食の未来が見えるウェブマガジン

シェフ御用達!自由な発想を後押しする調理器具5選


料理の可能性を広げる調理器具
使い方と考え方

自由な発想を後押しする調理器具使いこなせば、表現の幅はグンと広がる

エスプーマ

エル・ブリが使い始めて16年。スタンダードにまでなったエスプーマの、さらなる可能性を考える

スムーズに出すためノズルを垂直に
本体の中で食材とガスが混ざり合い、レバーを引くと発泡しながら食材が出てくる。この仕組みを活用し、均等に食材を出すためには、ノズルを垂直にすることが大事。

食材、温度に合わせて粘性食材を選ぶ


「泡の中に旨さを発見する」ために、フェラン・アドリア氏が開発した。本体に材料を入れて密封し、亜酸化窒素ガスを充填してレバーを操作すると、食材が泡状になって出てくる仕組みだ。ポイントは、粘度を出す食材を使うこと。冷製も温製もできる点も便利。一般に、温製の場合はジャガイモや卵白、冷製の場合はゼラチンや生クリームが粘度を出す食材に使われる。いろいろ試すことによって、独自の泡を「開発」してみよう。

ジンフィズ ユズのソルベ添え

ユズのソルベの上にジンのエスプーマをのせた、フェラン考案の一品。卵白だとゼラチンより泡がなめらかに。

マンゴーのムース

マンゴーピュレとオレンジジュースが食材の場合、生クリームを粘性食材に使うとマンゴームースも軽い口当たり。

ジャガイモのムース トリュフ風味

ジャガイモのピュレもエスプーマすると、フワッとなめらかなジャガイモのムースになって、食感が違う。

チーズのエスプーマ

粘度を出す食材である生クリームに加え、シャンタナを入れることでさらに粘度を増し、しっかりとした泡ができる。

エスプーマ x 電子レンジ

わずか30秒で新食感のケーキができる
黒ゴマの瞬間ケーキ

エスプーマで作った素材をさらに電子レンジで加熱することで、フワフワとした食感のケーキも作れる。軽さが求められる料理の流行を反映し、スイーツ界でも軽いケーキが求められるようになった。そのなかで生まれたエスプーマの応用技だ。

エスプーマで材料を型に入れる
黒ゴマペーストや卵などの材料をエスプーマ本体に入れ、泡状になった材料をシリコン製のケーキ型に入れる。

材料が入った型を電子レンジへ
材料が入ったケーキ型を、 600wの電子レンジに入れて、30秒間加熱する。

型から取り出し皿に盛る
レンジから出したらしっかり冷ますことが、やわらかいケーキを作るポイント。型から出して、皿に盛る。

いまさら聞けない!エスプーマの使い方

Q. 泡のもちが悪いのですが どうしたらいいのですか?
粘度を出す食材を多くすれば、泡のもちはよくなります。例えばゼラチンの場合、1.5%だとすぐにカドがなくなるが、2%にすると形がキープできるようになります。

Q. 容器に材料が入っているのに きちんと出てくれません
レバーを引く前に何度か本体を振って、材料と亜酸化窒素がノズル側にいくようにすることが重要ですね。

Q. 保存はどうすれば いいのでしょうか?
最初に材料を本体に入れるときにきちんと衛生管理をしておけば、残った分は冷蔵庫で数日間は保存することができます。

マルト

待つこと久し!!輸入開始となった新しいテクスチャーは油やドライの素材をパウダー状にするデンプンだった!

マルトはタピオカ由来のデンプン
タピオカをローストして得られたデンプンを原料にしたデキストリンと呼ばれる素材。デキストリン自体は古くからつなぎとして使われてきた素材で、安全性にも優れている。低粘性・低甘味で、熱や酸に対しても非常に安定しており、保存性も高い。2013年から輸入開始になった。

液体や油脂を粉にして再構築する

 油脂やドライの素材を、粉にすることができるマルトは、さまざまな可能性を秘めたテクスチャーといえる。
「これで調味料を作り、レストランのロゴマークの形に固め、それを崩しながら料理につけて食べていただいたり……。アイディア次第でいろいろなことができると思います」と結城さん。油脂と融合させると、さらに扱いやすくなるという特徴も備えている。

醤油とユズのテリヤキパウダー

見た目は焼き魚だが、醤油とユズパウダーと砂糖をマルトと合わせた白い粉をつけて食べると、照り焼きのような風味になる。「たとえばウェディングでローズオイルとマルトで2人のピンク色のイニシャルを作って、それをくずしながら食べていくような提案もできます」。
  1. マルトは油脂を加えると扱いやすくなるため、まずはオイルを入れる。
  2. ドライ醤油を加える。さまざまな食材のつなぎの役割を果たすマルトの特性を利用し、オイルとドライ醤油を融合。
  3. よくかき混ぜて、オイルやユズパウダー、ドライ醤油など、さまざまな食材をしっかり混ぜ合わせる。

マルト x 竹墨

マルトに竹墨を加えて、まるでタバコの灰のように見せた、マルトの応用技。合わせる食材によって質感の演出も楽しめる。

チョコレートの筒に生クリームを詰める
葉巻に見立てたチョコレートの筒に、スモークフレーバーとコニャック味の生クリームを詰める。

マルトで粉状にした生クリームをつける
マルトと竹墨で灰に見たてたパウダーをチョコレートの筒の口のところにつける。

本当はどうなの? マルトの使い方

Q. どんなものでもパウダー状になるのですか?
マルトそのものがパウダー状なので、それに近い物が合わせやすいですよ。

Q. 内容量が多いですが小さいものはないですか?
現在は1㎏入りだけ。ただ、熱や酸に対しても安定しており、保存性も高いので普通に管理していれば問題はない。1年半くらいは使えます。

Q. マルトを使用することで味に変化は起きませんか?
少し甘味のある白い粉状の素材ですが、合わせた食材の風味を損なうことはほとんどありません。

球状形成

2003年にエル・ブリが使い始めて以来「液状の球体」は世界の定番の技に

2つの成分の科学変化を理解する


 アルギン酸ナトリウムを含む液状物を塩化カルシウム溶液に浸し、皮膜形成して球状にする方法と、カルシウムを含んだ液状物をアルギン酸ナトリウム溶液に浸し、皮膜形成して球状にする方法の2通りがある。
 この技法によって、キャビアやイクラのような擬似魚卵を作ったり、ソースやスープを球状にすることが可能になった。温めても溶け出すことがないので、温かいソースを球状にして提供することもできる。

重ならないように溶液の中に落としていく
アルギン酸ナトリウムを加えたら、よく攪拌してしっかり空気を抜くことが大切。注射器よりもディスペンサーのほうが手の感覚が伝わりやすいので使いやすい。溶液の中で重ならないように落としていくことがポイントだ。

リンゴジュースがイクラのように

クチナシ水を少し入れたリンゴジュースにアルギン酸ナトリウムを加えた液体を、塩化カルシウム入りの水の中に落としていく。写真はスペイン製の「キャビアボックス」と呼ばれる球状形成器で、一度に何十個もの球形が空気の力で落ちる。

黒蜜 x グルコ

カルシウムを含んだ食材は逆転の発想で

黒蜜キャビア
見た目はまるでキャビアだが、食べてみれば黒蜜。そんな遊び心満載のひと皿を可能にするのが、この球状形成のテクニックだ。黒蜜にはカルシウム分がないのでグルコを加え、さらに増粘剤のシャンタナを足して、「黒蜜液」を作る。それをアルギン酸ナトリウム溶液に落としていけば、黒蜜キャビアの完成だ。

アルギン酸ナトリウムの溶液に素材を落とす
もともとの素材にカルシウム分があれば、何も足さずにそのままアルギン酸ナトリウム溶液の中に落とす。素材にカルシウム分がなければ、あらかじめ素材にグルコを加えればOKだ。

本当はどうなの?球状形成の使い方

Q. 身体への影響はないのでしょうか?
アルギン酸ナトリウムをはじめとしたテクスチャーは、すべて植物や海藻から取れるものなので、安全性も基本的に心配はありません。

Q. 味の変化はありませんか?
球状形成に使用するテクスチャーは、ほとんど無味無臭。料理の風味に影響を及ぼすことは、まずありません。ただ、グルコは多く使うと苦味がでます。

Q. 膜の厚さを調節することはできますか?
アルギン酸ナトリウム溶液や塩化ナトリウム溶液に漬ける時間を変えれば、ある程度、膜の厚さを調節することはできます。

液体窒素

マイナス196度で瞬間冷凍でき、パフォーマンス性でも注目を集める

発泡スチロールの入れ物に液体窒素を入れて、オリーブオイルなどのオイルを流し込むと、瞬時に凍って、ポロポロの固体になる。

油も液体も瞬間冷凍できるのが大きな特徴。そのまま凍らせてフードプロセッサーにかければ、「粉末オイル」を作ることも可能だ。客席でモクモクと煙が立ち上る中でアイスクリームを作るという演出で、ゲストを楽しませることもできる。

オリーブオイルやラー油を凍らせて
オリーブオイルを凍らせてカルパッチョやトマトサラダにパラパラかけたり、ラー油を凍らせてマーボー豆腐やタンメンにかけたり……。かけると同時に煙が出て、演出効果も抜群。

液体窒素 応用編

1.水風船の中にココナッツミルクを入れて口を閉じ、液体窒素の中でクルクル回して、中のココナッツミルクを球形に凍らせる。

2.中のココナッツミルクが固まったら、水風船をはがしていく。力を入れすぎるとココナッツミルクの球が壊れるので注意。

3.ココナッツミルクの球の中に、液体窒素で固体化させ、フードプロセッサーで粉末にしたバジリコアイスを入れ、皿に盛る。液体窒素の料理を始めたのは、2005年にスペイン「カリマ」のシェフに就任したダニ・ガルシア氏。

いまさら聞けない!液体窒素の使い方

Q. どこに保管すればいいのでしょうか?
転倒しにくい容器に入れ、平らな安定した場所に置くこと。蒸発するので、密閉したり、換気の悪い場所には置かないようにします。

Q. 余ったものはどうするのか?
汚れていなければ、タンクに戻してください。配管などを痛める場合があるので、直接、水道のシンクには流さないでください。

Q. どれくらいで購入できるのでしょうか?
業者によって異なるため、いちがいには言えないが、1ℓ500円前後が目安。運搬・保存用容器(10ℓ)で約10万円だそうです。

パコジェット

新しくなったパコジェットはさらに分量設定が細分化された
風味や栄養価を損なわず、ロスもない

食材を仕込んでフリージングし、必要なときに必要な量だけ調理することが可能。しかも、食材の味や色、栄養価を保ちながら、これまでになかった食感や色彩も提供できる。

パコジェットは、専用の容器で冷凍した食材を、解凍することなく、凍ったまま特殊刃(ゴールドブレード)の回転によって0.01mm以下に粉砕してピュレ状、ムース状に仕上げることができる調理器具。3回裏ごしした以上のなめらかな食感が得られる上、残りはフリージングしておけるのでロスもない。

さらさらのパウダー
フォワグラのキノア風コンソメを添えて

フォワグラ(テリーヌでも可)とそれをゆでる熱湯と味付け用の塩のみ。

なめらかなムース
フランボワーズのアイスクリーム

いまさら聞けない!パコジェットの使い方

Q. アイスクリーム以外にも使いたいのです
上記の「フォワグラのキノア風コンソメを添えて」のように、肉や野菜などのピュレムースなども簡単にできる。料理人の創造力次第で用途はさまざまです。ちなみに、ヨーロッパのレストランでは、今、ほとんどがパコジェットでアイスクリームを作っています。

Q. きれいなパウダーになりません
パコジェットを活用するには、素材を-20~-23℃で24時間以上冷凍する必要がある。急速冷凍機がなければ、パコジェットの機能をフル活用できません。


本記事は雑誌料理王国第243号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第243号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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