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求めていた酒は「オリジナルの塊」川手 寛康氏(フロリレージュ)「カツオ」×SAKE HUNDRED「深星」


川手 寛康
1978年生まれ。高校卒業後、「「恵比寿QEDクラブ」、「オオハラ エ シイアイイー」や「ル ブルギニオン」で腕を磨いた後、渡仏し星付き店で修業。帰国後「「カンテサンス」のスーシェフを経て、2009年に「フロリレージュ」をオープン。2015年に外苑前へ移転。ソムリエ資格を取得するなど、ワインへの造詣も深い。

「意外」の裏側の上質

川手氏が「深星」に感じたこと。それは「意外」で「異質」。日本酒、かつスパークリングということである程度の予想をつけて味わったというが、まったく予想と違う酒だった。

「ワインで言うところのリンゴ的な要素、酢酸が来るかなと勝手に思って飲み始めたら、乳酸が来た。麹の発酵ですが、あたかもヨーグルトを発酵させたかのようなミルキーさがあって、これが最初の驚きでした」。

さらによどみなく深星の印象を語る。

「泡もあって日本酒らしい厚みのあるふくよかな甘さがあり、なおかつアルコール感のある骨格。それを残しつつさらに香りの部分はフルーティだったり、ヨーグルトであったり西洋っぽい要素が入ってくる。なにか僕の経験にはない変わった構図が現れた。今まで多くのスパークリング日本酒で感じていたジューシーさではなく、フレッシュさがあり、その中に渋みもある。日本酒は根底に渋みあるのですがなかなか表現としては出てこない。それがしっかりとあって全体のバランスもいいなと感じます」。

今まで経験してきたスパークリング日本酒の世界にはない要素が浮かび上がってきたことを、喜びの表情で歓迎する。もちろん重要なのは「泡であること」。これが日本酒の魅力を持ちながら川手氏のフレンチへ寄り添い、従来は考えられなかったペアリングを生み出していく。

「困難」だからこそ、喜びへと変わっていく

選ばれた素材は「カツオ」。料理名も「カツオ」。シンプルな名前と見た目ながら、その中にいくつもの技巧と多彩な食材を詰め込み、調和させ、そこから驚きをもたらす川手氏の真骨頂がここでも。

「まず、マス、鳥ときのこ、そしてカツオの3つを考えました。ただ、マスや鳥ならシャンパーニュでも補えてしまう。ところが味わってみると、フランス料理としてのカツオがすっと入ってくる面白さがあった」。

カツオは、日本酒以外でのペアリングが難しい代表格ともいえる。「でも日本にはこれだけカツオを食べる文化がある。フランス料理としても取り入れていかなければならない」という使命感に近いものを普段から感じていた。だが当然難しい。

「いつもシャンパーニュで行けるのか、もしくは、逆の方向へ行ってシェリーで合わせていくか。それでもカツオの独特の脂を流しきれない。やっぱり僕の中では、ペアリングをやりきれないところがあった。それが深星は全てをクリアにしてくれた」。

川手氏が手掛ける「フランス料理としてのカツオ」は、テクスチャーもレイヤーもテイストもすべてが深星に寄り添い、深星もまた料理に寄り添っていた。

カツオはタルタル。発酵させた蕪で型を作った。タルタルにはパプリカのジャムとピューレを合わせたものとウズラの卵を潰したものが入り、その上をさらにレモンとトリュフで、ラベルを張り合わせたような華やかさで彩る。それがベースのカカオで作ったチュイール(薄いクッキー)の上に盛り付けられ、フロマージュブランにレモンを伸ばしてアクセントとしたソースが皿に添えられる。

「要素としては同じような、似たようなポイントを見つけやすいペアリング」と川手氏。カツオそのものの味わいを堪能できることはもちろん、カカオを忍ばせて苦みや渋み、ソースにはミルキーな酸味に鮮烈な爽快感と、深星の要所と手を取り合わせる。前菜に相応しいという料理というよりは、味わいの複雑さを堪能する、コースの中盤に登場する料理だが、これも、深星の出番にふさわしい。

「異質」を大いに愉しもう

「偏ってる酒の方が好き。個性の塊が好き。周りを気にして作っていないオリジナルの塊。今までの概念を覆してしまうもの。なんにでも合うようなものには興味はありません。カツオとのペアリングだって普通に日本酒であわせればいいか、では愉しくないですよ」。

難しい食材と組み合わせる。それが愉しい。だから異質な酒が必要だ。

「泡を求めるならシャンパーニュがある。切れと酸味のバランスはやはりシャンパーニュ。そこを日本酒に求めてはいない」。

シャンパーニュ「のようなもの」を標榜するのではなく、抱えきれないところを補うようなスパークリング日本酒であってほしい。そんな異質な酒がレストランのリストに並べば、ペアリングはもっと愉しくなる。改めて深星の味わいを思い出しながら、川手氏はこう言って笑った。

「深星からは、“同じところに並べてほしくない”というメッセージが伝わってくるような気がします。実際、そういう狙いですよね」。

「深星」の詳細はこちら 
https://sake100.com/item/shinsei/latest

Restaurant Florilège
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前2-5-4 SEIZAN外苑B1
TEL/FAX:03‐6440‐0878
営業時間
12:00-13:00(L.O.)18:00~19:00(L.O.)
客席数
22席(カウンター16席・個室6席)

SAKE HUNDREDは、『心を満たし、人生を彩る』をパーパスに掲げ、比類なき価値を提供する日本酒ブランドです。最高峰のグローバルブランドとして、味覚だけでなく、お客様の心の充足に貢献し、人と人との豊かな関係を築いていきます。最上の体験によってもたらされる、身体的・精神的・社会的な満足、そのすべてが、SAKE HUNDREDのお届けする価値です。

取材・文=岩瀬大二 写真=小沼祐介


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