「泡の中に旨さを発見する」ために、フェラン・アドリア氏が開発した。本体に材料を入れて密封し、亜酸化窒素ガスを充填してレバーを操作すると、食材が泡状になって出てくる仕組みだ。ポイントは、粘度を出す食材を使うこと。冷製も温製もできる点も便利。一般に、温製の場合はジャガイモや卵白、冷製の場合はゼラチンや生クリームが粘度を出す食材に使われる。いろいろ試すことによって、独自の泡を「開発」してみよう。
ユズのソルベの上にジンのエスプーマをのせた、フェラン考案の一品。卵白だとゼラチンより泡がなめらかに。
マンゴーピュレとオレンジジュースが食材の場合、生クリームを粘性食材に使うとマンゴームースも軽い口当たり。
ジャガイモのピュレもエスプーマすると、フワッとなめらかなジャガイモのムースになって、食感が違う。
粘度を出す食材である生クリームに加え、シャンタナを入れることでさらに粘度を増し、しっかりとした泡ができる。
エスプーマで材料を型に入れる
黒ゴマペーストや卵などの材料をエスプーマ本体に入れ、泡状になった材料をシリコン製のケーキ型に入れる。
材料が入った型を電子レンジへ
材料が入ったケーキ型を、 600wの電子レンジに入れて、30秒間加熱する。
型から取り出し皿に盛る
レンジから出したらしっかり冷ますことが、やわらかいケーキを作るポイント。型から出して、皿に盛る。
Q. 泡のもちが悪いのですが どうしたらいいのですか?
粘度を出す食材を多くすれば、泡のもちはよくなります。例えばゼラチンの場合、1.5%だとすぐにカドがなくなるが、2%にすると形がキープできるようになります。
Q. 容器に材料が入っているのに きちんと出てくれません
レバーを引く前に何度か本体を振って、材料と亜酸化窒素がノズル側にいくようにすることが重要ですね。
Q. 保存はどうすれば いいのでしょうか?
最初に材料を本体に入れるときにきちんと衛生管理をしておけば、残った分は冷蔵庫で数日間は保存することができます。
油脂やドライの素材を、粉にすることができるマルトは、さまざまな可能性を秘めたテクスチャーといえる。
「これで調味料を作り、レストランのロゴマークの形に固め、それを崩しながら料理につけて食べていただいたり……。アイディア次第でいろいろなことができると思います」と結城さん。油脂と融合させると、さらに扱いやすくなるという特徴も備えている。
