「大豆」のこと#3「豆乳の活用が盛んな背景を知る」


PART 03 豆乳の活用が盛んな背景を知る。

気付けば、乳製品にひけをとらないコクや風味を兼ね備えた豆乳食品の存在感が増している。その背景を探ると、ある製油会社が生み出した豆乳と豆乳クリームにたどりついた。

おいしさと栄養価の両立が大豆たん白の利用を促進する

その企業の名は「不二製油株式会社」。チョコレート用油脂を中心に植物性油脂のジャンルで幅広く事業を展開している同社は、2012年に大豆を低脂肪豆乳と豆乳クリームに分離・分画する画期的な新技術「USS(Ultra Soy Separation) 製法」で世界初の特許を取得。

前者は「美味投入(びみとうにゅう)」、後者は 「コクリーム」(旧商品名「濃久里夢(こくりーむ)」)という名でリリースされ、スーパーでよく見かけるチーズのようなコクを持つ豆腐や、豆乳クリームを練り込んだパンなど、ここ数年で進んだ豆乳商品の多様化に貢献している。「卵でいえば、卵白と卵黄に分けるようなものです」と説明するのは、営業戦略室の長森真信さん。卵白にあたるのが低脂肪豆乳、卵黄にあたるのが濃厚な豆乳クリームというわけだ。

「昨年登場した、豆乳クリームが原料の植物性バター『ソイレブール』もシェフの方たちに好評です。動物性の代替品ではなく、大豆の特長を活かした圧倒的なおいしさを提供することが、市場に受け入れられるカギです」と語り、最近のプラントベースを取り巻く状況を「イメージ先行だった第1ステージから、実際に商品が動く第2ステージに入った」と見ている。

「やはりおいしさと栄養価の両立が進化したからでしょう。そうでなければプラントベース食品は生き残れないと思います」とシビアに分析。さらに長森さんは続ける。「プラントベースを浸透させることは、新たな食文化を築くようなもの。子どもたちに向けた食育にも力を入れています」。今後、 プラントベースがどのように日本の食文化に根付くのか。戦後の食糧難の時代から、将来は肉に代わるたんぱく源が必要と予測した会社の視線の先に注目したい。

Chart F 卵や牛乳に準じた分画を大豆で実現

「分画」とは、構成する成分を分けること。低脂肪豆乳は低カロリーでヘルシーな豆乳に、豆乳クリームはリッチなコクをもつ植物性のクリームになる。

出典:USS公式サイト

Chart G 豆乳クリームにはうま味を増強する効果もあり

下のグラフは、かつお出汁液へのクリーム添加量と、うま味数値の増加を表わしたもの。研究の結果、豆乳クリームには、他の食材のうま味を高める効果があることがわかっている。

出典:USS公式サイト


text 浅井直子 photo 八田政玄 styling 下條美緒

本記事は雑誌料理王国2020年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年10月号 発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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