【ジビエの教科書】香りこそジビエ好きかが大切にする要素。野性味あふれる濃厚なソースで。「レストランユニック 」中井雅明さん


中井雅明シェフは、ジビエがやりたくてフランスの星付きレストランで働いていたという筋金入りのジビエ好き。店ではこの時期になると山ウズラ、青首鴨、山バト、ライチョウ、猪、ヒグマといったありとあらゆるジビエがメニューにのぼる。「個性の強い食材が好きなんです。野生の持っている旨味を、自分の味で表現したい」と語る中井シェフがもっとも大切にしているのは、香り。たとえば小鴨サルセルは、1〜3週間熟成させたものを丸ごとローストし、合わせるサルミソースには青首鴨をベースとしたさまざまなジビエのガラやレバー、豚の血などを使う。何種類ものジビエを扱うこの店だからこそのソースと料理だ。

熟成させたサルセルの肉に、内臓の風味がしっかり利いた濃厚なソース。野性味あふれるジビエ好きにはたまらないひと皿だが、さらに食べ疲れないようにと、モロッコのミックススパイス「ラス・エル・ハヌート」を加えたエスカルゴバターをアクセントに添える。「皿の上の表情は新しくないかもしれませんが、見えないところで常に工夫しています」

ジビエをこよなく愛する中井シェフの元に、ことにこの時期足繁く通う常連客が多いのも頷ける。

サルセル(コガモ)
【カモ目カモ科マガモ属】

ユーラシア大陸、北アメリカの中・北部で繁殖し、冬は南方へ渡り越冬する。日本では冬鳥として各地に飛来している。今回は網獲りされた新潟産を使用。肉や内臓が傷つかず、肉に臭みが移らないのが網獲りの特徴で、国内産は血抜きがしてあるのが一般的だ。

モモ肉とムネ肉を取り除いた後のサルセルの骨を、針金を切る手芸用のハサミで細かくカット。「先が細く使いやすい」と中井シェフ。切った骨をオーブンで焼いてソースのベースに。

サルセルのロティ ソースサルミ
バターでソテーしたフランス産のジロールとピエドムートンの2種のキノコの上にエスカルゴバターとサルセルを盛り、最後に濃厚なソースサルミをたっぷりと。スパイシーなエスカルゴバターが食欲をそそる。

中井シェフに学ぶ
「ジビエの真髄は野性味血の香りを残す」

数種類のジビエのガラやレバー、フォワグラ、アルマニャック、赤ワインなどで作ったソースに、豚の血を加えてソースサルミを仕上げる。沸かすとソースが分離するため、温度に気を配る。 

ローストしたサルセルをモモ肉とムネ肉に分け、サラマンダーへ。モモ肉はロゼ手前に、ムネ肉は温める程度にしたいため、位置を工夫。ムネ肉は直接火に当てず、手前にずらす。

Masaaki Nakai

田園調布「セラヴィ」や南青山「ラマージュ」などで修行した後、渡仏。パリの二ツ星「エレーヌダローズ」で魚部門、肉部門のシェフを務め、帰国後2009年に目黒「キャス・クルート」のシェフに。13年12月に独立。

レストランユニック
restaurant-unique
東京都目黒区目黒3-12-3
松田ビル 1階
☎03-6451-0570
● 金~日12:00~15:00(13:00LO)
※昼は予約制
火~土18:00~24:00(22:30LO)
日18:00~22:30(21:30LO)
●月休
●コ ース 夜5400円~ 
●21席
http://restaurant-unique.jimdo.com

名須川ミサコ=取材、文 中西一朗=撮影

本記事は雑誌料理王国258号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は258号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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