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「ベージュアラン・デュカス東京」小島景さん直伝!牛肉を何倍も旨くする火入れ


特別な食材の調理に「瞬間の旨さ」をこめる。弱火、逆算の焼き。

ベージュ アラン・デュカス東京 小島景さん

「ベージュアラン・デュカス東京」の総料理長、小島景さん。毎朝、地元鎌倉の市場で野菜を仕入れてから、銀座の店に出勤することはすでに日課となった。食材はフランス産、国産を問わず厳選したものを取り寄せる。そんなシェフがオークヴィールと出会ったのは、青山「ブノワ」の総料理長になる前、2004年頃だった。「こんなに旨い仔牛が日本にもあるのか」と驚いた。その後、牧場を訪れ、柏葉さんにも会った。「牧場が清潔で美しい。仔牛たちも健康そうに見え、まじめな仕事をしていらっしゃるな、と感心しました」

以来小島シェフは現在まで、オークヴィールを使い続け、常にメニューに載せ続ける特別な食材になった。「できるだけ塊でゆっくりと火を入れたい」と、小島シェフ。今回は300グラムの骨付きロースと鋳物の鍋を使った。弱火でていねいにアロゼしながら、鍋にこもる熱気を利用し、「暖炉の火で熱を入れるように」やさしく。それは、低温調理のように均一に持続性を持たせるような火入れではない。オークヴィールの美しいピンク色、やわらかい食感、余韻の中にかすかに感じられるミルクの香り、それらが一体となる最高の瞬間。その一瞬がゲストの目の前で起きるように、時間を「逆算」しながら火を入れていくのだ。

「この一瞬の美しさを写真で撮って」と、取材スタッフを一瞬ビクっとさせたが、「はかなくも消える一瞬の旨さ」こそが、特別な食材に込めたシェフの料理哲学なのである。

やや強めの火で焼き目をつけ休ませてから再度火入れ

骨付きロースに塩を振り、鍋にオリーブオイルをひき、ニンニクとホワイトヴィールの端肉を入れて、やや強めの火で前面に焼き目を付ける。その後、鍋から取り出し休ませる。

鍋にこもる熱気を利用しながら暖炉の火をイメージして火入れ

鍋にバターを入れ、取り出した材料を鍋に戻しアロゼしながら火を入れる。この日は約20分。その後肉を休ませるときも、ときおり肉の面をかえて、均等に余熱が入るようにする。

肉を焼き終えた鍋に残った端肉、ニンニクに、鶏のブイヨンやジュ・ド・ヴォー、バターなどを加えて少し煮詰めてソースにする。小さめの鍋に移し替え、最後に肉に纏わせるように絡め、皿に盛り付ける。

北海道オークリーフ牧場仔牛のア・ラ・ブロッシュ、シャンピニオンのフリカッセとマロン

フランスでホワイトヴィールを日々扱っていた小島シェフ。2度目の渡欧時、モナコの「ルイ・キャーンズ」でフランク・セルッティ氏と働いていた時には、王室や大富豪たちにしか渡らない最高級の乳飲み仔牛を扱った経験もあるが、「ローカルな食材に目を向けることは師アラン・デュカスの教えでもある」と、オークヴィールを使う。「仔牛肉の脂の旨さを味わってほしい」と小島シェフは語る。

Kei Kojima
1988年に渡仏し、ミヨネの「アラン・シャペル」等を経て、ニースでのちに「ルイ・キャーンズ」の総料理長となるフランク・セルッティ氏に師事。97年に帰国後、2001 年に再渡仏しモナコ「ルイ・キャーンズ」へ。帰国後、青山「ブノワ」の総料理長等を経て、 10年より現職。

江六前一郎=取材、文 依田佳子=撮影

本記事は雑誌料理王国245号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 245号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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