大陸中国からの在留外国人が多く住む街が「新中華街」化し、その勢いが増幅している。従来までの”中華料理”では体験することができなかった、大陸中国の家庭料理や郷土料理やB級グルメなどの、いわば未知な食文化を、中国の演出方法そのままに無翻訳で国内にインストールしている飲食店が少なくない。
そんなこともあって、一部の中国料理ファンの間ではすでに新たな座標になりつつある。国内の在留外国人のうち中国人は約79万人。その数は年々増えている。ディープな「新中華街」の大陸中華化がなぜ止まらないのか?その理由を探ってみた。
改札を出ると、そこは大陸だった。中国語や中国の食文化に明るいメンバーたちが今回訪れたのは、池袋駅北口、西川口駅、蕨駅周辺で拡大中の新中華街。都心から運賃数百円の駅前中国を体験すると、中華料理がもっと面白くなる。
池袋駅「西口(北)」出口から街へと足を踏み入れると、そこはまるで大
陸中国。2005年あたりから急激に中国化したこの街が旅の起点だ。
「駅前に中国食品のスーパーが2軒できたあたりから、池袋に中国人が増え始めたんです。買い物が便利になり、ますます中国人が集まるようになり、中国人専門の行政書士の事務所や不動産屋もできる…という具合に池袋が中国人にとって便利になっていく。そんな流れで拡大したのがこの街の構図です」というのは「羊齧協会」主席の菊池一弘(以下、菊池)。
少し歩いただけでも「UFO」と呼ばれる具入りの揚げパンのような福建省の名物スナックや、新疆ウイグル自治区のイスラム中華の店など、地域色が色濃い家庭料理やB級グルメを提供する店が多い。目につくのは「铁锅炖(鉄鍋料理)」や「烤羊肉(羊肉焼肉)」などの看板。いずれも中国の東北地方(黒龍江省・吉林省・遼寧省の東北3省のこと)の食文化だ。
「もとは台湾や福建省の資本が多かったのですが、今では東北地方出身者が経
営している店が多いと聞いています。そして10年前ぐらいは経済活動を目的に来日する中国の方がまだ多かったのですが、最近は日本のアニメを見ていたから、という理由などで来日する若い世代がとても多いんです。富裕層の子女は仕送りも多いので、自由にお金を使える若い中国人も増えてますね」(菊池)。
「在日中国人に対する日本人の視線は、ひと昔前のものだったり自分たちが“望む中国人像”で止まったまま…というケースが気になる」というのは中国語通訳の吉野好輝(以下、吉野)。池袋は、等身大の中国と向き合うきっかけも与えてくれる街かもしれない。
本記事は雑誌料理王国2019年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年12月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。