【世界が求める日本料理・パリ編】「本物」の存在にパリは気づいた「サガン」


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居酒屋の自由な楽しさ

自分の気分次第で利用の仕方が変わる。
使い勝手の良さがパリでウケた。

2011年に、パリ5 区にオープンした「レンゲ Lengue」は、出汁巻き玉子や揚げ出し豆腐、シシャモ焼きなど、日本の庶民の味と600種類のワインをそろえた「居酒屋」だった。オープンから5年も経つと、昼と夜2回転で連日満席。しかも客はほとんどフランス人。オーナー兼シェフの近藤克敏さんは、レンゲの成功は、「居酒屋の楽しさ」にあったと言う。「1品6~9ユーロで、ひとりでワイン1杯とおつまみ1品で帰ることもできれば、2人でシェアしながら、呑み続けることもできる。体系化されたフランスの食文化から見ると、日本の『居酒屋』は、とても自由に映ったのではないでしょうか」

40ユーロも出せば満腹になるコストパフォーマンスのよさも、人を呼ぶもうひとつの要因だった。「お出汁は、きちんとひいていましたが、原価の面を考慮して、例えば昆布の産地にこだわりすぎないようにしたり、冷凍食品を使うものもありました」

サーモンの寿司やてんぷらが日本料理のすべてだった時代。けれども、食事を楽しむことを知るパリの人たちなら、居酒屋の楽しさを必ずわかってもらえる。「それには、まず知って、楽しんでもらうことが第一」と、近藤さんは考えていた。

馬刺し

「日本では、馬を刺身で食べるのか?」と、驚かれるメニュー。パンチのあるメニューや個性的なメニューがパリでは必要だという。醤油ベースに出汁とみりんを合わせた甘辛いタレと、シブレット(チャイブ、エゾネギ)をあらかじめかけておく。刻んだショウガとニンニクチップはガルニチュール(付け合せ)として。€16。

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割烹ワインバーと日本酒バー

日本料理への理解が深まった今、
「本物志向」に特化した2店をオープン

今、パリで人気の「フレディーズ Freddy’s」や「アヴァン・コントワール Avant Comptoir」といった店は、予約を取らず、アラカルトをシェアするカウンタースタイルの店で、居酒屋をイメージした店づくりをしている。

レンゲを開いてから6年。近年は、日本発の本格的な日本料理店のオープンが続き、パリの人たちも日本料理のスタイルを知るようになり、「本物」があることに気づいてくれた。「レンゲのままではその現状に対応できないと思い、今年5月に店を"2分割"しました」と近藤さん。「2分割」とは、料理の質を高めた割烹ワインバー「サガン Sagan」(6区にオープン)と、レンゲを日本酒に特化した日本酒バー「ベージュBeige」にリニューアルしたことだ。「サガンは15席。小さな割烹ワインバーは、レンゲのオープン時から思い描いていた私の理想形でした」

パリの本格的な日本料理店の多くはコース料理。アラカルトで楽しめる店はまだない。勝算は、十分にある。ワインの勉強のためにフランスに来て18年。「グラン・ヴァン(偉大なワイン)」をワインリストに載せる店を持つためにも、レンゲの成功を捨て、近藤さんの夢への挑戦が始まったのだ。

Katsutoshi Kondo

1976年、愛知県出身。大学卒業後、神戸のホテルのフランス料理店でサービスを経験した後、1999年にワインを勉強するためフランスに渡る。2005年、パリ7区にある日本料理店「あい田」のオープンに参画。その後、本格的な料理修業のため、パリ・サンジェルマンの「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」に1年間勤めている。11年にパリ5区に「レンゲ」を開き独立。2017年5月には、割烹ワインバーの「サガン」を新しくオープン、また、レンゲの店名を「ベージュ」に改め、日本酒バーとしてリニューアルさせた。

「サガン」はパリ6区、「ベージュ」(旧「レンゲ」)から歩いて10分ほどのところにある。インターナショナルな右岸に対し、左岸はパリ市民たちの日常がある。観光客もリラックスできる静かな通りに面している。

Sagan
サガン
8,rue Casimir Delavigne, Paris
☎+33 (0)6 69 37 82 19
●18:00~24:00(23:00LO)
●日・月休
●予算 €60~
●15席(カウンター9席、テーブル6席)

江六前一郎=取材、文 新村真理=撮影

本記事は雑誌料理王国279号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は279号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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