フランスで活躍する日本人シェフを紹介する連載企画。第四回目は、1924年からマレ地区の街角に佇む老舗ビストロ「Café des Musées」の菊池大輔さんをご紹介します。
1924年からマレ地区の街角に佇む老舗ビストロ、Café des Musées。長い歴史の中、オーナーも料理人も数多く変わった。そして今、厨房を守るのが菊池大輔さんだ。
高校卒業後に料理人を志し、地元埼玉のフランス料理店で働いていたところ、フランスでの仕事の話が舞い込み即決。2カ月後にはBourg-en-Bresseのレストランで仕事をしていた。「シェフと料理人2人だけの小さな店。言葉もうまく通じないまま、とにかく働きました」。それ以降は名店で仕事をするためにミシュランのページをめくり、星が付いた店に手紙を書いて出し続けた。
レストラン数軒で働く中、最も影響を受けたシェフは南仏ラ・テュルビーにあるHostellerie Jérôme のブルーノ・チリノ。「発想が自由で、その時に浮かんだイメージを次々と皿に反映していく。フランス料理の型にはまらず、彼にしかできない料理を作っているブルーノは自分の目標です」。
地方を中心に3年ほど経験を積んだ後、現在の店のシェフとなった。10年が経った頃、「もう一度ガストロノミーの店で働きたい」と退店。しかし、シェフを失った店は評判が落ち、常連の足も遠のいたため、オーナーのラブコールにより菊池さんは再びシェフに戻る。そして、しばらくして無事評判を取り戻した。老舗ビストロとはいえ、味を“守っている”感覚はないという。
「10年前と比べても、今出している料理は違う。これからはもっとレストラン風の料理に変えていく予定です」。当店のオーナーとともに、今後はパリでコンセプトにこだわった店を出していきたいという。「地元のお客様に喜んでもらえる、空間も含めて楽しめる店を作りたい。フランス料理にとどまらず、日本のエッセンスを加えることも考えています。まだ構想中ですが、アイデアが尽きるまで何店でも出したいですね」 。(恵)
Café des Musées
Adresse : 49 rue de Turenne, 75003 Paris
TEL : 01. 4272. 9617
アクセス : M° Saint-Paul
無休。月〜木 12h-14h30 / 19h-22h30 金〜日 12h-16h / 19h-23h
取材・文=吉田 恵理子ワイン&フードライター。コピーライター。
1975年生まれ、フランス・パリ在住。お茶の水女子大学博士前期課程修了、人文学修士(西洋哲学)。都内の広告制作会社を経て、コピーライター、ライターとして独立。フランス国立ランス大学HEG(美食に関する最先端研究機関)に留学。英国ワイン&スピリッツ教育財団(WSET)アドヴァンスト資格所持、英国酒ソムリエ・アソシエーション(SSA)認定酒ソムリエ。著書に『ランチタイムが楽しみなフランス人たち』(産業編集センター)、『ワインを飲めばすべてうまくいく 仕事から恋愛まで起こる10のいいこと』(インプレスICE新書)がある。ワイン専門誌、パリの日本語新聞「オヴニー」に寄稿。Twitter:@erikomri_wine
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