ひと晩水浸けておくのが一般的だが、キンシンサイや春雨、クコの実などのように2、3時間で戻るものもあるので戻し時間には要注意。戻してすぐに調理することもできるが、汚れがついていることもあるので、一度沸騰させてから使ったほうがよい。
板春雨、カソウカ、キンシンサイ、クコの実、黒クコの実、サイカチの実、シイタケ、鶏絲茸、白キクラゲ、スルメイカ、チャジュダケ、ナツメ、ファーツァイ、フカヒレ、モモの木の樹液、ワラビ春雨など
カソウカは、2時間ほど水に浸けてからボイルする。
シイタケはひと晩水に浸けてからボイルする。
干し貝柱や干しエビは、水に浸けたままの状態で蒸すが、干し貝柱が戻し液まで料理に使えるのに対し、干しエビは臭みがあるので戻し汁は使えない。また、ツバメの巣は、15分~30分ほど蒸した後にそうじが必要。白キクラゲは水で戻すのが一般的だが、トロっと仕上げたい場合は蒸す。
キヌガサダケ、白キクラゲ、ツバメの巣、ハスの実、干しエビ、干し貝柱、干しガキ、マカなど
干し貝柱はひと晩水に浸けてから1時間ほど蒸すと、全体が均一にふっくら仕上がる。
水で戻したら、加熱して冷ます、を10~15回繰り返す。沸騰したら(ただし、ナマコのように沸騰直前で火を止めたほうがよいものもある)蓋をしたまま放置するのは、自然にゆっくりと冷ますため。こうすることでふっくらと戻るからだ。冷めたら水を変えて再び過熱する。
アキレスケン(豚、鹿)、ウキブクロ、ナマコなど
ひと晩水に浸けて戻したナマコは、90℃まで加熱して冷ますということを状態を見ながら繰り返す(10回が目安)。
途中、冷めた状態の時に、何度かに分けてペティナイフで表面の汚れを落としたり、内臓や筋肉を取り除くなどのそうじをする。
表面のそうじの際には、トゲを折らないように注意。内臓や筋肉は、親指の先で爪を当てないように行う。ナマコは油に溶けやすいので、よく手を洗ってからそうじをすることも重要。
ひと晩水に浸けて戻した豚のアキレスケンは、水を変えて火にかける。沸騰したら蓋をして冷ます。
これを10回ほど繰り返す。アキレスケン特有のけもの臭を抜く必要があるが、抜きすぎると風味を損なうので注意。
アキレスケンの場合は、全体がやわらかく戻ってから、汚れや薄皮を取るなどのそうじをする。
十分に旨味のある干しアワビに、肉や金華ハムの旨味まで加えようという贅沢なやり方。単にえぐみや臭みを除いたり、やわらかくしたりする戻し術とは一線を画する。他の食材の味を移すという点では、ネギ、ショウガ、紹興酒などを使うフカヒレ(尾ビレ)の戻し方と比較的共通点が多い。
フカヒレ(尾ヒレ)、干しアワビなど
30~35時間水に浸け、さわった時に全体が均等で、適度に弾力を感じるくらいまで戻す。特に中心部が戻りにくいので確認する。
干しアワビは、その重みで鍋に沈んでこげやすいので、長時間煮る場合は、鍋に網を敷き、その上にアワビをのせてから加熱する。
水を入れ、沸騰したら30分から1時間弱火でコトコト煮て、冷ます。1度でやわらかくならない場合は、冷めてから再度、加熱する。
火から下ろして冷ましたら、そうじをする。内側に少しだけ切れ目を入れ、ピンセットで内臓や汚物を取り出す。左側がそうじ済の状態。
アワビと煮込む材料には、アワビ1に対して、親鶏の肉1、豚モモ肉0.5、金華ハム0.5、鶏の足0.5、ネギとショウガを少々用意する。
金華ハム以外を沸騰した湯の中に入れてアクを取りながら、ある程度の時間加熱する。アクが出なくなったら火を止める。
取り出した肉は、ていねいに水洗いしておく。再び鍋に網を敷き、その上に洗った肉と金華ハム、アワビを並べていく。
鍋に清湯と上湯(シャンタン)、たまり醤油、鶏油を入れて約10時間煮る。一度火を止めて冷ましたら、醤油を少々入れて4時間ほど煮る。
干しアワビを肉やハムと一緒に煮込んでやわらかくなった状態。
漉してとったソースで、戻し終えたアワビを軽く煮て提供する。
ポイントは最初の火入れ。ごく弱火で油の温度をゆっくりと上げていくこと。この時の温度を上げすぎると芯が残ってしまう。逆に時間をかけすぎると中がスカスカになる。このように変わった乾物の戻し方としては、熱した砂で戻す方法が中国の文献に載っているという。
アキレスケン(豚・鹿)、ウキブクロなど
油の中で戻し終えたアキレスケンは、湯に入れて冷ます。これを2、3回繰り返し、最後にそうじをして戻しは終了。
大豆油の中にひと晩浸けておいた豚のアキレスを弱火にかける。30分くらい火にかけると上下に縮んで、ところどころ膨らんでくる。
アキレスケンが膨らんできたら、鍋の中の油をかき回し続ける。全体的に膨らんできたら強火にし、その中に水を入れて爆発するようにしてアキレスケンをふくらませる。これを3回ほど繰り返す。油から上げたら湯に入れてさらに戻す。
田村亮介/Ryosuke Tamura
1977年、東京生まれ。
中国料理店に育ち、幼い頃から料理に興味を持つ。調理専門学校卒業後、数店での修業を経て四川料理「麻布長江」へ。10年ほど長坂松夫氏に師事し、2009年、「麻布長江 香福筵」のオーナーシェフに。
麻布長江 香福筳
東京都港区西麻布1-13-14
03-3796-7835
● 11:00~14:30LO(土・日・祝は12:00~) 18:00~23:00(22:00 LO)
● 月休
● コース 昼3500円~、夜6500円~
● 44席
www.azabuchoko.jp
上村久留美=取材、文 依田佳子=撮影
本記事は雑誌料理王国第273号(2017年5月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第273号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。