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 「ジョエル・ロブション」火入れの哲学(前編)


長い歴史の中で厳密に定義づけられ、体系づけられてきたフランス料理の火入れ。そのロジックの明確さはまさに群を抜いている。ここでは、ガストロノミーの世界で活躍する2人のシェフが登場。現在の、自分の「火入れ哲学」を、2種の火入れ技術、3品の料理を通して紹介してもらう。

素朴さを磨き上げる

炎のロティール、蒸気のエテュヴェ

ジョエル・ロブションのグループでは、とりわけ大切にしている火入れ器具がある。それは、ロティサリーだ。素材を塊で、直火で調理することに大きな意義を見出している。
恵比寿の「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」のシェフ、ミカエル・ミカエリディス氏のロティサリーに対する思いも深い。
「素材を塊で調理する、それも炎をあてて調理すると、独特の素晴らしい香りを素材にまとわせることができます。仕上がりのジューシーさ、素材自体の風味の立ち上り方も段違いです」。


一方、蒸気で素材を加熱するエテュヴェもまた、ミカエルシェフが特に好んで用いる技法である。用いるのは、鋳物の鍋。より厳密な火入れが可能な最新加熱機器が多く世に出ている中での選択だ。
ロティサリーによるロティールと、鋳物鍋によるエテュヴェ。素朴な器具を用いつつ、洗練された現代ガストロノミーを作り上げる技術にこそ、ミカエルシェフの誇りがある。

ロティール(Rôtir)とは
ロティールの原形は串刺しにした塊肉を、暖炉の直火で回転させつつ焼く技法。現在はオーブンや炭火を使うことが多い。ある程度大きい素材にやさしく火を入れるのが共通。加熱後はやすませ、余熱で中まで火を入れる。

肉のロティール

昔ながらの技術を厳密に

ピレネー産仔羊肩肉 ロティにし
香草パン粉をまとわせ
プチポワとオニオンヌーボーのカラメリゼを添えて

乳飲み仔羊の繊細さと香り高さを、ロティサリーで引き出す

今回用いたのはピレネー産の乳飲み仔羊の肩肉。事前に一晩かけて香草やスパイス、オリーブオイルでマリネし、ロティサリーでゆっくり、15 ~20分間ほど温めるように加熱。加熱の後は、加熱と同じ時間だけやすませる。加熱中はマリネに用いたオイルを、タイム、ローリエ、ローズマリーの束を刷毛のように用いてつける。

魚のロティール

魚は皮と骨をつけて焼き、風味を逃さない

フランス産平目 ロティにし 
カラスミのエカイエ仕立て 
鹿児島県産レモンのマーマレードと人参のクーリでエスコート

ふっくらと焼きあがったテュルボを爽快感のある仕立てで
フランス産の肉厚のテュルボ(ヒラメ)を厚切りにし、ロティサリーで焼く。この時、皮と骨をつけておくことが必須。皮は肉の乾燥を防ぐ。また骨から出るかぐわしいエキスと風味を肉に閉じ込めながら焼く。
しっとりと焼きあがったテュルボ。骨のきわまでよく加熱され、身が骨からハラリとはずれる。

ミカエル・ミカエリディス

1982年生まれ、カンヌ出身。叔母がレストランを経営していることに触発され、料理の道に。20歳でロブションのグループに入り、シンガポールではシェフ在任時にミシュラン三つ星を獲得。2017年、現職に就任する。

ガストロノミー “ジョエル・ロブション”
東京都目黒区三田1-13-1 恵比寿ガーデンプレイス内
TEL 03-5424-1347 又は TEL 03-5424-1338
https://www.robuchon.jp/


text 柴田泉 photo 天方晴子

本記事は雑誌料理王国2020年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年5月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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