食の未来が見えるウェブマガジン

あのシェフを導いたこの一冊!


料理人たちの行く道を照らした一冊とは何だったのか?
先人たちの知恵が詰まったもの、心の霧を晴らしてくれたものーー、回答はさまざまでした。長く読まれている本、すでに入手しにくい本、海外の本、漫画など、どれも読み応えのあるものばかり。
それぞれのエピソードを添え、料理人たちの感性を刺激した本の数々をご紹介します。

大切にしている本を聞きました
私を導いたこの一冊

セララバアド 橋本宏一さん
パーマカルチャー 農的暮らしの永久デザイン


本の概要
自然を活かして食物を自給し、災害に備える農的暮らしをデザインする、パーマカルチャーの基本概念から、土地利用、水利用、家屋の建て方など、具体的な方法までを解説。

シェフのコメント
20代前半の頃に、人間にとっての恒久的持続可能な環境デザインについて興味を持ったころに出合った本。自然と共存し料理にも反映・表現する思いは、この頃から培われてきたものです。
ビル・モリソン 著
田口恒夫・小祝慶子 訳
農山漁村文化協会

レストラン カンテサンス 岸田周三さん
エスコフィエフランス料理 LE GUIDE CULINAIRE


本の概要
総ページ数約1500ページ、収録された調理法は約5000種類。基本のすべてが料理人エスコフィエによって書き連ねられた、フランス料理における辞書ともいえる一冊。

シェフのコメント
志摩観光ホテル時代に、従業員は必ずこの本を買う決まりがありました。当時の私に25000円は大出費で、しかも内容はちんぷんかんぷん。でも、修業してから読み直すと、すごく得るものがありました。読む側の力量が問われる本なんですよね。
オーギュスト・エスコフィエ 著
角田 明 訳/井上幸作 技術監督
柴田書店

鳴神 鳴神正量さん
新釈落語咄


本の概要
言わずと知れた人気落語家・立川談志が、独自の解釈で古典落語の真髄を現代語訳した落語論。「粗忽長屋」から「妾馬」まで珠玉の二十篇を収録。落語好きのバイブルといわれる名著。

シェフのコメント
フランスでの修業時代、料理に明け暮れる日々のなかで、仕事帰り、リオンの美しい夜道を走るバスの中では、いつもこの落語論を読んでいました。料理とはまったく関係ないのに、この本を読むと、今も当時の風景が鮮明に蘇るんですよ。
立川談志 著 中央公論新社

HASHIDA SUSHI  橋田建二郎さん
壁を破る言葉


本の概要
世界的な芸術家として、今も多くのファンを持つ岡本太郎の名言集。タイトルのとおり、人生において行き詰まった時、目の前の壁を壊し、背中を押してくれるような、力強い言葉の数々を収録。

シェフのコメント
岡本太郎さんが大好きです。彼の生き方、考え方がわかると、この本の言葉がより深く刺さります。料理人生を歩むうえで避けられない挫折や、スランプ。そんな時、彼の深い言葉の裏側に、決して答えのないものの答えや解決法を探し求めます。

岡本太郎 著
イースト・プレス

エスキス 成田一世さん
ドキュマン


本の概要
1900年代、その特異な思想で後世の思想や文学に大きな影響を与えた、フランスの思想家・作家・批評家であるジョルジュ・バタイユ主宰の雑誌「ドキュマン」の掲載内容を集成した一冊。

シェフのコメント
ジョルジュ・バタイユとは生きる時代も環境も違いますが、五感から感じるものは同じはず。しかし、それに対するアプローチの仕方はクリエイターによって変わるわけで、僕は彼のものの見方、感じ方、そして世の中への提案に影響を受けました。
ジョルジュ・バタイユ 著江澤健一郎 訳 河出書房新社

スブリム 加藤順一さん
NOMA ノーマ 北欧料理の時間と場所


本の概要
2010年、2011年とサンペレグリノ「世界のベストレストラン50」第1位に輝いた「ノーマ」を初めて紹介した一冊。90種類以上の写真付きレシピとともに、シェフのレネ・レゼピの独創性の秘密が綴られている。

