ミシュランガイド2021三ツ星獲得【ロオジエ】食材からのインスピレーション


「ロオジエ」 エグゼクティブシェフ オリヴィエ・シェニョンさん

1978年生まれ。16歳で料理の道に入り、パリの「タイユヴァン 」、「ピエール・ガニェール」本店で経験を積む。’05年に「ピエール・ガニェール・ア・東京」の総料理長として来日。フランスに2年帰国後、’13年に「ロオジエ」のエグゼクティブシェフに就任する。

「ロオジエ」

東京都中央区銀座7-5-5
TEL 03-3571-6050(営業日の10:00 ~ 21:00)
12:00 ~ 13:30LO、
18:00 ~ 20:30LO
日月休 祝不定休(夏季・年末年始休あり)
https://losier.shiseido.co.jp/

約50年の歴史を誇る「ロオジエ」で2013年からエグゼクティブシェフを務めるオリヴィエ・シェニョンさん。東京で腕をふるうフランス人シェフは、日本の食材でどのようにフランス料理にアプローチしているのかを聞いた。

インスピレーションをくれる日本の食材で革新的フレンチを追求

島原産ジオあわびのバターポッシェ
香味野菜と燻製うなぎのフォンダン
山椒のアクセント
潮の香りのバルバジュアン
鮑の肝を入れたサバイヨンソース

日本の貝の圧倒的なおいしさを潮の香りとともに
鮑は弾力がほどよく残り、持ち味を堪能できるように、殻ごとゆっくり2時間火を通してからバターでソテー。ソースは鮑のジュをベースにした サバイヨンと、バルサミコやジュ・ド・ヴィアンドを加えた肝のソースを合わせたもの。岩海苔と魚のムースを海藻入り生地で包んで揚げたバルバ ジュアンを別皿で添え、さらに潮の香りを強調する。賽の目切りの野菜の中には鰻の燻製が入っている。鮑に花穂紫蘇、鰻に木の芽など、日本人に響く組み合わせも取り入れている。

長崎から直送される4年ものの鮑。小さくて固いフランスの鮑とは比べものにならないというシェニョンさん。昆布とわかめのみをエサとする鮑は肝まで澄んだ潮の香りがするという。

Chefのこだわり
素材探しの旅
シェニョンシェフは新しい素材との出合いを常に求めている。オマール、ピジョンなどフランス産の食材も一部あるが、8割は国産を使っている。島原産ジオあわびも現地で見つけた逸品だ。「時間と機会があれば、素材を探しにどこにでも行きたいですね。長崎では鮑のほか、種取り有機無農薬野菜、地鶏、カラスミなど良質な素材に出合い、刺激を受けることができました」と話す。日本の滞在歴も10年を超え、どの食材がいつ旬を迎えるか、「この魚は日本海で獲れたものだから冷たい海水で身がより引き締まっている」といった食材への知識も深まっている。

今年初め、訪れた長崎の市場にて。日本の食材は多様で旬の期間が短い。何がいつ、一番おいしいのかを常に追っている。東京でも季節が変わると市場に足を運び、旬を感じながらメニューを模索する。

甘鯛のうろこ焼き さやいんげんのフィル
甘酸っぱいオニオンと紅芯大根
キャロットのエキューム“ピカンテ” ソースジャンジャンブル

日本人の舌になじむうま味を加えた生姜ソース
うろこは香ばしく、身はふんわりと焼かれた甘鯛は、下に敷かれたしなやかな千切りのいんげんにより食感が際立つ。淡白な魚に合わせたのは、肉、魚のエキスを加えた生姜のソースと、マイルドに仕上げたごく少量のにんにくのピューレ。赤ビーツと白バルサミコ酢でマリネした生姜のスクエア、人参の泡、エシャロットビネガーを利かせた紅芯大根の酸味がさらに食欲を刺激する。目にも美しいガルニチュールだが、それぞれが味を完成させるために不可欠なパーツだ。 

ロオジエのシェフになってから使い続けている山口県萩産の甘鯛。身が締まり過ぎていないのでうろこ焼きのパリパリ感がいっそう引き立つ。そしてやはり「潮の香り」が十分な点もシェニョンさんのお眼鏡にかなった。

シェフに質問!

Q 日本滞在歴は?
A のべ13年

Q あなたにとってすごい日本の食材は?
A ノドグロ、クエ、キンキ、ハタ、ミル貝、ツブ貝…魚介類はどれも素晴らしい!野菜なら、皮が薄くて柔らかいナス、フランスのものより甘いカブ、京人参や紅芯大根も好き。

Q 日本人の好みや食文化で気づくことは? 
A 鰻と山椒など、和食独自の組み合わせなども興味深いし、「めでたい」に引っ掛けて鯛を食べるなど、魚に込められた意味もわかってきた。

Q ロオジエでしないことは?
A 醤油、出汁、ワサビなど、外国人にわかりやすい日本素材は使わない。それと、お客様に料理の細かい説明はしない。食べて、感じてほしい。

Q 食材を選ぶときにすることは?
A まず味を見る。そして和食ではどんな使い方をするかも聞く。似たような調理法をしたくないから。

Q あなたのフランス料理を ひとことで表現するなら? 
A 伝統的、クラシックという言葉は嫌い。革新的なフレンチ。

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text 松野玲子 photo 長瀬ゆかり

本記事は雑誌料理王国2020年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年5月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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