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「私は甘党です」を英語で言うと?


ネットをはじめ、テレビや雑誌のメディアで、甘いもののニュースや特集は連日賑やかです。これは甘いもの好きな人が多いことの表れ。

日本語では、甘いもの好きを“甘党”と表現します(最近では、“スイーツ党” “スイーツ好き”という言い方も浸透していますね)。

これに類する英語表現、ちゃんとあるんです。

甘党を英語で表現するとこうなります

Sweet tooth、直訳すると、“甘い歯”になりそうですが、これ、“甘党”のことです。

私がこの表現を知ったのは20年近く前のこと。イギリス人との会話の中でです。

日本人とイギリス人のご夫婦が来日し、一緒に食事をする機会がありました。お互いに食いしん坊なこともあり、イギリスや日本の食シーンについて話が及んだときのこと。

「日本人はひと昔前に比べて、びっくりするほどsweet toothになったよ」と。前後の文脈からすぐにその言葉の意味するところがわかり、“甘党”を“sweet tooth”と表現することを理解しました。

“口/mouth”ではなく、“歯/tooth ”とはおもしろいな、と感じたこともあり、すぐに私のボキャブラリーに加わりました。その後、会話であれ文章であれ、実際によく使われる言葉であることを認識しました。

toothは歯というよりも・・・

ある日、ふと「複数形の“teeth”ではなく、なぜ単数系のtooth”なんだろう?」という疑問がわいてきました。

そうして調べたところ、(単数の)“tooth”には“歯”だけではなく、“(食べ物の)好み”“嗜好”という意味もあったのです。“sweet tooth”のときの“tooth”は“好み”“嗜好”と捉えると、sweet tooth = 甘党というのは大いに納得です。

声に出すと、sweetの最後のtとtoothの最初のtがくっついて、“スウィーットゥース”のように聞こえます。

では、「私は甘党です」はどう表現するのかというと、

I have a sweet tooth.

I’ve got a sweet tooth.

などとなります。

「甘い嗜好を持っています」みたいなニュアンスですね。

“tooth”を“歯”ではなく“(食べ物の)好み”“嗜好”と捉えるとしっくりきます。

ちなみに日本では、甘いものの総称としてスイーツと使いますが、これは日本独特の表現であり、英語圏では一般的ではありません。

なので、「甘いものが大好きです」と表現するのに、

I love sweets.

はやや不自然です。

そんなときにも、sweet toothはとても便利な言葉です。

繰り返しになりますが、

I have a sweet tooth.

I’ve got a sweet tooth.

を使うと違和感なく聞こえます。

スパイ小説のタイトルにも

日本でも訳が出ていて、映画化もされた『贖罪』(映画名は『つぐない』)などで知られるイギリスの作家、イアン・マキューアンの2012年の小説に『甘美なる作戦』があります。

これ、原題は『Sweet tooth』。まさに“甘党”というわけですが、この小説がスパイ小説のジャンルに入れられることからわかるように、“甘党”についてのお話ではないんですよね。

さて、この場合の“sweet tooth”が何を指すのか。ヒントは「ハードに対してソフトということ」に留めておいて、あとは読んでからのお楽しみとしましょう。


文=羽根則子
イギリスの食研究家&フードダイレクター/編集者/ライター。出版編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、2000年渡英。2007年英国クッカリーコース修了。菓子をはじめ、ワインや料理、フードビジネスなど、伝統から最新のフードシーンまで、イギリスの食事情についての企画、監修、寄稿、情報提供、講座・イベント講師を務める。


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