日本のスパゲッティ黎明期を語る上で欠かせないのが、戦後、洋食とともに広がりを見せた“アメリカ経由のイタリア料理”。その代表メニューが「ナポリタン」だ。
おそらく日本人なら知らぬ者なしのメニューだが、発祥については諸説ある。なかでも著名なのは、横浜にある「ホテルニューグランド」で誕生したという説だ。第二次世界大戦後にGHQの接収先となったこのホテルでは、当時大量のスパゲッティが持ち込まれたという。それにケチャップを和えて進駐軍が食べていたのを、当時の総料理長・入江茂忠が見ており、トマトソースベースにハムやマッシュルームなどの具材を入れて進化させたということだ。
しかし、いまなお多くの人に愛されている “あの味”は、トマトソースではなくケチャップによるもの。あの甘酸っぱさが、老若男女の記憶に刺さるのだ。だからこそ、ナポリタンは“喫茶店の味”として君臨している。本格イタリアンでは、市販のケチャップ使いはあり得ないからだ。
「僕がナポリタンを作るならば、ケチャップも中濃ソースもすべて一から作ります。その上で、ジャンクさを目指します」と、敢えてイタリアン・シェフとしてのナポリタンを披露してくれた「ラ・ブリアンツァ」の奥野義幸シェフ。その仕上がりは、見た目にも迫力満点なインパクトの強さだが、本格イタリアンの矜持すら感じさせる風格もある。“知っているあの味” のようで、重心が明らかにイタリアンなのだ。
ナポリタンといえばホットソースとチーズが欠かせない。奥野シェフが用意したのは、自家製のアリッサソースとグラーナ・パダーノ。うま味、辛味がプラスされ、一層コクが増す。
材料(1人分)
スパゲットーニ(乾麺2.3mm)……100g
グアンチャーレ …… 50g
人参 …… 1/3本
玉ねぎ …… 1/4個
パプリカ(黄・赤)…… 各1/2個
ピーマン …… 1個
水煮マッシュルーム …… 4個
白ワイン …… 大さじ2
トマトケチャップ …… 70ml
中濃ソース …… 70ml
グラーナ・パダーノ …… 適量
イタリアンパセリ …… 少々
E.V.オリーブ油 …… 適量
作り方
[トマトケチャップ] ※作りやすい分量
トマト……5個
玉ねぎ……1/4個
ニンニク……1かけ(3 ~ 4g)
砂糖……大さじ1.5
塩……ひとつまみ(2 ~ 3g)
ハーブ(クローブ、ジュニパーベリー、スターアニス、ローズマリー、ディル、セルフィーユ、シナモン、ローリエ)……各少々
フランボワーズビネガー……100ml
作り方
トマトは湯むきして、ニンニク、玉ねぎとともにミキサーにかけ、鍋に移して砂糖、塩を加えて火にかける。ハーブ類、フランボワーズビネガーを加えて、濃度がつくまで煮詰めたら、ハーブ類を取り出す。
[中濃ソース] ※作りやすい分量
玉ねぎ …… 1個
人参 …… 1本
セロリ …… 1本
トマト …… 3個
ニンニク …… 少々
生姜 …… 少々
砂糖 …… 大さじ1.5
塩 …… 小さじ2/3(3 ~ 4g)
ハーブ(セージ、クローブ、ローズマリー、ローリエ)…… セージのみ多めで他は各少々
バルサミコ酢 …… 200ml
フォン・ド・ヴォー(あれば)…… 100ml
作り方
玉ねぎ、人参、セロリ、トマト、ニンニク、生姜をミキサーに入れ、少量の水(分量外)を加えて撹拌し、粗めに粉砕する。鍋に移し、火にかけ蒸し煮にし、バルサミコ酢、フォン・ド・ヴォー、砂糖、塩、ハーブ類を加えて煮る。煮詰まってきたらハーブ類のみを取り出し、もう一度ミキサーにかけてどろっとしたとろみを出す。
奥野義幸
1972年、和歌山県生まれ。米国の大学を卒業後、会社員を経て、東京のイタリア料理数店で修業後、渡伊。星付きレストランをはじめ8州もの地で研鑽を積み、帰国後、 2003年「ラ・ブリアンツァ」をオープン。以降計4店舗を経営、現在はまた新たな店舗を準備中。
la Brianza(ラ・ブリアンツァ)
東京都港区六本木6-12-3 六本木ヒルズレジデンスC棟3F
TEL 03-6804-5719
11:30~14:00 LO、17:30~22:00 LO
無休(施設の休業に準ずる)
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text 中川節子 photo 鵜澤昭彦
本記事は雑誌料理王国2020年8・9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年8・9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。