【食の未来を考える】健康でおいしいを当たり前にするベースフード


完全食「ベースパスタ」で健康を手軽に

「健康になる食」がインフラ化され本当の医食同源が実現する

パスタをひと皿食べるだけで、人に必要な栄養素(*)すべてを摂取することができる。「ベースパスタ」は、これまで活動のエネルギーに必要な「主食」の代表だった「パスタ」に、新しい価値を与えようとしている。前職でAIによる自動運転の実用化に携わっていた開発者の橋本舜さんは、なぜ食の世界に飛び込んだのか?

ーー完全食「ベースパスタ」とはどんなものでしょうか?

小麦の全粒粉やチアシードなど、10種類以上の食材を生地に練り込んだ生パスタで、厚生労働省が策定した基準を踏まえ、1食あたりに必要な(*)29種類の栄養素を含んでいます。一般的な生パスタに比べ、カロリーは約20%、糖質は約50%カットされているので、ダイエットしている方や、糖質が気になる方でも食べることができます。

ーーなぜ「ベースパスタ」の開発を始めたのですか?

栄養バランスに気を付けて、と言われても、何をどう摂れば「良い食事」なのかわからない、という人は多いと思うんです。そんな人たちに、「主食」を食べることで、1食に必要な栄養を簡単に摂れる、そんな食事があればいいのに、というのが始まりです。今は、パスタだけですが、パンや、米粒の形をしたパスタ・リゾーニのような"お米"なども開発して、提供したいと思っています。

自動運転車の開発から「健康な食」の世界へ

ーー橋本さんは前職では、自動運転にも携わっていたとか。テクノロジーの最前線という気がしますが、なぜ食の世界に進まれたんですか。

自動運転の活用において、多くの方が誤解されているのは、自動運転は、都市部よりもむしろ地方での運用が待たれているということです。
少子高齢化が今以上に進むと、地方に住むお年寄りの方々には「足がない」という現実が横たわっています。病院に行くにも、タクシーの台数も多くない。バスも電車も本数が少ない。病院のマイクロバスのような送迎車に朝、迎えに来てもらい、夕方に送り届けてもらう。
そんな過疎の地域にこそ、自動運転のタクシーやバスが必要になる。移動できることで健康でいられる。自動運転は「ヘルスケア」の問題に結びつくのです。

ーー自動運転車の実用化によって、少子高齢化と過疎化の問題を解決できる可能性があるわけですね。

そうした自動運転車と、健康の接点を見ているなかで知ったのですが、今、伸びている日本人の寿命に比べ、自立した生活ができる生存期間を指す健康寿命は、同じように伸びているわけではないんです。つまり、寿命を伸ばす医療と比較して、健康寿命を伸ばす予防は、不十分なのです。
そういう現状を目の当たりにして、人の健康を視野に入れると、もっとも大事なこととして「食」があると気付いたんです。栄養バランスを考えた食生活というものを、便利に、そして誰でもが、必要な栄養を手軽に摂ることで享受できれば、病気を予防し健康寿命は長くなる。
そこで、まだ誰も取り組んでいない「完全食の主食」の開発を考えてみようと考えたわけです。

「健康な食」がすべての人にあたり前に供給される未来へ

ーー橋本さんは、AIにも深く関係する自動運転車に携わってこられたわけですが、食の世界でのAIとはどういうものであり、実現は可能だと思われますか?

今、AIと呼ばれているものの多くは今まで通りの機械で、過大評価されていると感じます。エアコンは室温を自動で25度に保ってくれますが、今発明されていればAIと呼ばれる気がします。そうではない最先端のAIであるIBMのシェフ・ワトソンは、過去の無数のレシピを分析して、新しいレシピを作り出します。でも、来店したお客さんに合わせて、感動を生む料理を提供することは難しいでしょう。AIの学習は、データの相関関係を見つけることに限られているからです。データ化が難しい「人間の感情」は、不得意分野です。人間を喜ばせるのが得意なのは、同じ人間です。その意味で、レストランでの料理というのは、人間が担い続けるものと思います。AIが更に進化しても、AIは機械の一種であり、人間の「ツール(tool)」です。包丁のように使いこなして、よりおいしい料理が提供できるようになると思います。

ーーベースパスタが、未来の食をどう支えていけると思いますか?

ベースパスタに代表される「ベースフード」が、水や光熱、インターネットと同じように、すべての人にあたり前に供給されるようにしたい。「健康な食」のインフラ化です。
日本では、どこに行っても蛇口からきれいな水が出てきますよね。地域によって、飲めないような水が出てくることはない。引っ越しの時に水道やガス、電気を開通するように、ベースフードが普通に供給されるようになればいいですね。

ーーあくまでベースフードですから、それ以上の食事をしていいわけですよね。

もちろんです。ベースフードは主食なので、日常食として健康を支えるためのものです。一方で、食を通した喜びはとても大切なので、健康にとらわれることなく、おいしい料理を思いっきり楽しんで欲しいと思います。また、ベースフードは食材のひとつですので、おいしく料理して提供してもらえると嬉しいです。
食がインフラ化されることで、病気にならない体づくり、病気になっても、これ以上悪くならないような栄養摂取、こういうことが実現できると思っています。
それこそが、盛んに言われている「医食同源」の実現につながるのではないかと思っていますし、そうなってほしい。そこに我々が取り組んでいる「ベースフード」がお役に立てればいいな、と思います。

ベースフード株式会社 CEO /代表取締役 橋本 舜
1988年生まれ、大阪府出身。東京大学を卒業後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。自動車の自動運転開発に携わった。その間、健康な生活、病気予防の重要性を強く感じ、ベースフード株式会社を立ち上げ、おいしい完全栄養食の開発と普及に取り組んでいる。

(*)「栄養素等表示基準値(18才以上、基準熱量2,200kcal)」に基づく(過剰摂取が懸念される炭水化物とナトリウムを除く)


柳本元晴=取材、構成 中西一朗=撮影

本記事は雑誌料理王国2018年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2018年11月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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