでしょう。人々は、価格か体験でレストランを再評価し、行きたい店を選ぶようになるでしょうが、それと同時に、自然に対する関わり方で選んでくれればと願っています。世界の現状を見ても、ゴミが多量に出て、環境汚染につながる使い捨てばかりの生活はこれ以上続けられません。外出禁止の時間を通して、私も、これまで当たり前にしてきたよりも、ずっと少ない消費で済むこと、これまで自然のリズムと調和しない速でいリズムで生きて来たことに気づきました。

季節感を生かした日本料理は、自然のリズムと深い関わりを持つ料理です。食を愛し、高い教養を持つ日本の人々がこの変化に適応し、危機を乗り越えると信じています。

マウロ・コラグレコ
(Mirazur)

2019年に「世界のベストレストラン 50」で世界一、同年フランスでは外国人シェフとして初のミシュラン3つ星も獲得。


text 仲山今日子 photo Matteo Carassale

本記事は料理王国2020年6・7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年6・7月号当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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