World news Paris : パリ16区の新店「CAVALIERI」で、厳選素材が織り成す地中海ガストロノミーを体感

©Thesocialfoodparis 「キャヴァリエリ」のインテリア。イタリアから特注した大理石やウォールナットが散りばめられている。

食の都パリで、食ジャーナリストして活動する伊藤文さんから届く美食ニュースをお届けする本連載。今回はパリ16区の新たな顔となりそうな注目の新店「CAVALIERI」(キャヴァリエリ)の地中海ガストロノミーを体感。

新学期のパリには新店が次々にオープンして、なかなか全てを網羅するのは至難の技。そんななか、注目される新アドレスの1つが「キャヴァリエリ」だ。

パリ16区のトロカデロ広場以西、高級住宅街でありながら、百貨店「オ・ボン・マルシェ」の食料品店の2軒目もある商店街もそばという立地にオープン。

パリのレストラン業界では近年、若手のシェフたちが11区に集中してきたが、レストラン砂漠と思われてきた16区が見直されつつある。そんな16区の顔の一つとなりそうなレストランだ。

©Thesocialfoodparis 元フードブロガーという、異例の経歴を持つミシュランガイド2つ星オーナーシェフ、ブルーノ・ヴェルジュ氏(左・63歳)。中央と右がシェフ2人。
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元フードブロガーという、異例の経歴を持つミシュランガイド2つ星オーナーシェフ、ブルーノ・ヴェルジュ氏(左・63歳)。中央と右がシェフ2人。

この店が話題となった一つの理由が、今年ミシュランガイドで2つ星を獲得した12区の店「ターブル」のオーナーシェフ、ブルーノ・ヴェルジュ氏が監修しているから。

ヴェルジュ氏は異例の経歴の持ち主だ。1959年に3つ星レストラン「トロワグロ」の本拠地であったオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏ロアンヌの町に生まれ、はじめは某会社の経営者だったのだが、料理ジャーナリストに転向。レストランは「飲み、食べ、学ぶための文化を提供する場所」と考え、最終的に54歳で自身がキッチンに立つ「ターブル」をオープン。フランス中の素材を知り尽くし、生来のセンスで作り上げる皿と雰囲気は、世界中の美食家の注目の場となった。

そして今年2つ星を獲得したという快挙。まったくの独学かつ、独自のセンスと嗅覚で作り上げる料理で評価されたため、業界からは非常に驚きをもって迎えられている。

©Thesocialfoodparis 「キャヴァリエリ」のインテリア。イタリアから特注した大理石やウォールナットが散りばめられている。
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「キャヴァリエリ」のインテリア。イタリアから特注した大理石やウォールナットが散りばめられている。

「キャヴァリエリ」は、ヴェルジュ氏の料理を愛する友人であり投資家との友情から生まれたレストランだ。テーマは地中海。地中海を愛し、クリエーション源の一つとして、様々な国を歩き回ったという経験を、この店に込める。

モダンなインテリアを手がけたのは、投資家夫人であるインテリアデザイナー。イタリアのインダストリアル・デザイナーとして知られるジノ・ポンティの建築からインスピレーションを得たそうで、イタリアから特注したという大理石やウォールナットなどの素材で、空間に高級感と遊びをもたらしてくれている。

120㎡の広さに65席だが、カウンターや背の高いテーブル、低いデーブルの上手な配置で、空間に動きが感じられる。

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シェフを務めるのは、ケビン・ストラダリオリ氏とクリスチャン・ストラダリオリ氏の兄弟。クリスチャン氏は「ターブル」で1年間ヴェルジュ氏のもとで働き、彼の哲学を学んできた。

「中東のザアタルスパイス風味のオイル、野菜のグリル」や、「フレッシュな鯛、自家製タラマのマヨネーズソース和え」などの前菜、「ズッキーニのピザを添えたカマスのグリル」、「ガリス地方の仔牛のグリル、スペイン・ビスケー湾サントーニャのアンチョビ風味」のメインなど、ヴェルジュ氏ならではの厳選した素材に、オリジナルな地中海のタッチが加えられて、楽しさが倍増する。

さらにベテランの客室責任者パスカル・ヴィーニュ氏は、若手のサービス係をしっかりと見守る。この店に抜擢される前は、名シェフ、ギー・マルタン氏がオーナーのレストラン「パスコ」に13年も務めていた。キャヴァリエリでは、美味しい料理と、一流のサービスもぜひ体感していただきたい。

©Thesocialfoodparis 「中東のザアタルスパイス風味のオイル、野菜のグリル」
©Thesocialfoodparis 「中東のザアタルスパイス風味のオイル、野菜のグリル」

text:伊藤 文

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