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【レシピ付き】ビストロの魅力解剖


胃を満たし、心に染み入るフランス料理を教えてくれたのはビストロかもしれない。年齢が離れた2人のシェフは、奇しくも本場の料理を学びに渡ったフランスで、同じようにビストロに魅せられた。「ビストロシンバ」と「ラミティエ」のお話だ。

ビストロシンバ bistro simba

人もワインも料理も。すべてナチュラル

味、香り、色。素材の魅力を多面的に力強く引き出す

鋳物鍋の重いふたを開けると、魚介のうま味を凝縮したスープの温かく深い香りが周囲に一気に広がる。そのスープを、グリルしたヒラスズキやトラフグ、鱗をカリッと焼いた甘鯛にかける。魚介好きの日本人が興奮しないわけがない。店に来る人のほとんどが注文するこのブイヤベースは、今や店を象徴する料理だ。

気が付いたらフランスで 10 年。始めはガストロノミックな三つ星などで厨房経験を重ねていた菊地佑自シェフだったが、最終的には香りや温度が生きた、素材を生かす料理を作っていこうと、パリの人気ビストロなどで経験を深め、東京に戻った。

「複雑な料理を作ることに疑問を持っていたとき、パリのビストロでシンプルで力強い料理を食べ、自分が作りたい料理はこれだとはっきりした。ややこしい小指サイズの鳩を食べるなら、丸ごと一羽を、手を汚しながらがつがつ食べる方がいいじゃないかって」。

帰国後、独立の準備を進めながら改めて日本の食材を勉強しようと各地を回った。特に面白かったのが魚。「フランスは遠洋漁業が主だから魚の種類が限られるし、内臓も使えない。でも、日本は近海ものも豊富で鮮度も違う。肝和えに白子、貝類も面白い。魚でこんなに四季が感じられるのかと本当に嬉しかった」。その豊富な魚介類を余すところなく使うことを考えた結果、今のブイヤベースが自然にメニューの定番となった。

肉も徹底して生産者を当たり、いい素材との出会いが次々にあった。ワインはフランスをはじめ各国のナチュールが揃う。菊地シェフ自身はフランスで好きになり、来日した醸造家が菊地シェフの店に会いに来る。開店初日からずっと満席という奇跡のようなビストロは、菊地シェフが本当に作りたかった味にあふれている。

【レシピ】海老香るシンバ特製ブイヤベース

エビよりもエビらしい豊かな香りとコクに酔う

材料(約10杯分)

魚のあら(5 ~ 10種類)…7.5㎏
ウイキョウ…1個
玉ねぎ…3個
オマールエビ(身以外)…16尾分
オリーブオイル…1000ml
にんにく…2株
イタリアンパセリ(軸)…適量
トマトペースト…800g
白ワイン…1500ml
水…3500ml
塩…適量
[盛り付け用/ 1人あたり]
旬の鮮魚…3 ~ 4種類・各1切れ才巻海老…1尾
イタリアンパセリ(葉)、
カイエンヌペッパー…各適量

作り方

  1. 魚のあらを流水で濁りがなくなるまでさらしておく。あらに塩で下味をつけ、100℃に温めたスチームオーブンで10分ほど蒸し焼きにする。
  2. ウイキョウ、玉ねぎを炒めやすい大きさに切る。
  3. オマールエビの頭からみそを取り出して、別の容器に移しておく。殻の砂袋を取り、はさみで胴体から足を切り離してから、炒めやすい大きさに切る。
  4. 二つの大鍋にオリーブオイル各500ml、房ごと横半分に切ったにんにく1株ずつを入れて、強火にかける。以降は二つの鍋で同じ調理を行う。
  5. にんにくの香りが立ち、オリーブオイルから煙が立つくらいの温度になったら、オマールエビの頭と足を炒める。香りが立ち赤くなってきたら胴体を入れて炒める。
  6. 胴体に火が入ったら、②の野菜、イタリアンパセリを入れ、さらに炒める。
  7. 野菜に火が入り甘みが出てきたら、①を水分ごと鍋に加える。ゼラチンが多いので、鍋底が焦げ付かないよう木べらでよくかき混ぜる。
  8. トマトペースト、白ワインを加えてよくかき混ぜる。大きめの麺棒を使って魚の骨をやや細かくなるまで砕きながら煮る。
  9. 白ワインのアルコールが飛んだら、水を加えてまたよくかき混ぜる。漉す前に塩でもう一度下味をつける。
  10. 2つの大鍋を1つにまとめ、ムーランを使って漉す。
  11. 漉したスープにオマールエビのみそを入れ、ハンドミキサーでよくかき混ぜたら、1回目よりも細かい目のムーランで漉す。味を見て塩で調える。
  12. フライパンでグリルした旬の鮮魚と才巻海老をやや深めの皿に盛り付け、上からイタリアンパセリの葉とカイエンヌペッパーを散らす。スープをココットに入れ、レードルを添える。

