一般によく知られている「NGな食べ合わせ」を見てみよう。
「食べ合わせ」が本当に影響するのか、医学的な理由があるのか調べるとともに。柳澤厚生さんに、医師としての見解も聞いてみた。
脂の多いウナギと、酸味の強い梅干しは、両方とも内臓を刺激し、消化不良を起こすとされた。高級食材であるウナギの食べすぎ防止など、諸説ある。なお、酸が脂の消化を助け、相性がよいともいわれる。
栄養素的にはケンカするものではありません。逆に、脂と酸は、消化をスムーズにする関係です。
油分の多い天ぷらと、水分の多いスイカを一緒に食べると、水分で胃液が薄くなって天ぷらの消化がしにくくなり、消化不良を起こすとされる。避けたほうが無難というのは、胃腸の弱い人には経験としてあるだろう。
スイカをデザートとして大量に食べなければ影響はないでしょう。油をとると、胃腸は活発に動かなければいけないので、冷たいものや水分で急に冷やさないようにするとよいですね。
ゆで卵に含まれる硫黄分が、ほうれん草に含まれる鉄分と結合して、体内への吸収を妨げてしまうとされる。ただし、ゆで卵にした場合のみ硫黄分が吸収を阻害するので、スクランブルエッグなど、卵はゆでない調理法であればよいという。
吸収を妨げる、というのはありますが、100が0になるわけではありません。そんなに気にしなくても大丈夫だと思います。
傷みやすいカニと、消化の悪い柿の組み合わせがよくないといわれる。まだ流通の発達していない時代の、食中毒への注意喚起とも。また、カニも柿も東洋医学では体を冷やす食材とされ、一緒に食べると冷えを促進するため避けられる。
今は流通が発達しているので、傷みはそこまで気にしなくていいと思います。体を冷やすというのはあると思いますが、両方とも適量なら問題ありません。
ダイコンに含まれるビタミンCを、ニンジンに含まれるアスコルビナーゼという酵素が破壊してしまうとされる。アスコルビナーゼは人の体温くらいの温度でよく働く酵素のため、冷やすか、50℃以上に温めるといい。また、酢を加えることでアスコルビナーゼの働きが抑えられる。
一度に大量に食べなければ大丈夫。ビタミンCのすべてを壊すわけではないので、あまり気にしなくてもよいでしょう。
ワカメに含まれるカルシウムの吸収を、ネギに含まれるリンが阻害するためによくないとされる。しかし、ワカメ自体にもリンは含まれているため、実際には大きな問題ではないだろう。ただ、リンは加工食品に多く含まれるため、加工食品をよく食べる人は注意したほうがいいかもしれない。
ワカメのカルシウムはそれほど多くありません。ほかのものからもとるようにすればカルシウム不足になることはないでしょう。逆に、とり過ぎると便秘になることもあるので注意が必要です。
ナスもそばも、体を冷やす食材といわれている。ただし、温かい状態で食べれば緩和されるので、ナスは漬け物より天ぷら、そばはつけそばよりかけそば、という具合に食べ方を選べば問題ない。また、ネギや七味など体を温める食材をプラスしても。
体を冷やす夏野菜は食べすぎないようにしましょう。体は冷やしすぎると、代謝や内臓の働きが弱くなる。代謝で細胞が活動する時は、エネルギーを作っているので体は温かくなります。それを邪魔しないほうがいいのです。
干物×漬け物ともいわれるが、魚に含まれる物質と野菜に含まれる物質が、胃酸の強い酸によって発がん性物質に変化するため、よくないとされる。ただし、ビタミンCのある環境下では変化しないので、柑橘などと一緒に食べるのがよいという。
発がん性物質は、一度とったからといって、必ずがんになるというものではありません。がんになる要因はひとつではなく、もっと複雑です。
ベーコンは加工食品のため、リンが多く含まれる。それが、ホウレンソウに豊富に含まれる鉄分やカルシウムといった栄養素の吸収を阻害するため、よくないとされる。リンはゆでると減るため、ベーコンをゆでてからホウレンソウと合わせるとよい。
リンは自然にも存在するもので悪いものではありません。ベーコンはたくさん食べると塩分が心配ですが、適量ならそんなに問題はないと思います。
レバーには代謝を活発にする効果があり、ビタミンや鉄分などさまざまな栄養素を豊富に含んでいる。ただし、ミョウガを合わせて食べると、ミョウガに含まれる苦味物質が胃腸の働きを弱めるためよくないとされる。酢水につけてあくを抜いたり、胃腸の働きを活発にするショウガをプラスすれば解消されるという。
そこまで問題はないと思います。レバーは栄養豊富だし、薬味は食欲が増します。たくさんの種類の素材を食べるほうが大事です。
