中村勝宏さんの仔牛の調理法


品質がよい素材に対して料理しすぎないこと。シンプルが一番

フランス料理界の「大御所」中村勝宏ムッシュは、「ピュアで繊細な味わい」と、「ヴォ・スー・ラ・メール」を評価する。「だからこそ、フランス産乳飲み仔牛肉の良さを引き出すにはシンプルに料理すること」が基本。その基本とはまず、火を通し過ぎない。凝ったソースを合わせると乳飲み仔牛肉の風味が活かされない。また、個性が強すぎる食材とは合わせない、などを挙げる。

乳飲み仔牛肉のしゃぶしゃぶ レモングラス風味フリカッセ
レモングラスの風味をまとわせた洋風しゃぶしゃぶ。エシャロットとシャンピニヨンのエマンセをかるくソテし、白ワインとノイリー・プラ、フォン・ド・ヴォーを加えて煮詰めたものにレモングラスのスライスを加え、ここに仔牛肉の薄切りをくぐらせる。

火を入れすぎないように軽くしゃぶしゃぶする

仕上がり前にレモングラスのスライスを加えた濃いフォン・ド・ヴォ―に、仔牛肉の薄切りを軽くしゃぶしゃぶする。そのフォンを煮詰め、レモンスライスとクリームを少々加え、バターでモンテしてソースに。

モモ肉を使った「乳飲み仔牛内モモ肉のチョリソ詰め ロースト」。

一例として披露されたのが「乳飲み仔牛肉のしゃぶしゃぶ」だ。仔牛のフォンをベースに、レモングラスで香り付けしたソースにスライスしたモモ肉をさっとくぐらせる。ほのかに残るレモングラスの香りは、やわらかくミルク香のある乳飲み仔牛肉本来の味わいをより引き立てる。

「骨付き乳飲み仔牛肉のポワレ」で使用したコート(骨付き肉、右)。ほんのりと赤いピンク色は、高品質なフランス産乳飲み仔牛の証。

「骨付き乳飲み仔牛肉のポワレ」でも、火を入れすぎないように注意し、ソースもシンプルに。乳飲み仔牛肉と相性がよいというセップ茸のクルートをかぶせて焼き上げた。

ほかにもイタリアのオッソブーコをアレンジしたり、各部位の肉もローストやソテなどさまざまな料理に工夫できる。「ただし、基本は料理しすぎないこと」と中村ムッシュは念を押した。「生産者がこれほど丁寧に育てた素晴らしい食材ですから、調理にあたってはいかに素材を活かしながら、季節の食材や香りなどで付加価値を与えられるかという、知恵と工夫が求められます。本来シンプルな料理こそ真っ当な経験の積み重ねを通して学んだ、知識と技術がより必要とされるわけです」。

シンプルに見える料理にこそ料理人としての経験と知識、技術が必要とされる

風味と食感が損なわれないよう火を入れすぎない
仔牛肉のコート(骨付きロース)をポワレ用に整形し、塩・コショウしてからポワレする。この時、火を入れすぎないように注意する。

乳飲み仔牛肉と相性の良いセップ茸をクルートに
バター、グリュイエール(ラぺ)、セップのデュクセル、パン粉、塩、コショウを混ぜ合わせ作ったクルートをコートの表面にかぶせ、こんがり焼く。

【レシピ】骨付き乳飲み仔牛肉のポワレ セップのクルート

ソースはポワレしたフライパンを使う。残った油を切って、バターを少し加え、エシャロットをスゥエし、白ワイン、コニャックを加え煮詰める。さらに仔牛のフォンを加えて煮詰め、シノワで別鍋に漉し、ブールモンテして仕上げる。「ソースはあまり強くしないこと」というムッシュの言葉通り、豊かな香りのやわらかいソースだ。

材料(2~3人分)
骨付き仔牛肉…2~3枚/フォン・ド・ヴォー…200㏄/白ワイン…60㏄/コニャック…15㏄/エシャロット(エマンセ)…30g /
塩、コショウ、バター…各適量/季節の野菜(飾り用)…適量
◦セップのクルート
バター…100g /グリュイエール(ラぺ)…160g/セップのデュクセル…120g/パン粉…150g /塩、コショウ…各適量
※全ての材料を混ぜ合わせクルートに作る。

作り方
1.仔牛肉のコートレットをポワレ用に整形し、塩・コショウしてポワレする(火を入れ過ぎない)。
2.1の肉を取り出し、油を切って、バターを少し加え、エシャロットをスゥエする。
3.2に白ワイン、コニャックを加えて煮つめる。フォン・ド・ヴォーを加えて煮つめ、シノワで別鍋に漉し、ブールモンテして仕上げる。
4.1のコートレットの表面にセップクルートをかぶせ、サラマンドルでこんがり焼き上げる。
5.盛り付けをする。季節野菜のガルニチュールとコートレットをバランスよく盛り付け、3のソースを流して供す。

Katsuhiro Nakamura

1944年生まれ、鹿児島県出身。
1970年に渡仏し、スイスを経てフランスに渡り、13年以上を過ごし、79年にはパリ「ル・ブルードネ」のグランシェフ時代に、ミシュランの一ツ星を日本人として初めて獲得した。84年に帰国、ホテルメトロポリタンエドモントの常務取締役総料理長に就任した。2013年から現職。フランス農事功労章受章者協会会長、ゴブラン会会長、他多数務める。著書多数。

乳飲み仔牛の購入について
販売元の鳥新(☎03-3962-2371〈代表〉)では、レストラン向けに部位単位で販売している。ロース肉(骨付き4~5㎏、12000円/㎏)、モモ肉(骨無し6~7㎏) 8500円/㎏)ともに税別。商品の問い合わせは、エモントレーディングカンパニーまで。

有限会社
エモントレーディングカンパニー

☎03-3372-1791
www.bonappetit-net.com

フランス料理文化センター
FFCC
☎03-5408-4357
www.ffcc.jp

本記事は雑誌料理王国245号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は245号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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