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個人飲食店の独立開業指南。「食器を揃える」


食器は料理を美しく魅せるだけでなく、店の空間を演出する効果もある。とはいえ、デザイン性だけでなく、機能性も求められ、また、揃えるべき数も多い食器選びは、開業時の費用に大きく関わってくる。今月は食器の揃え方について考えたい。

主役の料理を際立たせるためには、名わき役となる食器選びがカギとなってくる。食器ひとつで、料理人の世界観がみえるといってもいい。

デザイン性だけでなく、食事を快適に楽しむためには使いやすさも求められる。また消耗しやすい備品のひとつであり、多くの枚数が必要にもなる。食器を揃える際、こだわりとコストのバランスをうまく調整するためにはどうするべきなのか。

ザイン性だけでなく
消耗品としての備えも必要

「まず、予算としてどれくらい食器にあてるかがポイントです」と、今月のアドバイザーの入江さんは言う。「開業時には食器を含め、備品は先に大枠の予算を決めないといけません。備品にかかる費用は、坪あたり5万円以下、もしくは店舗投資総額の5パーセント以内が良い数字」

そのうち食器に関しては、5割を超えない方が良い。そうなると1坪あたりに1〜2万円が目安だという。「低コストで、良いものを揃えるなら、複数のメーカーの商品を置いている業務用食器専門店で購入するのをおすすめします。複数のブランドの中から選ぶことができるので、力を入れる食器とそうでない食器のバランスを取ることができます」

最近は、インターネット上にも比較的安く購入できるプロ向けの専門店があるが、食器は実際に見ないと使い勝手の良さや好みに合っているかどうかは分からないともいう。「食器を揃える際に考えて欲しいことが、開業後の補充を想定したセレクトです」と入江さん。例えば特定のメーカーにこだわり、高いものですべてを揃えた場合、補充のときも高いコストがかかる。さらには製造中止などで、手に入らなくなる危険性もある。そういった点からも、先に紹介した「複数ブランドで揃える」のがポイントになってくる。「業務用だと、まとまった量でしか買えない場合もあり、数枚単位の補充が難しくなります。補充の時にバラ売りしてもらえるかどうかも注意が必要。食器にこだわりたいなら、開業後、利益が出てから、徐々に買い足してください」

オペレーション上で、どういう作業体制かによって当然、揃える数は変わる。とはいえ、開業時に重要なのはコスト管理。食器を揃えるコストは最低限におさえるためにも、運用できるだけの最低限に数を抑えた方がいい。「それに業務用の食器だからと言って頑丈ではありません。特に、グラスや陶器、磁器は、値段の差が大きく、高価なものは微細であることが多い。一見、壊れているように見え
なくても、繊細なキズがつき、そのうち割れてしまうので、買い替えが必要になります」。
 

店のコンセプトをダイレクトに表す食器類だからこそこだわりたいところだが、開業時には「どう費用を抑えるか」も重要になっている。コンセプトを明確にし、力の入れ所をはっきりさせて食器を揃えたい。

POINT ❶
食器にあてる初期費用は1坪1~2万円が目安

食器も含め、開業時に揃える備品には坪あたり5万円以下がちょうどいい。そのうち食器にかける割合は半分以下に収めると良い。

POINT ❷
種類は1つのメーカーにこだわらない

コストを抑えるために、高価な食器と安価な食器を組み合わせる。また後破損などした場合、製造中止などで、補充できなくなることを防げる。

POINT ❸
数と種類は最低限におさえる

初期投資を抑えることや、ストックスペースなども考慮して、開業時に必要以上に買い込まず、利益から徐々に増やしていった方がいい。

POINT ❹
飲み物にこだわるならグラスに多めの予算

繊細な口当たりを追及する薄手の華奢なグラスやカップ等は高価な傾向がある。グラス類の摩耗は、目に見えにくいので注意が必要。

A.メイン用 210mm/65g
B.前菜用 200mm/52g
C.アミューズ用 250mm/30g
D.肉料理用 240mm/59g
E.前菜用 220mm/52g
F.魚料理用 210mm/57g
G.バターナイフ用 150mm/24g
H.ソース用 190mm/58g
I.スープ用 180mm/58g
J.アミューズ用 140mm/26g
K.ティー、コーヒー用 120mm/19g
L.デミタスカップ用 100mm/15g

格好良さより使いやすさを重視した
唯一肌に触れるカトラリ―は、使いやすさを重視したという。手が大きい湯澤さんにとって、流行りの細いものは使いづらかったこともある。初期費用でシルバーも考えたが、手入れの手間など、長期的なコストを考えてステンレスに。メーカーはすべて「アルファクト」で揃えたという。

A.ボルドー用(Perle)235mm/199g
B.ブルゴーニュ用(Perle) 225mm/206g
C.グラスワイン用(Perle) 220mm/170g
D. シャンパングラス(Perle) 230mm/209g
E. ミネラルウォーター、ソフトドリンク用(Spiegelau) 140mm/160g
F. 蒸留酒用(SCHOTT ZWIESEL) 80mm/160g
G. 蒸留酒(リキュールなど)用(Francfrancで購入) 65mm/105g
H. 水グラス(菅原工芸硝子) 75mm/110g

グラスの種類は必要な分だけ最低限におさえた
「どちらかというと食器の優先度が高かった」と湯澤さん。赤、白は兼用、カクテル用とソフトドリンクも兼用するなど最低限の種類に。良く使う水グラス用だけは、お店の床の色やショップカードの色に合わせてワインレッドにしたという、湯澤さんのこだわり。

