今回のイベントでは、一部のワイナリーによる実演販売も実施。中でも、設立から10年未満の個性的な小規模ワイナリーが印象的でした。その一部をご紹介します。
■宮城県 Fattoria AL FIORE(ファットリア アル フィオーレ)
宮城県川崎町で2015年に設立。仙台市内でイタリアンレストラン「アル フィオーレ」を運営していた目黒浩敬さんが代表を務め、2018年には廃校になった小学校の体育館を改修した自社ワイナリーが完成。地元の生産者から畑ごとぶどうを買い取り、生産者との関係性を大切にしながらワインを造っている。
●写真左)Fattoria AL FIOLE SERIES Rosso 2018
ワイナリーを代表するフラッグシップシリーズ。よりすぐりのメルロー100%で仕込んだ、ハレの日にふわさしい赤ワイン
●写真中央)NECO SERIES Bucci 2020
気軽に飲めるフレッシュな赤ワイン。マスカット・ベーリーAとメルローを使ったミディアムボディの赤ワイン
●写真右)Piacere! 2020 Fattoria AL FIORE
自社ワイナリーが完成した2018年に「はじめまして」を意味する「Piacere!」と名づけて初リリース。リピーターも多いスチューベンのロゼスパークリング
■栃木県 Cfaバックヤードワイナリー
フライングワインメーカーとして全国各地のワイナリーを立ち上げた経験をもとに、2012年から自社によるワイン造りをスタート。醸造所は栃木県足利市で60年以上続く、ラムネやシロップの製造会社である株式会社マルキョー内に建てられている。「文字量の多さは日本一」と噂のラベルにも注目。
●写真左)Opening Act Muscat Bailey A-C 2019
山梨県産と栃木県産のマスカット・ベーリーAで造られたロゼワイン。綿あめやイチゴのような甘い香りに対して、味わいはドライ
●写真右)Opening Act Muscat Bailey A-D 2019
栃木県内でもワイン用ぶどうの栽培が盛んな岩舟産のマスカット・ベーリーAを用いた赤ワイン。ホワイトペッパーなどスパイスの香りが強いのが特徴
■東京都 深川ワイナリー東京/渋谷ワイナリー東京(株式会社スイミージャパン)
2016年の設立から5年目を迎えた、東京下町・門前仲町にある小規模ワイナリー。日本全国からぶどうを集め、ワイン醸造歴20年以上の上野浩輔さんがエノログ(ワイン醸造技術管理士)を務める。「コト創りのワイナリー」として、ワイン醸造を身近なものにしてもらおうと、醸造体験等も実施。
●写真左)長野県松本市産マスカット・ベーリーAスパークリング
シャンパーニュと同様の瓶内発酵によるマスカット・ベーリーAを用いた辛口赤ワイン。華やかなベリーの香りとアルコールの芯を感じるすっきりした味わい
●写真中央)山形県産ナイアガラスパークリング
山形県天童市産のナイアガラを用いた無濾過の辛口オレンジワイン。瓶内2次発酵による泡、芳醇な香りに対してすっきり辛口のギャップが楽しめる
●写真右)2020メルロー
渋谷区のMIYASHITA PARK内にあるレストラン併設の「渋谷ワイナリー東京」で醸造されているワインの一つ
■神奈川県 横濱ワイナリー
横浜市内の新山下にある日本で一番海に近い小規模ワイナリー。体にも地球にも負荷の少ないワイン造りを目指し、ほとんどの銘柄が単一品種によるもの。アルコール度数は9〜13%と低めで「飲み疲れしない」のも特徴。2020年には横浜市内にワインぶどう専門の畑を開設。将来的に「横濱ワイン」造りを目指している。
コロナ禍という障壁はあるものの、日本の食文化への関心が高まるにつれ、日本ワインにも注目が集まっているのは事実。そしてその陰には、日本ワイン普及のために日々改良を重ねながらワイン造りに励み、切磋琢磨して日本ワインの価値向上を目指すワイナリーの努力があります。
再び多くの外国人観光客が日本を訪れるようになった暁には、「日本ワイン」がさらなる盛り上がりを見せてくれるよう願ってやみません。そしてそれ以前に、今日本にいる私たちがもっと「日本ワイン」に触れ、その魅力を自分の言葉で語れるようになれば、「日本ワイン」の未来はさらに輝くのではないでしょうか。
2021/12/19
田中英代=取材、文 text by Hanayo Tanaka