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【完全保存版】プロのための鶏部位図鑑 

鶏肉の部位

知っているようで実は知らない…
そこが知りたい!鶏のこと。

「鶏のトサカはなぜ赤い?」そんな素朴な質問をはじめとして、鶏に関するさまざまな疑問にお答えします。身近な食材でありながら、知れば知るほど奥深い鶏の世界へ、いざ。

1. 鶏のトサカはなぜ赤い?

 トサカ(冠)は頭部の皮膚が発達した装飾器官で、その色が赤いのは、表皮に近い部分が著しく毛細血管に富むためである。クチバシの下にある肉髯(にくぜん)も同じ理由で赤い色をしている。トサカはコラーゲンやヒアルロン酸を含むことで知られ、最近は化粧品や医療品、サプリメントの原料にも多く使用されている。

2. 鶏はどうして首を前後に振って歩く?

 鶏は目の構造上、眼球を動かすことができない。その代替運動として、首を前後に動かし、自分が歩くことによって、動いていく周りの景色を追っているといわれている。これは、鳩などほかの鳥類でもしばしば見受けられる行為。鶏の頭蓋骨は非常に軽く、せわしなげな首の移動も容易なものとなっている。

3. 鶏の肉の色は餌によって変わってくる?

 結論からいえば、鶏の肉の色は餌に影響される。採卵鶏の飼料にパプリカを入れると卵黄が濃いオレンジになる。同様のことが肉にもいえるのだ。鶏の餌は、トウモロコシ、マイロ(穀物の一種)、大豆カス、魚粉、米、ミネラル類などをブレンドした完全配合飼料が使われる。この中で主体となるのはトウモロコシ。なので、トウモロコシの色が濃いものだと、肉の色がやや濃くなる。とはいえ、栄養分や味にほとんど変わりはない。
 地鶏や銘柄鶏には、配合飼料に独自の材料を加えているものも少なくない。その素材の性質や比率によるが、これが肉の色に違いをもたらす可能性もありうる。

4. 地鶏とブロイラーの違いを教えて!

 現在流通している鶏肉のほとんどはブロイラーである。ブロイラーとは大量生産に適するように改良された鶏のこと。そもそもはブロイル、つまり焼く、炙るための肉という意味で、この名がついた。
 ブロイラーは、白色コーニッシュ種、プリマスロック種などをもとに品種改良され、成長が早く、若いうちに食肉として出荷される。肉、皮ともやわらかく、クセが少ないので幅広い料理に使える。ただし長時間煮込むと肉が崩れやすい。
 一方、地鶏とは在来種の純系による鶏のこと。つまりは、在来種の血が50%以上入っている鶏のことである。飼育期間は80日以上、28日齢以降、平飼いや1㎡あたり10羽以下で飼育が必要である。これらは日本農林規格により、基準が定められている。
 イメージとしては、その土地で生まれ育った鶏を地鶏と呼ぶ印象があるが、名古屋以外で飼育されている名古屋コーチンがあったりで、必ずしもそのとおりではない。
 地鶏はブロイラーよりも飼育期間が長く、生産効率がよいわけではないので、値段は高め。見た目はブロイラーに比べると、肉付きが少ない。一般に肉質は歯応えがあり、独自のコクと風味を持つ。

5. 鶏は丸ごと全部食べられるの?

 鶏を余すところなく食べることは不可能ではない。ただし、必ずしもすすめられる行為ではないことを念頭に置いておこう。鶏の場合、腸を食すことはまずない。それは雑菌が付きやすく、かつ足が早いため。さばいてすぐ、処理を上手にすれば食べられなくもないが、衛生面、健康面を考慮すると避けるのが賢明である。

6. 鶏肉を熟成させたらどうなるの?

 鶏肉は足が早い、鮮度が命とよくいわれる。であれば、もちろん牛肉のような長期熟成は期待できないが、それでも熟成させることで、肉質がやわらかくなり風味が上がるようだ。ただし、その期間は一般的な牛肉の熟成期間の10~14日間よりうんと短く、約1日。とはいえ、屠鳥直後が一番おいしいわけではないようである。

【プロのための鶏部位図鑑】鶏鶏部位マニアックス

鶏は部位によって調理への用途もさまざまで、味わいも異なります。
ここでは、鶏をまるごと仕入れている「焼き鳥床島」床島正一さんに、雌鶏を一羽さばいていただき、全29部位をご紹介。鶏を扱うすべての料理人必携の図鑑です。

鶏の部位1
鶏の部位2
鶏の部位_あずき

あずき

脾臓のこと。とても小さく、その形状からあずきと呼ばれる。薄皮に包まれ、ふわふわした食感を持ち、レバーを思わせる苦味もある。滅多にお目にかかれない。かつては目によいとされた。別名、めぎも。

