【名店の絶品貝料理】有楽町「レ・ストゥディ」の『馬刀貝』を使用した一品


貝の宝庫、スペインの風をまとったモダン・ピンチョス

「スペインは貝の宝庫。ムール貝やアサリはもちろん、今回使ったマテ貝は〝ナバハス〞といって、網焼きにしたりゆでたりしてよく食べますよ」と話すジョセップ・バラオナ・ビニェスさん。もっとも、スペインのマテ貝は日本のものに比べると細長くスリムな体型のようだ。

バラオナさんといえば、いち早くピンチョスを日本に紹介し、一大ブームを巻き起こした立役者。そんな彼がマテ貝を使って披露したのは、缶を器にした「サルピコン」と呼ばれるピンチョス仕立ての貝と野菜のサラダであった。

【馬刀貝】(マテガイ)
■ 英名/Jack-knife clam, razor clam
■ 分類/マテガイ科
■ 旬/秋から春
■ 特徴/竹を割ったような形をした二枚貝。干潟の砂泥底に深い穴を掘り、体を縦にして潜って前端から足を、後端から水管を出して呼吸する。北海道南部から九州までに分布。市場には、本州から九州に生息する殻に赤みを帯びたアカマテガイ、東北、北海道のエゾマテガイなどが並ぶ。殻が薄くてもろいため、むき身に殻のかけらが入らないように注意が必要。砂出し後、殻のまま焼いてシンプルに食べてもいい。

スペインの缶詰文化をコミカルなピンチョスに

実はスペインは魚介の缶詰天国である。スーパーに行くと、ウニ、カキ、イカ、タコなどカラフルな缶詰が棚にぎっしりと並ぶ。そんなスペインらしい食文化が、コミカルに表現された貝料理といえよう。

サルピコンはスペインでは定番の魚介と野菜を使ったサラダで、南米の「セビーチェ」によく似た料理だという。貝以外にエビやタコを使うことも多く、生のまま、野菜と和えることもあるそうだ。

今回の料理でマテ貝は、殻付きのままニンニクとオリーブオイルを入れた鍋の中で軽く蒸し煮にした。「白ワインは使わないですよ。だってせっかくの貝の味が飛んでしまうでしょ?」とバラオナさん。ラディッシュ、ダイコン、キュウリなどの野菜はさいの目に切り、カットしたマテ貝を加え、白ワインビネガーやレモン、マヨネーズで軽く和える。和える時に、マテ貝を蒸した時に出た、貝のジュースを入れるのがポイントだ。シャキシャキとした野菜の食感と甘味のある新鮮なマテ貝は相性がいい。思わず白ワインがすすむ。そんなスペインらしい一品となった。

マテ貝のサルピコン

山口県長門市仙崎産のマテ貝に、食感のいい生のラディッシュ、タマネギ、セルフイユ、ミニケイパーなどを合わせた。スペイン産アルベッキーナ種の香り高いE.V.オリーブオイルを使用したレモン風味のビネグレットソースに、ドライトマトを加えた自家製マヨネーズでコクをプラス。

ジョセップ・バラオナ・ビニェスさん

1966年スペイン、カタルニア地方生まれ。 97年に東京・内幸町で「エル・パティ・デ・バラオナ」をオープン。2001年「ピンチョス・ベポ」にリニューアル。02年に新宿「小笠原伯爵邸」の総料理長に就任。退職後、05年より自身のアトリエ「レ・ストゥディ」にて活動。

text:Kanami Okimura /photo:Yuko Uehara

本記事は雑誌料理王国2011年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2011年3月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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