食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

池尻大橋の大人の秘密基地「カルム」。元同僚の二人がつくる空間


  東京・池尻大橋の「カルム」は、もともと同じ店で働いていて出会ったふたりが立ち上げた店だ。自らを店の世界観を指揮する「コンダクター」だと言うサービスの佐野敏高さんと、料理を作るシェフの植松裕喜さんで、この空間は作られている。

ふたりで一緒にやるのは自然な流れだった

佐野さんと植松さんは、担当する仕事こそ違ったが、年齢が近く、プライベートでも仲良くなったという。その後、お互いに職場は変わったが、再び同じ職場で働く機会が訪れた。

ところが、植松さんがケガのため職場を退職することとなり、そのタイミングで、ふたりが一緒に店を立ち上げる話が具体的になっていったという。「僕は最初に出会った時から、独立するなら彼と一緒にやるだろうな、と思っていたんです。いつかな、とタイミングを見計らっていました」と、佐野さんは言う。

「大きい店で働いていると、いろいろなスタッフと関わりますが、佐野さんとは普段の会話とか、持っている目標が近かったんです。そして、サービスマンでありながら、料理がすごく好きなんだなというのが伝わってきて。そういうふうに料理を運んでくれる人を、あまり知らなかったので、僕も一緒にやるなら彼だなと自然に思いました」と、植松さん。

一方の佐野さんは、植松さんのことをどう見ていたのだろうか。

「料理に対しての熱量が、同じ世代の中ではぜんぜん違ったんです。彼は、真面目すぎるくらいに料理に向き合う人なので。向上心も高いです」

佐野さんが一緒に店をやる絶対条件は「おいしい料理を作れること」だった。さらに、植松さんは向上心も備えていた。飲食店を続けるためには、向上心と、モチベーションを定着させることが必要だ。
 こんなにもお互いをリスペクトし合うふたりが出会ったなら、一緒に店を始めるのは、確かに自然な流れだったのだろう。

ふたりだからこそのスピード感と変化

一緒に店を始めて感じるのは、ふたりだからこそのスピード感と変化なのだと佐野さんは言う。

「まず、ひとりよりふたりでやるほうが、仕事が早いですよね。あと、ひとりだと臆してしまうチャレンジも、話し合ったり、発破をかけられたりして前向きになれる。ふたりだからこそ、恐れずに変化できるんです。店が成長していく時に、ひとりではできないスピード感がある」
 オープンして3年目、気負いもなくなり自由にできるようになったと語るふたり。これから「カルム」がどんな変化をしていくのか注目だ。

柿 マスカルポーネ 塩漬けイクラ アンディーヴが作るタブロー 金平糖のワルツ
タブローとは、板画やキャンバス画などに描かれる完成した絵画のこと。見た目の美しさと、素材の調和したおいしさに心躍る前菜だ。

元同僚と独立開業

メリット

成長のスピードが速くなる
同じ職場で働いていた経験から、お互いのキャリアや仕事のレベルを知っている。おのずと要求する仕事のレベルが高くなり、切磋琢磨することで、店の成長のスピードが速くなるという。

臆せずチャレンジができる
ひとりでは変化を恐れてしまうが、ふたりで話し合い検討するうちに、チャレンジに前向きになれるという。ふたりだからこそ、起こる変化を楽しむ余裕も生まれる。

「カード」が多い
役割を分担していることで、お客さまに対して気づきが増える。料理側から見ることと、サービス側から見ることでは、感性が違うため、できること=カードが多くなり、よりホスピタリティは充実するといえる。

デメリット

守りに入りがちになる
同じ環境に居続けると、感性が似てきてしまう。そうすると、視点を変えることが難しくなり、マンネリに陥る危険性がある。つねに、そういった危機感を持っておくことは重要だ。

逃げ場がない
知りすぎているがゆえに、いくらでも意見することはできる。しかし、ふたりで働いている以上、追い詰めると逃げ場がなく、店の雰囲気も悪くなってしまう。できるだけ建設的な意見を伝えるようにしている。

コンディションのレベルを保つのが難しい
人のコンディションは日々変わるので、ふたりがつねに体調やメンタルを同程度に保つことは難しい。コンディションは、ふたりでバランスが取れるよう心がけている。

植松裕喜さん
1985年生まれ、千葉県出身。18歳で「ラ・パルム・ドール」の後藤雅司氏に師事。国内のレストラン数店で研鑽を積んだのち、26歳で渡仏。帰国後、2016年に「カルム」のシェフに就任。

佐野敏高さん
1984年神奈川県生まれ。海外で学ぶうちにソムリエを志すようになり、19歳でキャリアをスタートさせる。「アピシウス」など都内の名店で経験を積み、2016年に「カルム」のディレクターに就任。

カルム
caime

東京都目黒区大橋1-2-5 新村ビル 2F
03-6455-1932

本記事は雑誌料理王国2018年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2018年12月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする