”イルマーレ”依田隆シェフの修行時代の味!「トマトの冷製カッペリーニ」


Il Mare( イル マーレ )/ 依田隆
師匠「 リストランテ・ヒロ」 山田宏巳

「海」を意味する店名通り、道を挟んだ真っ正面が小田原漁港という立地にある「イル マーレ」。その日揚がった魚介が主役となるため、用意するのはお任せコースのみ。

オーナーシェフ依田隆さんは夜間学校で調理を学び、26歳で会社員から料理の道へ転身、神奈川県のパスタ店料理長などを経験した。「表参道のトラットリアで副料理長を務めていたころ、まかないは毎日ランチの残りのパスタ。さすがに飽きて、それ以外ならなんでもごちそうに思え、牛丼に焦がれたり(笑)。でも、この経験がよりパスタに執着する原点になったかもしれません」

料理人としてはスタートが遅かったことから、有名店よりすぐに仕事を任せられ、実戦経験が積める店を選んでキャリアを築いてきたが、先輩の紹介で2000年「リストランテ・ヒロ」へ。スペシャリテは、「トマトの冷製カッペリーニ」だ。

そうめんに代表されるような、涼を感じる麺料理を好む日本人の感覚を見事にとらえ、冷製パスタを浸透させた山田宏巳シェフを代表する一皿。「この料理が成立するために重要なのは、トマトの糖度と酸度。甘ければよいということではない。山田シェフは、とにかく食材探しへの情熱が強く、どこへでも出かけていく。それゆえ、店に素材を納入する業者の数があまりにも多いことに驚きました」。

口にすると、まず前面に現れるのはトマトの甘味だが、飲み込むタイミングには、フレッシュな酸がすっきりと伸び、冷たい細麺の繊細な喉越しときれいに調和する。「看板だから、味わった瞬間に“なるほど、これがスペシャリテたるゆえんか!”と伝わることが大切。今自分の代名詞であるパスタも、納得する素材が入らなければご提供しません」。

依田シェフは、「リストランテ・ヒロ マーレ」を経て独立。「イタリアのレストランを巡ったとき、山のものしか扱わない店や、海のものしか扱わない店に出合い、地の利を生かして特化することに興味を抱いていたので、小田原に拠点を移すことに戸惑いはありませんでした」。以来、積極的に地元の漁師や農家との付き合いを開始。信頼関係を築くまでに時間はかかったが、今や友人同然。彼らの苦労が分かるから、責任をもって伝えたいという。

【レシピ】トマトの冷製カッペリーニ

材料(1人前)

フルーツトマト 2個
カッペリーニ 15g
E.V.オリーブ油 1まわし
ニンニク 1/2片
バジリコ 1枚
塩 適量

作り方

1. ヘタをくりぬき、湯むきしたトマトを1/8にカットし、塩、ニンニクとバジリコの細切り、E.V.オリーブ油で30分マリネし、冷やしておく。
2. 塩湯でカッペリーニを3分間茹で、氷水でしっかり冷やして水気を切り、器に盛る。
3. 仕上げに、2 に 1 のソースをかける。


text 木村千夏 photo 篠原宏明

本記事は雑誌料理王国2020年8・9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年8・9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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