兼用しやすいカトラリ―は、多めに用意。前菜用と魚用とデザート用はそれぞれ、50本ずつ備えてある。

フランス料理店(東京・中目黒)
「SouRiRe」の場合

オーナーシェフ
湯澤貴博さん
Takahiro YUZAWA

1975年新潟市生まれ。専門学校を卒業した21歳の時に「ル・マノアール・ダスティン」で6年半修業。27歳から、系列店の「アンフォール」のシェフを5年間勤めた後、都内数店舗でシェフを経験。2011年に独立開業。「スゥリル(微笑み)」という店名は、一緒に働く夫人がつけた。

出す料理に合わせて食器もシンプルに揃えたかった
高級感を出したかったので、基本的にモノトーンに、無色で無地なものを揃えました。何でも実際に自分で見ないと買わないので、食器はすべてお店に行って実際の料理をイメージしながら選びました。値段よりも見た目を重視したので、雑貨屋さんで買った安いものから高価なメーカーのものまでの差がとても大きいです。料理と共にお客さまにお出しする食器は、料理の一部ですから、備品の中で強くこだわったポイントです。ひと皿、ひと皿にテーマを持った料理を心がけていますので、彩りや華やかさだけを添えるものはお皿には乗せません。そんな自分の料理に合わせて、食器にも形だけの奇抜なものは求めず、シンプルなもので揃えました。またお客さまにとっての「使いやすさ」も重視して選んでいます。

収納のしやすさを考えて、大きくても重ねられるものを。

大きなお皿は特に重ねられて収納しやすいものを
前菜(温菜)用(PILLIVUYT)
内:直径90mm、
外:直径180mm

透明感を出したい、冷たいカクテルによく使う。

料理に合わせて透明のお皿に
前菜(冷菜)用(菅原工芸硝子)
直径90mm、高80mm

野菜を使った2種類のアミューズに合わせて補充。

新メニューとともに後から補充した
アミューズ用(PILLIVUYT)
横幅215mm、縦幅70mm

常に置いておくので、うるさくはないが、少し変わったものに。

敢えて丸いお皿でなく、さりげなく存在感があるお皿に
パン用(PILLIVUYT)
横幅213mm、縦幅90mm

肉料理用とのバランスも考え、魚料理用にと決めた。

実際に店頭で見て魚料理をイメージして決めた
魚料理用(PILLIVUYT)
横幅310mm、縦幅90mm

メイン用は他と少し変えたかったが、肉が映えるようにやはりシンプルに。

メインはシンプルな中にもアクセントになる模様を入れた
肉料理用(PILLIVUYT)
直径320mm

デザートは温かさの中に冷たさも演出。

デザートは透明のお皿でバランス良く
デザート用(菅原工芸硝子)
直径250mm

流れを邪魔しないように、シュガー入れも統一感を。

ティーカップとシュガー入れはセットで
コーヒー用(PILLIVUYT)
直径75㎜

生チョコ、フィナンシェ、焼きメレンゲを並べる。

3種類並べて出せるように長方形に
お茶菓子用(菅原工芸硝子)
横幅180mm、縦幅90mm

開業 DATA

●オープン年
2011年4月9日オープン
●設計・施工
(株)陽炎座 
●坪数
20坪(客席11坪、厨房9坪)
●坪あたり家賃
約16000円  
●座席数
テーブル8席 カウンター5席
●スタッフ数 
3人(厨房2人、サービス1人)
●開業資金
3000万円
●借入先
目黒信用金庫、国民金融公庫、親族
●開業投資額
(物件取得責300万円、内装・厨房設備2000万円、食器備品400万円、運転資金300万円)
●メニュー価格帯
昼3600円、5800円 
夜7500円、10000円 
●平均客単価
昼4500円~5000円
夜12000円~
●平均来店客数
昼8人
夜8人
●目標月商
350万円

今月のテーマ 食器を揃える

店内はデザイナーをする常連客がデザインしたという。「飾らない」「基本を貫く」湯澤さんの料理をよく知っているため、店内はシンプル。基調の黒の中にも、壁の白やダウンライトの光で温かみもある。住宅街でやや分かりにくい位置に店舗はあるが、「わざわざ料理を食べるだけに来てほしいから」と湯澤さん。

オープンキッチンのため収納スペースに限りがある。キッチン台の下にすべて収納。

オープンキッチンもスゥリルの特徴。「〝おひとりさまフレンチ〞をされる方も大歓迎ですよ」。

この時期の「シェフお任せコース」のメイン料理「自然じょとトリュフをまとったフォアグラ詰めビュルゴー鴨のピカタ ソースカカオ」

今月のアドバイザー

商業環境研究所
EATWORKS代表
入江直之さん
Naoyuki Irie

店舗プロデュース会社で飲食店の運営、開業に携わったのち独立。個人飲食店の独立開業支援セミナーの講師を務める傍ら、業界紙や書籍にて執筆。著書『小さな飲食店の儲け方』(日本実業出版社)、『お客が殺到する 飲食店の始め方と運営』(成美堂出版)。

SouRiRe
東京都目黒区青葉台1-15-2 AK-3ビルディング 2F
☎03-5784-2036
●12:00~13:30LO
●18:00~21:00LO
●水・第3火休
www.sourire-r.jp

Cuisine Kingdom=取材、文 富貴塚悠太=写真

本記事は雑誌料理王国222号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は222号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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