鶏の部位_あぶらつぼ

あぶらつぼ

ぼんじりの付け根の部分。文字どおり、脂を溜め込む部位で、その脂肪質の部分を抜き取ったものを指す。独特の香りがあり、ぼんじりよりも味わいは濃厚で、歯応えもある。一羽からほんのわずかしかとれない。

鶏の部位_おたふく

おたふく

胸腺のこと。仔牛、仔羊でいうリー・ド・ヴォーにあたる部位で、鶏の場合もやはり珍重され、好む人が多い。クリーミーで、とろっとした舌触りを持つ。さらに口の中で旨味がじわっと広がる。

鶏の部位_がら

がら

首、背から腰にわたるまでの骨と筋で、肉や内臓を取り除いたあとのもの。スープのだしをとるのに使う。旨味のもととなるグルタミン酸を豊富に含み、クセがないので、さまざまな料理に幅広く使われる。

鶏の部位_かわ

かわ(皮)

鶏の皮膚。ジューシーな旨味と、焼くとパリッとした食感になる。ひと口に皮といっても、首皮、胸皮、モモ皮と部位により味わいが異なる。もっとも厚く歯応えがあり、脂肪分の少ない首皮は、焼き鳥で使われることが多い。

鶏の部位_きどう

きどう(気道)

肺につながる部分。食感、味ともに軟骨によく似ているが、軟骨ほど厚みはなく薄い。脂はほとんどない。焼き鳥の場合は脂肪分が多い部位と合わせたりする。ほかに、煮込みに使うこともある。別名、ストロー。

鶏の部位_きんかん

きんかん

メスの親鶏だけにある部位。腹卵のことで、この部分が卵黄になる。鶏の産道にあり、この時点ではまだ白身はついていない。黄色く丸く、名前のとおり、きんかんによく似ている。甘辛く煮たり、すき焼きに入れたりする。

鶏の部位_ささみ

ささみ

胸肉の内側、胸骨に沿って左右に一本ずつある肉で、牛や豚のヒレに相当する部分。笹の葉に似ていることが名前の由来。脂肪分がほとんどなく、肉質はやわらかい。味わいは淡白。鶏刺し、酒蒸しやサラダに使われる。

鶏の部位_した

した(舌)

滅多にお目にかかることのない、非常にマニアックな部位のひとつ。食感は硬く、こりっとしている。食べたあとに歯に残るような感触があり、印象に残る。肉も脂質もほとんどない。

鶏の部位_しょくどう

しょくどう(食道)

くちょっとした食感を持つ。脂が周りについているので、ほどよい旨味がある。焼き鳥にすると香りがよく、人気の高い部位。ほかに煮込みや、ゆでてポン酢で和えて食べたりする。別名、さえずり。

鶏の部位_すなぎも

すなぎも(砂肝)

胃の筋肉。胃が発達している鶏特有の部位。丸呑みした卵の殻や貝殻などのエサを砕いてすりつぶすため、独特のコリコリとした歯応えがある。新鮮なものは刺身でも食べられる。別名、すなずり(砂ずり)、ずり。

鶏の部位_せぎも

せぎも

腎臓のこと。背側のがらに付いている。骨から外すのに時間がかかる割には少ししか取れず、滅多に食べられない珍しい部位。鉄分含有量はレバーよりも多く、ふわっとした食感を持つ。脂ものっている。

鶏の部位_せせり

せせり

一羽からわずかしかとれない、首の周りのむき身。よく動く部位のため、身の締まりがよい。肉質は筋肉質で、かつ脂がのっているので、複雑さのある旨味を持つ。別名、くびき、こにく(小肉)、み、ネック、そろばん。

鶏の部位_せんい

せんい(腺胃)

鶏の第一の胃。胃液を含んでおり、この胃液を処理するかどうかは店によって分かれる。牛のミノに似ており、噛み応えがあり、あっさりとした味わいを持つ。表面は脂に覆われており、この脂の落とし具合は店の好みとなる。

鶏の部位_そり

そり

モモのつけ根の骨のくぼみについている丸い肉のこと。由来は、フランス語の〝ソリレス〞から。〝ソリレス〞とは〝おばかさんは残す〞の意。味わいは濃厚だが、身が外しにくいため、残す者がいることからこう呼ばれる。

鶏の部位_てばさき

てばさき(手羽先)

文字通り、羽の先の部分。肉は少ないが、食感はソフトで弾力がある。ゼラチン質や脂肪が多く、濃厚な味わいで旨味がある。コラーゲンも多い。だしが出るのでスープや煮込み料理に適する。焼き鳥や揚げ物にもよい。

鶏の部位_てばなか

てばなか(手羽中)

手羽先から手指を取り除いた部分のこと。ゼラチン質を豊富に含む。唐揚げでよく使われるチューリップは、手羽中を骨から一部の肉を切り離して丸め、手で骨を持って食べやすくしたもののこと。

鶏の部位_てばもと

てばもと(手羽元)

羽の付け根の部位。胸肉に近いので、肉がしっかりと付いている。脂肪分が少ないため、比較的淡白な味わい。肉質は柔らかく、タンパク質の含有量が多い。炒め物や揚げ物に向く。別名、ウイングスティック。

鶏の部位_とさか

とさか(鶏冠)

頭の上の部分。ゼラチン質で、もっちりとした食感がある。メスはオスよりも小ぶり。コラーゲンが豊富で、薬の成分にも使用される。硬いため、充分な加熱が必要。焼くとプリプリした食感がある。別名、烏帽子。

鶏の部位_なんこつ

なんこつ(軟骨)

骨の関節部の比較的やわらかい部位。味わいに特徴はないが、コリコリとした食感が印象的。なんこつは細かく分けることができ、胸肉のなんこつはやげん、かっぱ、キール、モモはぐりぐり、ヒザはげんこつと呼ばれる。

鶏の部位_はい

はい(肺)

肺胞を含む。つまり肺胞の中に血などが入っているため、食べているといつまでも血がしたたってくる。見た目はグロテスクだが、肉質はやわらかく旨味がある。マニアックな部位のひとつ。

鶏の部位_はつ

はつ

心臓のこと。先の尖った円錐形で、ふっくらとした独特のやわらかさと弾力のある歯応えを持つ。鉄分、ナトリウム含有量が多い。内臓の中でもっとも高カロリーである。使うときは血抜きをしてから。別名、ハート、こころ。

鶏の部位_ふりそで

ふりそで

胸と手羽が接した部分のこと。手羽よりも脂肪分は少なめ。水分が多く、肉質はしっとりとしており、上品な味わい。名前の由来は、鶏の手の部分が、着物の〝ふりそで〞に似ていることから。別名、そで。

鶏の部位_ぺた

ぺた

ぼんじりの少し上、腰の皮の厚い部分。尾を動かす筋肉を周辺の脂肪と一緒に切り出したもの。当然、通常の皮よりも厚みがあり、しっかりとした歯応えを持つ。ジューシーで、脂身と甘味がある。

鶏の部位_ぼんじり

ぼんじり

尻周りの三角形の形状の肉。中に脂腺と呼ばれる脂肪の多い部分があり、鶏の部位の中で脂がのったもののひとつ。メスの場合は、みさきと呼ぶ。別名、ぼん、ぼんぼち、さんかく(三角)、ごんぼ、テール、みさき。

鶏の部位_むねにく

むねにく(胸肉)

タンパク質を多く含み、脂肪が少なく、あっさりした味わい。肉質はやわらかい。唐揚げ、煮物をはじめ、さまざまな料理に使える。水分が多く、加熱しすぎると水分が抜けてパサついてしまうので、火の通し方に注意が必要。

鶏の部位_もみじ

もみじ

鶏の脚先の部分。見た目がもみじに似ていることからこの名前がついた。とさかと同様に、ゼラチン質を多く含み、独特の食感を持つ。加熱するととろとろにやわらかくなる。中国料理でよく使われる部位。

鶏の部位_ももにく

ももにく(モモ肉)

足のつけ根の部分、味わいは淡白だが、肉には脂肪もコクもあり、歯応えもしっかりしている。鉄分、ビタミンを豊富に含む。ジューシーな味わいに仕上げるため、皮と一緒に調理することが多い。別名、かしわみ。

鶏の部位_レバー

レバー

肝臓のこと。ねっとりとした食感と濃厚な味わいを持つ。牛のレバーよりも臭みが少なく、繊維が細かいので食べやすい。鉄分、ミネラル、ビタミンAを含む。新鮮なものは刺身でも食べられる。別名、きも、ちぎも(血肝)。

三軒茶屋 床島 床島正一さん

さばいてくださったのは・・・床島正一さん
1972年埼玉県生まれ。大学卒業後、アパレル関係を経て飲食業へ。 2002年、東京・三軒茶屋に「楽の房」、10年「焼き鳥 床島」をオープン。食鳥処理場としての許可を受けており、茨城県の契約農家から鶏を一羽まるごと仕入れ、自らさばいている。


参考文献 岡本 新著『ニワトリの動物学』(東京大学出版会)

羽根則子・文 岡本寿・写真 和田海苔子・イラスト
text:Noriko Hane /photo:Hisashi Okamoto /illustration:Noriko Wada


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