チョコレートの筒に生クリームを詰める
葉巻に見立てたチョコレートの筒に、スモークフレーバーとコニャック味の生クリームを詰める。
マルトで粉状にした生クリームをつける
マルトと竹墨で灰に見たてたパウダーをチョコレートの筒の口のところにつける。
Q. どんなものでもパウダー状になるのですか?
マルトそのものがパウダー状なので、それに近い物が合わせやすいですよ。
Q. 内容量が多いですが小さいものはないですか?
現在は1㎏入りだけ。ただ、熱や酸に対しても安定しており、保存性も高いので普通に管理していれば問題はない。1年半くらいは使えます。
Q. マルトを使用することで味に変化は起きませんか?
少し甘味のある白い粉状の素材ですが、合わせた食材の風味を損なうことはほとんどありません。
アルギン酸ナトリウムを含む液状物を塩化カルシウム溶液に浸し、皮膜形成して球状にする方法と、カルシウムを含んだ液状物をアルギン酸ナトリウム溶液に浸し、皮膜形成して球状にする方法の2通りがある。
この技法によって、キャビアやイクラのような擬似魚卵を作ったり、ソースやスープを球状にすることが可能になった。温めても溶け出すことがないので、温かいソースを球状にして提供することもできる。
クチナシ水を少し入れたリンゴジュースにアルギン酸ナトリウムを加えた液体を、塩化カルシウム入りの水の中に落としていく。写真はスペイン製の「キャビアボックス」と呼ばれる球状形成器で、一度に何十個もの球形が空気の力で落ちる。
黒蜜キャビア
見た目はまるでキャビアだが、食べてみれば黒蜜。そんな遊び心満載のひと皿を可能にするのが、この球状形成のテクニックだ。黒蜜にはカルシウム分がないのでグルコを加え、さらに増粘剤のシャンタナを足して、「黒蜜液」を作る。それをアルギン酸ナトリウム溶液に落としていけば、黒蜜キャビアの完成だ。
アルギン酸ナトリウムの溶液に素材を落とす
もともとの素材にカルシウム分があれば、何も足さずにそのままアルギン酸ナトリウム溶液の中に落とす。素材にカルシウム分がなければ、あらかじめ素材にグルコを加えればOKだ。
Q. 身体への影響はないのでしょうか?
アルギン酸ナトリウムをはじめとしたテクスチャーは、すべて植物や海藻から取れるものなので、安全性も基本的に心配はありません。
Q. 味の変化はありませんか?
球状形成に使用するテクスチャーは、ほとんど無味無臭。料理の風味に影響を及ぼすことは、まずありません。ただ、グルコは多く使うと苦味がでます。
Q. 膜の厚さを調節することはできますか?
アルギン酸ナトリウム溶液や塩化ナトリウム溶液に漬ける時間を変えれば、ある程度、膜の厚さを調節することはできます。
油も液体も瞬間冷凍できるのが大きな特徴。そのまま凍らせてフードプロセッサーにかければ、「粉末オイル」を作ることも可能だ。客席でモクモクと煙が立ち上る中でアイスクリームを作るという演出で、ゲストを楽しませることもできる。
1.水風船の中にココナッツミルクを入れて口を閉じ、液体窒素の中でクルクル回して、中のココナッツミルクを球形に凍らせる。
2.中のココナッツミルクが固まったら、水風船をはがしていく。力を入れすぎるとココナッツミルクの球が壊れるので注意。
3.ココナッツミルクの球の中に、液体窒素で固体化させ、フードプロセッサーで粉末にしたバジリコアイスを入れ、皿に盛る。液体窒素の料理を始めたのは、2005年にスペイン「カリマ」のシェフに就任したダニ・ガルシア氏。
Q. どこに保管すればいいのでしょうか?
転倒しにくい容器に入れ、平らな安定した場所に置くこと。蒸発するので、密閉したり、換気の悪い場所には置かないようにします。
Q. 余ったものはどうするのか?
汚れていなければ、タンクに戻してください。配管などを痛める場合があるので、直接、水道のシンクには流さないでください。
Q. どれくらいで購入できるのでしょうか?
業者によって異なるため、いちがいには言えないが、1ℓ500円前後が目安。運搬・保存用容器(10ℓ)で約10万円だそうです。
食材を仕込んでフリージングし、必要なときに必要な量だけ調理することが可能。しかも、食材の味や色、栄養価を保ちながら、これまでになかった食感や色彩も提供できる。
パコジェットは、専用の容器で冷凍した食材を、解凍することなく、凍ったまま特殊刃(ゴールドブレード)の回転によって0.01mm以下に粉砕してピュレ状、ムース状に仕上げることができる調理器具。3回裏ごしした以上のなめらかな食感が得られる上、残りはフリージングしておけるのでロスもない。
Q. アイスクリーム以外にも使いたいのです
上記の「フォワグラのキノア風コンソメを添えて」のように、肉や野菜などのピュレムースなども簡単にできる。料理人の創造力次第で用途はさまざまです。ちなみに、ヨーロッパのレストランでは、今、ほとんどがパコジェットでアイスクリームを作っています。
Q. きれいなパウダーになりません
パコジェットを活用するには、素材を-20~-23℃で24時間以上冷凍する必要がある。急速冷凍機がなければ、パコジェットの機能をフル活用できません。
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本記事は雑誌料理王国第243号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第243号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。