シェフのコメント
北欧料理に惹かれるきっかけになった本です。独創的な料理写真の数々にも衝撃を受けましたが、僕はプロローグ部分を読むのが好きで、現在の「ノーマ」の料理をゼロから構築し、完成させるまでの並々ならぬ苦労の歴史にも感銘を受けました。
レネ・レゼピ 著 ファイドン

トラットリア シチリアーナ・ドンチッチョ 石川 勉さん
LA CUCINA SICILIANA


本の概要
でき上がり写真は一切なく、文字のみで、「アンティパストとサイドディッシュ」「プリモ・ピアット」「セコンド」「ドルチェ」の4章立てで、800以上のレシピを収録。

シェフのコメント
シチリアでの修業から帰国したのち、もう一度本場の味を確かめるため、再びシチリアへ渡った時に、現地で購入した本で、同じシリーズの「肉」「パスタ」専門本も持っています。文字のみなので、イタリア語の辞書を片手に一生懸命読み込んだのを覚えています。
GIUSEPPINA RANDAZZO 著 S.DI FRAIA

オステリア ラ チチェルキア 連 久美子さん
イタリア料理 100のおいしいキーワード


本の概要
イタリア料理に欠かせない100のキーワードを「ラ ベットラ ダ オチアイ」の落合務さんが解説した事典のような1冊。巻末には現地の店のガイドや落合さんの料理レシピ付き。

シェフのコメント
イタリア料理の基礎を学ぼうと思って買ったレシピ本。レシピ以外にもイタリア料理を知るために必要な、落合さんの実体験が綴られています。この本を読んだ後に授業で落合さんと出会い、「ラベットラ ダ オチアイ」で修業させてもらうことを決意しました。
落合 務 著 講談社

タカザワ 髙澤義明さん
美味しんぼ


本の概要
日本を代表するグルメコミック。山岡士郎の「究極のメニュー」と海原雄山の「至高のメニュー」のリアルな料理対決に、ファンも多い。1983年より『ビッグコミックスピリッツ』で連載されている。

シェフのコメント
料理対決で、毎回「至高のメニュー」は、食材の本質をみている。印象に残っているのは「サラダ」で対決した時。海原は畑からトマトをもいでそのまま出すんです。プレゼンテーションの仕方はもちろん、それまでの自分の料理観にないものを見て衝撃的でした。
雁屋 哲 作/花咲アキラ 画小学館
(C) 雁屋 哲・花咲アキラ/小学館

傳 長谷川在佑さん
蒼天航路 (全36巻)


本の概要
中国の三国時代に生きた武将、曹操が主人公。三国時代の正史と『三国志演義』、そのほか多くの資料の考証をベースに、作者が新解釈を加えた長編。テレビアニメも放映された人気作。

シェフのコメント
曹操は、たとえ敵でも有能な人は殺さず味方につける。自分以外の才能を認めるのはすごいなと思います。人間力で人徳を得ている人、力がある人など、いろんな人が出てきて、それで自分のチームを作っている。これは料理作りに近いなと思っています。
李 學仁 原案/王 欣太 漫画講談社

山田チカラ 山田チカラさん
深夜特急(1〜6)


本の概要
作家・沢木耕太郎の紀行小説。香港からロンドンまでを、ひとり旅する青年の物語で、著者の体験に基づいて書かれている。バックパッカーのバイブルとして、今も旅行者に読み継がれる。

シェフのコメント
外に出たいという欲求を掻き立ててくれる本。何度も繰り返し読んできました。僕が海外にいた頃はインターネットも今ほど普及していなかったので、ひたすらみんなで本を回し読みしていました。親が読書家だったので、実家に本がたくさんあったんですよ。
沢木耕太郎 著 新潮社

ラ・ボンバンス 岡元 信さん
鋏のひとりごと


本の概要
世界理美容技術選手権大会で完全優勝を果たした著者が贈る、画文集。60歳から本格的に「絵ことば」の創作活動を始め、現在も人々への応援歌となる作品を世に出し続けている。
※現在は絶版

シェフのコメント
「夢は逃げない 自分が夢から逃げるだけ」この言葉が読んでいた当時の自分とリンクした。すべてが嫌になり一度は実家に戻った僕が、再出発するきっかけになりました。新聞で僕がこの本を紹介した記事を読んで、著者の方がお店に来てくださった時は嬉しかったです。
田中トシオ 著 叢文社


本記事は雑誌料理王国第272号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第272号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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