シラスに含まれるアミノ酸の吸収をダイコンが妨げてしまうといわれる。これは、ダイコンに含まれる物質が、特定の酵素の働きを阻害してしまうからとされる。ダイコンを加熱するか、アミノ酸が含まれるお酢と一緒に食べることで、さらに栄養を補えばよいとされている。
吸収を妨げるとしても、まったく入らないわけではないので大丈夫です。ダイコン自体は消化やほかの酵素の吸収を助ける働きもありますから、それほど問題はありません。
カキには亜鉛が多く含まれる。しかし、亜鉛は体外に比較的排出されやすく、食物繊維の多いヒジキと合わせると、より体外に排出されやすいのが食べ合わせが悪いとされる理由のようだ。ヒジキそのものにも亜鉛は含まれるので、別々にとったほうがよいのかもしれない。
たしかに亜鉛は、体外に排出されやすいです。ほかにも、亜鉛の吸収を妨げるものとして身近にあるのがフィチン酸。小麦製品やインスタント食品、豆類や穀類に多く含まれており、効率よく摂取したい時は、一緒に食べるのは避けたほうがよいでしょう。
ビタミンCを豊富に含むトマト。しかし、キュウリに含まれるアスコルビナーゼという酵素は、ビタミンCの酸化を促進してしまうのでよくないとされる。一緒に食べる際には、マヨネーズやドレッシングなど酵素の働きを抑制する酢を加えて食べるとよいという。
そこまで気にすることはないでしょう。ビタミンの摂取を考えると、無理して避けることもよくないかと思います。ただ、胃腸が弱っている時には、避けたほうが無難。
食材を組み合わせることによって、吸収や栄養価がアップする「OKな食べ合わせ」もある。組み合せとその理由を見てみよう。
とくに豚肉に多く含まれるビタミンB1は、タマネギに含まれる硫化アリルが人の体内で変化してできるアリシンと結びつくと、よりよい働きをするとされている。ふたつを組み合わせて食べることで、より効果が期待できるということだ。タマネギと豚肉の生姜焼きは、スタミナ食として非常に理にかなっているといえる。
栄養などの面で、タマネギと豚肉はどちらもとてもいい食材です。吸収を助ける食材を一緒に食べるのはいいと思います。
ニンジンには豊富なビタミンが含まれ、続けて食べると免疫力が上がるといわれている。また、ニンニクにも免疫力を向上させる成分が多い。合わせて食べると、互いに足りない栄養を補うよい相性とされる。さらに、油と一緒に調理するとニンジンの栄養吸収がよくなり、ニンニクの刺激も抑えられるのでおすすめの調味料だ。
ビタミンも豊富、スタミナもつきそうでよい組み合わせだと思います。
カキは、その高い栄養価が魅力的な食材ではあるが、衛生管理などの点においては、ほかの魚介類同様にデリケートな食材といえる。そのカキには、レモンを添えてあることが多い。レモンの酸が菌の繁殖を抑え、食中毒を予防する効果があるという。加えて、レモンは生臭さを緩和するので抜群の相性といえる。
少しのレモンでは、それほど殺菌力はないので注意してほしいですね。ビタミンCをとることで、カキの亜鉛を吸収するのを妨げるフィチン酸の影響が小さくなるようです。
定番の組み合わせだが、実はとてもよい相乗効果があるという。ホウレンソウは栄養豊富だが、多食すると結石の原因になるシュウ酸という物質を含んでいる。このシュウ酸は、ゴマのようなカルシウムを多く含む食材を一緒にとることによって体に吸収されにくくなる。また、ゴマに含まれるリジンにも、結石を予防する働きがあるといわれる。
この組み合わせで結石になるという人もいますが、結石の要因はシュウ酸だけではありません。さらに、ゴマに含まれるマグネシウムも、シュウ酸を作りにくくする働きがあります。ゴマ以外に、ナッツ類などもマグネシウムが多くおすすめです。
トマトに多く含まれる成分リコピンは、抗酸化作用が高く生活習慣病の予防に役立つといわれている。リコピンは脂質があるほうが吸収されやすいため、脂質が多く含まれるアボカドと相性がいい。サラダなどで組み合わせる時はオリ ーブオイルなどの良質な油も一緒に使うことで、よりトマトのよさを活かせるだろう。
サラダにして食べてもおいしいし、とても相性のよい組み合わせですね!
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澤由香=取材、文
本記事は雑誌料理王国第278号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第278号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。