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看板肉料理 ラステイクス ポーターハウス プライムグレード


熟成牛肉の〝カビ〟を選り抜き独自の風味を生み出す

ラステイクス オーナー 加藤良介さん シェフ長谷川聖さん

10キロ単位の肉のかたまりが、青白い光に照らされた庫内に浮かび上がる。扉を開けるとふんわりと漂う熟成の香り。それは、欧州のシャルキュトリのようであり、乳酸たっぷりの白いチーズのようであり、日本のぬか漬けのような香りでもある。

2015年6月にオープンした「ラステイクス」のグリル・メニューは、現在5品のみとシンプルだ。2品はニュージーランド産のラムラックと牛フィレ。そのほかの3品がアメリカ産ビーフだが、肉のグレードは最高級のもの。アメリカ国内でも数パーセントしか出回らないと言われる格付けの頂点「プライム」の称号を与えられた牛肉を仕入れている。プライムはアメリカ本国でも高価で希少であり、アメリカ系のステーキハウスでもない限り、日本で扱うのは困難とされてきた。

USプライムビーフはそれ自体で十分美味だが、タンパク質を良質な微生物に分解させることで旨味が増し、付加価値がつく。オーナーの加藤良介さんは、それを実現するために熟成庫を特注し、長谷川聖シェフとともに熟成の研究を重ねた。

店に入ってすぐ目に入るのは、特注品の熟成庫。庫内は常に0~1℃、湿度70%に保たれている。この中でシェフが大切にしているカビや酵母が保存されている。

希少な「プライム」ビーフにシェフのオリジナルなケアを

熟成庫で肉を熟成させること自体は、現在、多くの店がやっている。ではどこが「ラステイクス」のオリジナルなのか。

それはやはり、肉の表面につくカビや酵母を丹念に選別し、その店ならではの風味を出していくことで実現するのだろう。「最初の1週間は、肉を庫内の空気にさらして乾かし、その後さらしを巻いて計4週間寝かせています」と長谷川シェフ。「徐々に表面にカビがついてくるのですが、そのカビを観察していると、さまざまな種類があることがわかります。そのなかでも、おだやかな香りを生む、自分の理想だと思うものだけを残すように、ていねいに選びます」。

理想のカビは、庫内に安定した環境をつくるブースターにもなるため、取り置いて保存する。同じ地域でも、醤油や味噌が蔵によって味が違うように、熟成肉に個性を出すには、こういったオリジナルなケアが必要なのだ。

アメリカ産プライムビーフをカビや酵母で丁寧に熟成
アメリカ国内でもトップクラスの店しか扱うことができないUS格付け最高の「プライム」を扱っていることが話題に。その肉を特注の熟成庫で、研究に研究を重ねた手法で、シェフ自らじっくり熟成させる。

熟成肉はトリミングも多いため、歩留まりは6割以下。水分が蒸発して少なくなっている分、火入れにも注意が必要で、例えば4~5センチと厚めに切るポーターハウスは、10分焼き、5分休ませ、5分焼き、また休ませ……を根気よく繰り返す。

肉をカットする時点で出る端材は、ハンバーガーのパテに。端のほうの肉は熟成香も強く、サラミのような香りを放つ、大人向けのハンバーガーに変身する。

現在の日本は、レストランや精肉店が試行錯誤を繰り返しながら、自分らしい熟成肉を生み出そうと努力している黎明期。それだけに、若く勢いのあるふたりが生み出すオリジナルな風味には、ますます注目が集まりそうだ。

熟成ビーフバーガー
ランチの大人気メニューは、コールスロー付き、パテ200gで2100円。プラス200~300円で、トマトやチーズ、パクチーなどのトッピングを追加できる。パテも追加料金で増量可能。

Ryosuke Kato(右)
グリルダイニング「Wakanui」のジェネラルマネージャーを経て、「ラステイクス」を開店。ほか、幅広い分野の飲食店コンサルタントを行う。
Takashi Hasegawa(左)
「ラステイクス」料理長。「Wakanui」出身。肉をジューシーに焼くことに情熱を持ち、最新の調理法研究に尽力。熟成肉の管理を全面的に担当。

ラステイクス
RUSTEAKS
東京都渋谷区広尾5-22-3 広尾西川ビルB1F
03-6277-1963
● 火~金17:45~22:30LO 土日祝11:30~14:30LO、 17:45~22:30LO
● 月休
● 30席
http://rusteaks.jp/

横田典子=取材、文 星野泰孝=撮影

本記事は雑誌料理王国第256号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第256号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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