別荘地や観光地として知られる軽井沢には、ご存じのとおり、名立たる飲食店が多い。そんななか、今年4月にまたひとつ注目店が誕生した。「地元の建築デザイナーさんにご紹介いただいた土地がここだったんですLとうれしそうに話すオーナーシェフの戸枝忠孝さん。そう、この店は脇を小川が流れており、その清涼な景色を眺めているだけで、ぐんとリフレッシュできそうだ。
戸枝さんは、昨年夏まで軽井沢の「ドメィヌ・ドゥ・ミクニ」で腕を振るっていたシェフ。だから、地元の食材に明るい。業者さんともつながりがあるので、これぞ、という素材を入手できるのも強みだ。素材ありきで構成するメニューは、春から夏は野菜やフレッシュハーブを、秋から冬はキノコやジビエを存分に使うという。「自分の名前を冠した店ですから、この土地の素材を使った自分らしい料理を追求していきたいですね」と戸枝さん。季節ごとに訪ねて、その成果を味わいたい。
レストラン食材としても市民権を得てきた信州サーモンは、ニジマスとブラウントラウトを交配させた長野県独自の品種だ。この信州サーモンなどを使ったスモークサーモン専門店がここ。本場のスモークサーモンを食べたいと、仏・オーヴェルニュ地方で研修を受けた先代が創業。製造方法や衛生面など、厳しいEUの規定をクリアするやり方を今も引き継ぎ、専任の燻製師がスモークサーモンを作っている。自動燻製機を使えば4時間でできるところを、塩入れから窯出しまで6日を費やす。この日数は、天候などを見ながら、燻製師が調整する。そうしてできたスモークサーモンは、余分な脂が落ち、さっぱりとした味わい。じわっと深い香りがある。
浅科村で40年にわたって卵を作っている養鶏農場による直売所。大学で畜産農業を学んだ2代目の滝沢栄喜さんは、鶏の健康面だけでなく、求める卵の味を考慮し、自ら配合させた飼料を使っている。いくつかの品種の鶏で卵を作っており、メインは国産系の赤鶏「もみじ」の卵「浅間小町」。褐色の厚い卵殻を持ち、コクがあり濃い味わい。割ってみると、卵黄がしっかり盛り上がり、卵白もぷるんと凝縮感がある。ストレートに生で、また料理に使ってもよいが、とりわけカスタードクリームやプリンの製菓材料として秀逸。そのため、一般客のみならず、ケーキ屋や飲食店との取り引きも多いというのもうなずける。その違い、ぜひ試してみては。
text:Noriko Hane /photo:Kenta Yoshizawa
本記事は雑誌料理王国2011年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2011年7月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。