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日本人の体質の強いところ、弱いところ


知っているつもりで意外に知らない、日本人が持つ特徴的な体質について、『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』などの著書で知られる、医師の奥田昌子さんが解説。さらに、日本人の体質に合う調理法についても教えていただいた。

「遺伝」「環境」「食生活」がつくる日本人の体質

日本人の体質はこうして生まれた

「体質」、それは読んで字のごとく「体の性質」を指します。体質というと、両親から受け継いだDNAに刻まれた、生まれつき持っている遺伝的素因に目を向けがちですが、食生活、気候、細菌やウイルス、紫外線、運動、喫煙、ストレス、睡眠などの環境要因にも大きな影響を受けています。島国に暮らす日本人は、親から子へ遺伝子を受け継ぎながら、安定した社会のなかで日本の気候風土に合った暮らしを送ってきました。こうして長い歳月をかけて形成されたのが、欧米人はもちろん、ほかのアジア人とも異なる「日本人の体質」です。

日本人体質のココが強い

動脈硬化になりにくい

 世界12カ国の人を対象に国際的な調査を行ったところ、日本人はビフィズス菌などの善玉菌がもっとも多く、悪玉菌が少ない、恵まれた腸内環境を持つことがわかりました。最近では、日本人の寿命の長さや低肥満率と、この腸内細菌叢の関連が示唆されています。

胃腸のかたちが違う

 昔から、日本人の食生活の中心は穀物。穀物には食物繊維が多いため、日本人の胃は穀物をしっかり砕いてどろどろにしてから腸に送り出すのに適したかたちになっています。

 また日本人の腸には、でんぷんを消化するための酵素を多く持つ、ビフィドバクテリウム属(ビフィズス菌)と呼ばれる菌が非常に多く住んでいます。これに対して欧米人の食生活の中心は、おもに肉と乳製品。脂肪とたんぱく質は腸で消化されるため、欧米人の胃は食べたものをスムーズに腸に送り出せるような形になっています。

穀物を食べてきた日本人の胃(左)と、肉食中心の欧米人の胃(右)。日本人の胃は袋のようになっていて、食べたものをしっかりためて消化できます

骨が強い

 骨粗しょう症はカルシウム不足が大きな原因と言われていますが、実は遺伝的素因が大きく、カルシウムとビタミンDの作用、女性ホルモンの作用、骨の合成、動脈硬化などに関連する数多くの“遺伝子”が骨粗しょう症の発症と関連することがわかっています。

 では、日本人の骨粗しょう症の発症率はどうでしょう。米国白人と比べると、日本人の発症率は約2分の1であり、手足を骨折する人の割合も、日本人を含むアジア人は欧米白人の2分の1から3分の2であることがわかっています。つまり、日本人は遺伝的に強い骨を持っているのです。

 日本人は欧米人と違い、カルシウムを乳製品ではなく海藻と緑黄色野菜、大豆や小魚から摂ってきました。とくに大豆に豊富に含まれるイソフラボンには、骨からのカルシウムの流出を抑える効果が示されており、これも骨粗しょう症が少ない原因のひとつといえます。

日本人体質のココが弱い

男性は内臓脂肪がつきやすい

 健康番組などで「内臓脂肪」という名称を耳にすることは多いでしょう。最近、日本人に増えている高血圧、糖尿病、脂質異常症(悪玉コレステロール、または中性脂肪が多いか、善玉コレステロールが少なすぎる状態のこと。以前は「高脂血症」と呼ばれていた)などの生活習慣病は、この内臓脂肪が大きな原因となっています。

 内臓脂肪はお腹につく脂肪なので、肥満体型が多い欧米人に多そうですが、実はやせ型が多い日本人、とくに男性につきやすいことがわかっています。

 この原因は完全には解明されていないものの、脂肪を皮下脂肪として蓄えることができないと、行き場を失った脂肪が内臓脂肪になると考えられています。肉や乳製品などから伝統的に脂肪を大量摂取してきた欧米人と異なり、脂肪の少ない食生活を続けてきた日本人を含むアジア人は皮下脂肪をためる能力が発達しておらず、内臓脂肪として蓄積しやすい体質になってしまった可能性が高いのです。長い年月のうちに、食生活に合わせて遺伝的素因が変化したということでしょう。

アルコールに弱い

 フランス人は肉やバターなどから脂肪をたくさん摂取していますが、動脈硬化を原因とする心臓病による死亡率が欧州でもっとも低いことが知られています。このことから、フランス人が毎日飲んでいる赤ワインが体によいといわれるようになりました。

 こうして日本でも赤ワインが人気となりましたが、問題は、日本人は欧米人とくらべてアルコールの分解力が弱いこと。ワインであれビールであれ、また飲める飲めないは関係なく、飲みすぎはよくありません。

 このブームでは、赤ワインに含まれるポリフェノールという物質が、悪玉コレステロール(LDL)の酸化を妨げて、動脈硬化を起きにくくするとして注目されました。しかしポリフェノールは赤ワインにだけ含まれているわけではありません。ブドウよりブルーベリー、スモモ、イチゴに多く、コーヒーにも赤ワインと同じくらい入っています。緑黄色野菜にも豊富なので、好き嫌いなく食べていれば不足する心配はありません。

健康をそこなわずに飲める量は表のとおり。アルコール飲料それぞれの量に含まれる純粋なアルコールの量は同じ。(アルコール健康医学協会の資料より)

牛乳をうまく消化できない

 日本人は牛乳を飲むとおなかがゴロゴロする人が多く、全体の7~9割にのぼります。これは、牛乳に含まれる乳糖という物質を分解する力が遺伝的に弱い「乳糖不耐性」という体質によるもので、日本人を含む黄色人種の大部分がこの体質を持っており、牛乳を多く飲むと胃腸に負担がかかってしまいます。

乳糖を分解できる人の割合を示す世界地図です。分解できない人の割合が高い地域ほど、色が濃くなっています。日本は乳糖を分解できない人が非常に多く、牛乳が苦手であることがわかります。
(Food Intolerance Networkの資料より)

本記事は雑誌料理王国第278号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第278号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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