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語り継がれるスペシャリテ② 原田 慎次氏(アロマフレスカ)「四万十川産天然鮎の赤ワイン風味」×SAKE HUNDRED「天彩」


トップシェフたちが作るスペシャリテ。完成するまでには、試行錯誤と努力の日々がある。匠と思いが具現化した一品。だからこそ、その傍らには、日本が世界に誇るラグジュアリーな日本酒「SAKE HUNDRED」がふさわしい。美酒とともにスペシャリテの裏側にある物語を開いてみよう。

原田 慎次
1969年7月28日生まれ。栃木県出身。服部栄養専門学校に在学中よりアルバイトをしていた、六本木の「ヂーノ」にそのまま入店。佐竹弘シェフのもとで5年間修業を積み、「ヂーノ2号店」にて4年間シェフを務める。1998年に田沢浩氏とともに「アロマフレスカ」をオープン。その後、数々の店舗を手がけ、料理人兼経営者として活躍中。

郷愁を原点に

鮎は原田シェフが長年連れ添ってきた食材だ。
「20年以上、ああでもないこうでもないと言いながら焼いてきましたね。僕が最も好きな魚です」

鮎との関係は「アロマフレスカ」を立ち上げたときから大事にしていた、というだけではなく、もっと以前から。原田シェフの故郷は栃木、渡良瀬川を望む場所。清流で過ごした時間が故郷の思い出で、そこで育つ鮎は故郷の味だ。

「結構やんちゃな川遊びをしていました(笑)。考えてみれば子供のころのいろいろな体験が料理のベースになっています。例えば、おいしいイチジクを食べても、木になっているものを自分でちぎって、アリを外して皮を剝いてすするのが僕のなかのイチジク。あの香りとはやはり違う」

新たな素材に取り組んだ時、まずアクセスするのはあのころの感覚。小学生のころの夏休み、河原で焼いて食べた鮎。渡良瀬にかかる木の橋の向こうに夕日が沈み、帰路につく遊び疲れた体はそれでもまだ元気で…。そう、鮎そのものが原田シェフのスペシャリテ。

いかにそぎ落とすか、いかに引き出すか

鮎の苦みに赤ワインを合わせる。このテーマには10数年取り組んできた。経験と技巧で洗練させていく作業だが、同時にあのころの素直な自分へのアプローチでもあった。完成に向かってさらに感覚を研ぎ澄ませ、緻密な計算をたてながら、不要なものをそぎ落としていく。それは鮎本来の素晴らしさを自分の料理によって伝えるため。

「赤ワインソースと鮎。原型は鮎に薫香と軽くパン粉をつけて揚げたもの。それがだんだんパン粉が邪魔になり、薫香も邪魔になった。いろいろそぎ落として、3年前、ようやく到達したのが今の料理です」

まず鮎を丁寧に下処理。あとは、時間と根気と余計な事をしないという勇気。太白ごま油を使い3時間かけてコンフィに。油を十分に抜いてから、赤ワインソースにかけ、鮎のポテンシャルを赤ワインソースに移していく。さらに時間をかけてソースを煮詰めていく。

「鮎の出汁をソースに移し、そのソースをさらに鮎に戻す。これで鮎とソースの一体感が生まれます」

省いていくとより素材の輪郭が見えてくる。下処理するだけ、コンフィするだけに到達するためにも必要だった試行錯誤を重ね、表現方法が明確になり料理自体にクリアになった。

先入観を持たないことの大切さ

料理がクリアなら合わせる日本酒もクリアなものが必要だ。試行錯誤を重ね素材や技法が明確に表現された酒。選ばれたのは「SAKE HUNDRED」から「天彩(あまいろ)」。

「鮎の苦みと酒の甘みのバランスがベストに近い。この料理ではウイキョウの花を爽快感のアクセントにしているのですが、天彩にもわずかに木桶のような清涼感があって、これも相性がいい」

鮎の旨味がしっかり感じられた後、この料理の魅力である苦みに移行する段階で、天彩を口に含む。すると濃醇で甘やかな酒のキャラクターと上質な鮎の苦みとが混然一体となる。これは想像できなかった幸せなギャップ。どうお互いを寄せるとこのようなケミストリーが生まれるのだろうか? 原田さんによれば酒と合わせる上で料理には「なんの調整もいらなかった」と言う。天彩はボリューム感のある酒であるため、川魚を使ったシンプルな料理だと押し負けてしまうのではという疑問もあった。しかし、原田シェフの鮎はシンプルに見えて、素材のポテンシャルをしっかり引き上げ、鮎本来の味をしっかり伝えてくるもの。だから、調整がいらない。

「鮎は川によって味が違う」。鮎を知り尽くしてきた原田シェフからの一言。ふだん好んで使うのは四万十川、岐阜・郡上と、島根の高津川。

「この料理に限って言うと四万十川の大きなサイズ。骨の味がしっかりしているので赤ワインソースと合わせやすい。また、食べている苔の関係か骨にちょっと風味があるんです。噛みしめていくと海苔っぽいうま味がある」

生まれの違う鮎は、同じように炭火で焼いても骨の硬さによって時間も変わる。またわずかな風味の違いが料理とペアリングにもかかわってくると言う。調整がいらないほどの好相性。だが、もし酒のラベルを見て飲んでいたら話は違ったかもしれないと原田シェフ。

「お酒の情報は、あえて何も見ずに飲みました。注いだ時の色から想像していたよりも、味も香りもクリア。飲んだ時には酸もあってキレもあった。あとからデザート系と聞いて驚きました。もし、デザート系という先入観があったら…」

違う方向で進み、結果、この素晴らしい組み合わせは生まれなかったかもしれない。

「固定概念は良くないですね。自分が考えていない世界に触れる機会というのはとても大切だと思うんです」

ここまでのキャリアを積んできたにもかかわらず、いや、だからこそなのか、最近考えたことがある。

「今年に入って原田慎次の料理としてもう一皮むかなきゃいけない、と思うタイミングがあって。ふっきれなきゃいけないなと」

そこで出会った、イメージの外側から飛び込んできた酒。

「縁ですよね。合わせないですよ、イメージの中では。いい機会でした」

鮎とデザート系。一見するとミスマッチのように思えるが、原田シェフだからこその鮎とデザート系というカテゴリーにとどまらない酒の組み合わせ。自分の物差しだけでは語れない驚きがそこにはあった。

SAKE HUNDREDは、『心を満たし、人生を彩る』をパーパスに掲げ、比類なき価値を提供する日本酒ブランドです。最高峰のグローバルブランドとして、味覚だけでなく、お客様の心の充足に貢献し、人と人との豊かな関係を築いていきます。最上の体験によってもたらされる、身体的・精神的・社会的な満足、そのすべてが、SAKE HUNDREDのお届けする価値です。

取材・文=岩瀬大二 写真=小沼祐介


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