ラミティエ L’AMITIE

ガッツリ料理とワインでパリにトリップ

もちろん現地並みのボリューム、値ごろ感

ビストロ料理には欠かせない定番がある。宮下シェフもオープンから 20年間ずっと大事にしている「エスカルゴ」「ステークフリッツ」「ブフ・ブルギニョン」「プティサレ」などだ。どれも現地さながらにボリュームたっぷり。「僕のは、客の会話を邪魔しない料理」と謙遜するけれど、実際はその料理を目当てに、予約が取れない人気ぶりだ。もうひとつ驚くのが価格。昼はデザートも入れて 1人2,000円、夜は 2人でボトル1本と食事で 10,000円ちょっとでおさまるのが理想という考えを貫いている。

「20年前、50歳を過ぎたら楽になってると思ってたけど、変わらないのだけが誤算」とシェフは笑うが、毎日満席、予約困難な人気店になった理由は、その楽じゃない地道な仕事の積み重ねがあったからに違いない。だって庶民ほど、シビアな客はいないのだから。

【レシピ】骨付き豚スネ肉とレンズマメの煮込み

肉と豆の煮込みはビストロの定番。トロトロ煮込んで仕上げは豪快に。

材料(約10杯分)

骨付き豚スネ肉…2㎏
レンズ豆…500g玉ねぎ…1個
にんじん…1本
セロリ…1/2本
ベーコン…200g
にんにく…2株
水…2ℓ
ドライオレガノ、ドライタイム、
塩、パセリ…各適量
ソ ミュール液…(水1ℓ、塩120g、砂糖50g)

作り方

  1. 骨付き豚スネ肉はソミュール液に2 ~ 3日漬ける。
  2. 取り出した①を鍋に入れ、水、玉ねぎ1/2個、にんじん1/2本、セロリ1/2本、にんにく2株を加えてとろ火で4 ~ 5時間、皮がはじけないように注意しながら煮る。煮えたら取り出し、ゆで汁は取っておく。
  3. レンズ豆は1度たっぷりの水(分量外)で茹でこぼす。
  4. 玉ねぎ1/2個、にんじん1/2本、ベーコンを細かく刻む。
  5. 鍋に③の豆、④の野菜、ドライオレガノ、ドライタイム、②のゆで汁適量と水(分量外)を豆がかぶる程度まで加え、30分ほど煮る。
  6. 茹で上がった②を器に盛り、⑤を添え、刻んだパセリの葉を散らす。食べるときに、マスタードを添える。

ビストロってなんですか?

ビストロというフランス語が生まれたのは、一説によると1884年で、ロシア語の「速く」が語源。近所のこぢんまりとした食堂または居酒屋のイメージで、テーブルとテーブルの距離が近い。従って、和気あいあいとした雰囲気。料理はシンプルで庶民的な料理、高価な食材を使わない料理が典型的。ランチタイムはプラ・デュ・ジュールと呼ばれる、日替わり定食を提供。1990年代に入ると、ガストロノミー(レストラン)レベルの食材やテクニックを使いながら、庶民的な価格で料理を出すビストロノミーまたはネオビストロが登場し、日本でも近年、この手のフランス料理店が多くみられるようになった。違いがわかりにくいのがブラッスリー。実際、明確な線引きはない。こちらも大衆的な居酒屋なのだが、語源がブリュワリー(ビール醸造所)であることから、アルコールのメインはビール。通し営業で深夜まで開いているため、夜遅く食事をとれる場所と認識されている。

text 馬田草織 photo 菊池和男

本記事は雑誌料理王国295号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は295号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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