【新型コロナウイルス特別企画】パンデミックに直面した海外で活躍するシェフ6人の視点#4(ヴィルヒリオ・マルティネスさん/Central)


本記事は、5月7日(木)発売の料理王国6・7月合併号緊急特集「コロナ時代の食の世界で新しい「ものさし」を探しに。」に掲載中の記事から、現在の状況を鑑みて特別に公開するものです。

「収束後はサステナビリティや人々とのつながりを重視 元の世界観には戻らない」

ここ数年間、美食の世界は少しずつ変わってきたと思います。ラグジュアリーなブランドや高価な道具、巨大なチームよりも、素朴な食材、サステナビリティに対して貢献し、多くの人々をつなぐことの方が重要視されるようになりました。

コロナ後は、この進化はより早くなり、元の世界観には戻らないでしょう。慎ましい食材にテクノロジーと創造性が合わさった料理が主役になり、良質の食、サービス、ストーリーが評価される時代がやってくるはずです。コロナの有無にかかわらず、旧来のファインダイニングは減っていくだろうと思います。ただ、コロナがこの変化を加速させたのは確かです。一方、食を通して、現実社会を美しいアート的な方法で表現するファインダイニングは、これからも求められていくと思います。

外出禁止の今は、これからの計画を考えています。クスコの山あいにある土地で、そこに住む人々とともに食事をし、収穫を分け合うという活動です。彼らが、よりおいしくより良い種子、改善された生産条件を得られるように働きかけ、良質の作物を得られるようにしたいと思っています。これはペルーの山あいに住んでいる300の家族にとって極めて大きな財産になるはずです。

私たちは皆、コロナという不幸な危機に直面していますが、自分のレストランや店を守ることだけでなく、他の人たちを助けようと考えることは、これまでサステナブルでない方向に向かっていたシステムを、結果的に癒すことになると思います。

今は、人間と自然、そして多くの人々が共存し、新しくより良いシステムを作りあげるためのベストなタイミングと言えるでしょう。それは、難しく、快適でなく、利益を得られず、あなたが過去にそれが正しいと夢見たことではないかもしれません。しかし、その変化は、美食の世界のバブルから何も得られなかった多くの人々にとっての世界を、向上させることができるのです。

ヴィルヒリオ・マルティネス
(Central)

2019年に「世界のベストレストラン50」で第6位。南米ガストロノミーを牽引。


text 仲山今日子

本記事は料理王国2020年6・7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年6・7月号当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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