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【第一回】ロバートキャンベルの美味ごろろ「星のや東京」

人の心に残り、また訪れたいと思わせるレストランとは、どんな店だろう。それは料理の美味しさのみならず、シェフの人柄や食材の目利き、しつらえや器など、様々な魅力を持っている店。この新連載でご紹介するのは、日本文学研究者として活躍し、食通としても知られるロバート キャンベルさんがすすめる、とっておきのレストラン。初回は東京・大手町のビル街にたたずむ「星のや東京」の宿泊者専用ダイニングだ。キャンベルさんが泊まってでも食べに行きたい、その理由とは?

ロバート キャンベルさん

日本文学研究者、早稲田大学特命教授。専門は近世・近代日本文学。ニューヨーク市に生まれ、1985年に九州大学文学部研究生として来日した。同学部専任講師や国文学研究資料館助教授を経て、2000年に東京大学大学院総合文化研究科助教授、2007年から同研究科教授。17年、国文学研究資料館館長を経て現職。テレビでのMCやニュースコメンテーター、新聞や雑誌への寄稿、書評、ラジオ番組の企画出演など、活動は多岐に渡る。

五つの意思

「星のや東京」開業時から作り続ける、シグニチャーのアミューズ。丸い小さな大理石が5個並び、その上に、五味(酸・塩・苦・辛・甘)を象徴するアミューズ5種が乗る。左奥から「コハダのルーロー」、「ボルシチ」、「さんまとじゃがいものコロッケ」、「海老とホタテのメルゲーズ」、「黒豆のレバーペースト」。それぞれに異なる日本の発酵調味料が使われているのもポイントだ。

ボルシチやコロッケ、メルゲーズは石を温かく、ルーローや黒豆のペーストは石を冷たく、という心遣いがうれしい。「懐石料理の〝懐石〞の語源は、修行中の僧侶が寒さや空腹をしのぐために懐に入れた、温かい石のことを指すという説があります。この演出はそこから着想を得ました。石に意思をこめています」と浜田シェフ。

近代一五〇年の再建と破壊で地上から歴史に触れることが困難な東京。しかし地中には、遙かなる時代の小さな記憶の欠かけら片が数多く埋もれている。星のや東京は、千代田区大手町に立地する。東京の中でも歴史の痕跡を豊富に抱えている土地の一つである。江戸城の正門にあたる大手門前に、譜代大名たちの屋敷が建ち並んでいた。江戸武家の文化が育まれ、ここで開花し、そして火事と建て替えを何度も経ながら消滅したいわゆる江戸文化のゼロ地点に当たる。発掘すると、地中から埋蔵物が一つまた一つ形として蘇ってくる。

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