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【天現寺】イタリア料理の名店「インカント」流。トマトソースの作り方

インカントのトマトソース

ニンニクとブーケガルニ使いがポイント
キレよく仕上げると応用範囲はぐっと広がる

インカント小池教之さん

Noriyuki Koike
1972年、埼玉県生まれ。「ラ・コメータ」や「パルテノペ」など、東京のレストランを経て、 2003年に渡伊。ピエモンテ、プーリア、シチリア、カンパーニャ、ウンブリア州等で約3年間修業を積む。帰国の翌年、「インカント」のオープンと同時にシェフに就任した。

 トマトソースのおもな材料は缶詰のホールトマトとタマネギ。シンプルなソースだけに、トマト缶の選び方、食材を入れるタイミング、火の調節、また、どの程度水分を飛ばすかによって仕上がりに差が出る。
 だから、「各店で味が違って当然」と言う小池シェフのソース作りのポイントは、ニンニクを入れて熱したオリーブオイルの中にブーケガルニを入れ、オイルに香りを移すこと。ニンニクやブーケガルをそのまま煮溶かす方法もあるが、「ソースのキレを大切にしたい」と、完成前に取り出すのが小池流だ。

 また、ホールトマトを崩さず鍋に入れるのは、シェフの知恵。こうすると鍋の中は、トマトのジュースの中に実が浮いている状態になる。「鍋の中でうまい具合にジュースが対流するので、こげにくく、効率よく熱が伝わるのです」

イタリア料理に大きな変化を与えた食材によるソース

 今回、トマトソースを紹介した理由は、「観賞用として伝わったトマトが料理と出会い、イタリア料理は劇的に変化した。現在に至るまでのイタリア食文化に必要不可欠なマスターピースのひとつと捉えているから」。イタリアの郷土の味や食の歴史に精通するシェフらしい理由だ。

 小池シェフは、トマトソース作りをいい意味での「ながら作業」と呼んで楽しむ。火入れに時間をかけすぎず、水分を飛ばしすぎないようにするのもコツ。煮込みすぎると酸味と甘味のバランスが崩れるからだ。「ある程度の酸味や水分を残し、『完成 』 させる半歩手前で仕上げ、その後の使い勝手に幅を持たせます」
 その微妙なさじ加減によって、パスタやメインに寄り添う、応用範囲の広いソースが出来上がるのだ。

料理の「軸」となるトマトソースは、煮詰めるのではなく
味を溶かし込む感覚でゆっくりと火を入れる。

「トマトソース」トマトソースを使う場合は、他の食材を加えて煮詰めたり、ハーブを加えるなど、必ずひと手間入るので、ソース自体はシンプルに仕上げます。うちの店はメニュー数が多く、トマトソースの料理は、その中でよいアクセントになっている。パスタのほか、カタツムリのトマト煮、トマト風味のトリッパ、またバッカラのコロッケに添えるなど、広く活用しています。

小池さん流「トマトソース」

ソースの材料
ホールトマト缶(2550g)…2缶/オリーブオイル…240cc/タマネギのみじん切り…360g/ニンニク…2片/ブーケガルニ(ニンジン、セロリ、ローリエ適量)/塩、バジリコ…適量

鍋にオリーブオイルを入れ、皮付きのままつぶしたニンニクを弱火にかける。
ニンジン、セロリ、ローリエを適量、タコ糸で束ねたブーケガルニを用意しておく。
ニンニクから香りが出たら、ブーケガルニを入れ、時々向きを変えながら野菜の香りを移す。
みじん切りにしたタマネギを入れる。最初は中火で油が馴染んできたら弱火にする。
タマネギから甘味を引き出すために、全体的にうっすらと色付くまでじっくり炒める。
1〜6 までの所要時間は、20~30分が目安。ここでニンニクを取り出す。
ホールトマトはつぶさずにそのまま鍋へ。缶の蓋を全開にしないで入れると飛び散らない。
トマトを入れたら、全体が温まるまではやや強火。時々、鍋を揺らして混ぜる。
中火から弱火にし、時々かき混ぜながら煮込む。かなりのあくが出るので、その都度とる。
2時間ほど煮込んだら、ブーケガルニを取り出す。仕上げにバジリコを入れ、香りをまわす。

トマトソースをプーリア州のパスタ料理州のパスタ料理で使う

クレスク タィヤット、レバー入りサルシッチャとウズラ豆とトマトのスーゴ
ポレンタを練りこんだ弾力ある生パスタとレバーの旨味を活かしたサルシッチャにトマトソースがよく絡む。マルケ州は、ポレンタをよく食す地域。余ったポレンタを練り込んでフォカッチャを作ったのが、このパスタの始まり。

インカントのトマトソース

材料
生パスタ(約15人分の分量=イタリア産セモリナ粉…500g/水…230g/塩…適量)…1人分/トマトソース…レードル1杯/甘トウガラシ…2本/オリーブオイル、トウガラシ、塩、リコッタサラータ、フレッシュオレガノの葉…各適量

作り方
1.フライパンにオリーブオイルをひき、トウガラシを入れる。
2.香りが出たら、ざく切りにした甘トウガラシを炒め、トマトソースを入れてさっと火を通す。
3.2にゆで上がったパスタを入れて和え、塩で味をととのえたら、フレッシュオレガノの葉、リコッタサラータを散らす。

「クレスク タィヤット、レバー入りサルシッチャとウズラ豆とトマトのスーゴ」で使うパスタは、15人分ほどまとめて作る。材料の分量は、イタリア産軟質小麦粉…300g、ポレンタ…200g、卵黄…4個、塩…適量。

トマトソースをプーリア州のパスタ料理で使う

カプンティ、 甘トウガラシとトマトのフンゲット、 リコッタチーズがけ

材料
生パスタ(約15人分の分量=イタリア産セモリナ粉…500g/水…230g/塩…適量)…1人分/トマトソース…レードル1杯/甘トウガラシ…2本/オリーブオイル、トウガラシ、塩、リコッタサラータ、フレッシュオレガノの葉…各適量

作り方
1.フライパンにオリーブオイルをひき、トウガラシを入れる。
2.香りが出たら、ざく切りにした甘トウガラシを炒め、トマトソースを入れてさっと火を通す。
3.2にゆで上がったパスタを入れて和え、塩で味をととのえたら、フレッシュオレガノの葉、リコッタサラータを散らす。

スタッフがチーズプロフェッショナルの資格を持つ「インカント」では、さまざまなイタリアのチーズを酒で洗ったりしながら自家熟成させている。その数約30種類ほど。中には自家製のチーズも。
インカント

インカント
incanto

東京都港区南麻布4-12-2 ピュアーレ広尾2F
03-3473-0567
● ディナー 18:00~23:00LOワインバー18:00~翌1:00LO (土・祝は23:00LO)
●日、第1月休
●コース 6800円、7500円
●26席
http://incanto.jp


上村久留美=取材、文 絵鳩正志=撮影
text by Kurumi Kamimura photos by Masashi Ebato

本記事は雑誌料理王国第237号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第237号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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