「赤坂四川飯店」を語る上で忘れてはいけない存在


統括料理長 鈴木広明さん

建民が生み建一が確立した店を建太郎とともに継承していく。

「赤坂四川飯店」を語るうえで忘れてはならないのが、統括料理長の鈴木広明さんの存在だ。陳建民さんのもとで建一さんの兄弟弟子として四川料理を学び、以来この店を支えてきた。建太郎さんが「包丁を持たせたら日本一」という技術はもちろん、人柄も建一さんが「人として本物」と絶対の信頼を置くほど。そんな鈴木さんが見つめてきた「赤坂四川飯店」とは。

鈴木:建民は厳しい人でしたから、彼が調理場に立っていた頃は大変な緊張感でした。あまりの緊張でスタッフは笑顔になれなかった。それが嫌で、調理場の雰囲気をよくしよう、笑顔を作ろうと、改革したのが建一です。調理場が明るくなればコミュニケーションが生まれ、チームワークもよくなりますからね。

──大変な改革だったでしょうね。

鈴木:はい。少しずつ、時間をかけて。さらに建一はお客さまのためにも、好き嫌いや食材の切り方まで気を使い、仕込みに手間暇をかけて、一生懸命な姿勢がお客さまに伝わるよう、最大限の努力をします。それにプロとして、どんなに体調が悪くても、辛くても、笑顔で料理をしてきました。お客さまの前でニコニコと盛り上げて、裏に下がって誰も見ていない所でだけふとため息をつく、そんな姿も私は見てきました。しかし、何があろうとも、これまで1日たりとも嫌な顔で料理をしたことはありません。それが陳建一です。

鈴木:「赤坂四川飯店」は建民が四川料理を広めたいという思いで始め、建一が確立しました。建太郎はそれを守りながら、これからの時代に対応していかなければなりません。たとえば麻婆豆腐は、簡単そうに見えて、少しでも気が緩むとまったく違うものになってしまう料理です。私たちはこの料理に命をかけて店の看板を守ってきました。これを今の若い人材にどうやって伝え、技術を高め、「赤坂四川飯店」のブランドを高めていくか。

──そのためにはますますチームワークが重要になりますね。

鈴木:はい。建一は仕事の仲間たちとの家族ぐるみの付き合いを大切にしてきました。私も建太郎が4〜5歳の頃からよく知っています。その絆があるからこそ、今のアットホームな雰囲気、皆でお客さまを思う料理がある。建太郎もそんななかで育ってきましたから、周りへの気遣いも細やかで、私たちとの信頼関係も大切にしてくれます。皆の絆をより深くして、「赤坂四川飯店」を継承していきたいですね。

Hiroaki Suzuki
1964年静岡県生まれ。高校卒業と同時に上京し「赤坂四川飯店」に入社。1985年に「池袋四川飯店」に異動し、1992年より料理長を務める。2001年に「赤坂四川飯店」料理長に抜擢され、2017年9月統括料理長に就任。

赤坂四川飯店
akasaka shisenhanten

東京都千代田区平河町2-5-5
全国旅館会館ビル 5F・6F
☎03-3263-9371
● 11:30~15:00(14:00LO) 17:00~22:00(21:00LO)
● 年末年始休
● コース 昼4000円、夜8000円~
● 300席
www.sisen.jp

本記事は雑誌料理王国282号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は282号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする