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ヌーベル・キュイジーヌ10か条


1970年代初頭、ジャーナリストのアンリ・ゴー、クリスチャン・ミヨのふたりは、従来の料理とは一線を画す新しい料理のことを「ヌーヴェル・キュイジーヌ」と称した。

「Le Nouveau Guide Gault-Millau」 1973年10月号で掲載されたヌーヴェル・キ ュイジーヌのページには、フランス人らしい辛辣な風刺画が掲載されている。

1.無用な複雑さの排除

 アントナン・カレームらが世に送り出した複雑な料理法に変わって、シンプルな料理法が出ていることに注目。「ゼリーを塗り、いろいろのバルケット(舟型の容器)に盛ったさまざまの野菜と固ゆで卵で囲まれた伊勢エビ『パリ風』は、ヴィネグレットだけで食べる伊勢エビには及ばない」。「ヤマウズラをどのように調理したとしても、そのままローストしたものの天然の美しさにかなうものはない」。

2.調理時間の短縮

 短時間の火入れは、多くの肉や甲殻類、野菜や麺類などについて「中国料理でも行われている」と述べる。「本当に良質の若鶏ならば、内部にまだほんの少しピンク色が残るぐらいに火を通せば、われわれの忘れてしまっていた味が発見できよう」。「蒸すという古代からの調理法が再発見されたことによって、食材には繊細な味が残され、また消化もずっとよくなった」。

3.市場料理の尊重

 大量生産と技術によって、防腐剤の加えられた材料を使い続ける事態となっている。それを防ぐには市場の料理を実行すればよい。「朝選んで購入したものだけを選んで調理」。「社会の進歩によってずっと入手しやすくなり、しかも新鮮に保たれているものを使って料理をつくること」。

4.メニュー品目の縮小

 メニューの品数を多く揃えておくと、使う材料のストックも多くなって鮮度が落ちる可能性がある。メニューを少なくすることで「ストックの費用も軽減」。「料理はずっとすみやかになされ、創造性に富み、より新鮮で、惰性に流れないものとなる」。

5.長時間のマリネ、ジビエの長期熟成廃止

 若い料理人にとってはジビエをマリネ液に数日間もマリネする時代ではなくなった。長期間の熟成もしない。「新しい料理長は、肉が落ち着いてきた段階の、まだ新鮮な状態のジビエを使い、腐敗を隠すことになるような香辛料を必要としない」。

6.濃過ぎるソースへの抵抗

 濃い茶色と白色のソースはせっかくの素材の味を隠してきたとし、「フォンやフュメ(肉や魚のだし汁)、決して焦がさないバター、少量の生クリーム、卵、レモン、トリュフ、生のハーブ、上質のコショウ、薄いソース、驚嘆すべきブール・ブラン(バターソース)、精神を高揚させ、歌わせ、明晰にし、胃に負担をかけないソースこそ賞賛に値する」。

7.地方料理への回帰

 高級料理店にはおいしい地方・家庭の料理は取り入れられていないとしたうえで、「現代の料理に不可欠な単純さがある」として家庭料理を再評価している。

8.近代的な厨房と道具への賛歌

 「料理人はミキサー、自動回転ロースト機、皮むき器、デ ィスポーザー(生ゴミ処理機)などを用意している」。「冷凍品も軽蔑はせず、そのもっとも効果的な使用方法を研究している」。

9.体にやさしい料理の研究

 食事制限、食事療法という意味ではない。「若い料理人は、魅力溢れるサラダ、軽く火を通しただけの新鮮な野菜、レアに焼いた肉などをはじめとする軽い料理の効果を発見する」。「トロワグロの料理するロース肉は、無農薬食品を使ってつくったソースよりも減量にずっと効果的である」。

10.新素材や新料理法への豊かな創造性

 新時代の料理人(当時の料理人でいえばポール・ボキ ューズ、トロワグロ兄弟、アラン・サンドランス、ルイ・ウーティエ、ミシェル・ゲラール、アラン・シャペルら)は、これまでの定石を破っているとする。「生の魚を食べさせることを恐れはしないし、新しい材料や今まであまり知られていなか った材料を取り入れる」。「忘れ去られた料理を再評価し、新しい調理方法と盛り付けを発見している」。

『Gault et Millau se mettent`a Table』(1976年)より参考:『軽いフランス料理』(三洋貿易刊)
photograph by Tomoaki Kawasumi

本記事は雑誌料理王国155号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は155号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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